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第26話 追撃
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しかしその隊列の後ろから見覚えのある顔。私はラースに命じた。
「ラース。逃げるわよ」
「どうして? あの人たちは人間だよ。きっとルビーを助けに来たんだ。おーい!」
「バカね。さっさとソリを出すのよ!」
ラースはどうしていいのか分からずにキョロキョロしていたが、私の命令に仕方なくソリを降りて坂道に向かってソリを押す。
「見ろ。ルビー王女が逃げるぞ! 追え!」
背中からの号令に、兵士たちの駆け出す音が聞こえる。騎兵の音も。
追えという言葉に反応したラースの方が早かった。きっと、何かが違うと感じたのであろう。ソリは速度を出して坂道を滑る。ラースはすぐさまソリに乗り込んでハンドルを握り操作した。
「どういうことルビー!? 救助じゃないのかい?」
「そうよ。ラースは前に言っていたわ。ファーガス将軍は敵に降って魔王軍に配属されたと。あれは間違いない。ファーガス将軍よ!」
「ええ!?」
「太って、ざんばらヒゲだけど用兵が上手でお父様に気に入られていたのよ。食らいついたら放さない、すっぽんのファーガスの異名まであるのよ」
「ほ、ホントですか?」
ソリが滑る僅か後ろを騎兵が迫る。やはり、馬と滑るに任せるだけのソリでは機動力に開きがあるのであろう。
「ラース! このままでは追いつかれるわ! 魔法で撃退してしまいなさい!」
そう。魔法。
ラースには人間にはどうにもならないであろう、強い力がある。
この程度の追っ手を殲滅するのはわけが無いであろう。
私は余裕で鼻を鳴らす。
「あの~、ルビー」
「どうしたの? さっさと、ボーンとやっちゃいなさいな」
「私は光りの勇者で、魔物に魔法を使うのは許されてるけれど、人間に魔法を使うことは許されてないんだ」
「は? はぁ?」
迫り来る追っ手。
だが、魔法を使うことは出来ないですって?
「なんてこと? いつもはドッカンドッカン大爆発させるくせに」
「そんなに爆発させてないだろ」
「いいわよ。私がボルで追い払うわ」
「ダメ! ルビーの魔法も私の契約と同じなんだから!」
「なによぅ! 仕方ないわね」
私は魔法の杖を構えて、後方を走る騎馬へと目がけて杖を振るう。
すると、そこからはボルと同じ威力の火の玉が飛び出し、地面をえぐって爆発した。
馬は怯えて、騎馬の進行が止まる。
「やった! やったわ!」
「あー! ダメだよルビー!」
「なによ。これもダメなの?」
「人に向けて魔法を使っちゃダメなんだってば!」
「うるさいわね。だったらどうやってこの危機を乗り切るのよ?」
「……なんとか逃げ切る」
「ば く ぜーー ん」
漠然としている。なんというノープラン。
光りの勇者とあろうものが、魔王を倒せる唯一の人が、魔王軍に降伏した人間の将軍に追われているなんて。
ファーガス軍はなんとか持ち直し、またもや私たちの背中に迫る。
なによ! こっちは攻撃できないのに、あっちは攻撃できるなんて!
「あ」
「どうしたのルビー!」
「いいこと思いついちゃった」
「いいこと?」
私はイスに捕まりながら荷物袋をまさぐると、そこには小さな箱。箱を開けると、金の棒が入っていた。
私はそれを一本つまみあげ、後ろを走る騎馬隊へとチラつかせた。
「あ!」
「金だ!」
やはり、釣られた。この一本はかなりの価値があるであろう。私はそれを林の方へと投げる。
それを追って数騎隊列から離れた。
「やーいやーい!」
「すごい。いい考えだね、ルビー!」
「お次は二本いっちゃおうかしら?」
後ろの騎馬隊から、ツバを飲み込む音が聞こえる。私は今度は逆サイドの森へと投げ入れると、またもや騎馬隊は数騎そちらの方へと走っていった。
その調子でどんどん金の棒を投げて騎馬隊を隊から離脱させ、ファーガス将軍は数騎に囲まれるのみとなった。
「ファーガス! あなたには、空っぽの箱をくれてあげるわよ!」
そう言いながら箱を投げると、騎馬隊の一人にヒットして、彼は落馬した。
「へっへーん。どんなもんよ~」
「あ!」
「どうしたのよ。あ!!」
道が狭くなる。両脇には岩壁。道はそこにしかない。
だが、このソリではそこは通れない。横幅が余りにも大きいのだ。
「ルビー!!」
ラースは運転から離れ、私を抱く。そしてひょいひょいと持てるだけの鍋や食糧が入った袋を掴むと、ソリから飛び降り、雪の上へ。
ソリは岩壁に当たって砕けた。私はラースに抱きかかえられたまま。
ラースは私を雪の上に下ろすと、私の体に二つの鍋を巻き付けた。なるほど、鎧というわけだわ。
ソリを失った我々の元にファーガスの軍団は私たちを囲み始めた。ファーガスは余裕で私たちに話し掛けてきた。
「さぁ、ルビー王女。こちらに参りませ。私はあなたを魔王様に献上すれはさらなる地位を得られましょう」
「だーれがアンタなんかに」
「そしたら、私は魔王様にあなたを妻に下さるように上奏するつもりです。つまり、あなたの栄華でもあるわけです」
「うるさいわよ、デブ」
「は、はぁ?」
「私には心に決めた人がいるもんね」
そういって私はラースにキスをした。
ラースは最初は驚いていたが、私を抱いて自分から吸う力を強めた。
「ぬ、ぬ、ぬ、ぬ。王女を捕らえよ。男は殺してしまえ!」
その言葉にファーガスの軍団は私たちに襲いかかってきた。
どうなるの?
ラースは人間を攻撃できないのに!
「ラース。逃げるわよ」
「どうして? あの人たちは人間だよ。きっとルビーを助けに来たんだ。おーい!」
「バカね。さっさとソリを出すのよ!」
ラースはどうしていいのか分からずにキョロキョロしていたが、私の命令に仕方なくソリを降りて坂道に向かってソリを押す。
「見ろ。ルビー王女が逃げるぞ! 追え!」
背中からの号令に、兵士たちの駆け出す音が聞こえる。騎兵の音も。
追えという言葉に反応したラースの方が早かった。きっと、何かが違うと感じたのであろう。ソリは速度を出して坂道を滑る。ラースはすぐさまソリに乗り込んでハンドルを握り操作した。
「どういうことルビー!? 救助じゃないのかい?」
「そうよ。ラースは前に言っていたわ。ファーガス将軍は敵に降って魔王軍に配属されたと。あれは間違いない。ファーガス将軍よ!」
「ええ!?」
「太って、ざんばらヒゲだけど用兵が上手でお父様に気に入られていたのよ。食らいついたら放さない、すっぽんのファーガスの異名まであるのよ」
「ほ、ホントですか?」
ソリが滑る僅か後ろを騎兵が迫る。やはり、馬と滑るに任せるだけのソリでは機動力に開きがあるのであろう。
「ラース! このままでは追いつかれるわ! 魔法で撃退してしまいなさい!」
そう。魔法。
ラースには人間にはどうにもならないであろう、強い力がある。
この程度の追っ手を殲滅するのはわけが無いであろう。
私は余裕で鼻を鳴らす。
「あの~、ルビー」
「どうしたの? さっさと、ボーンとやっちゃいなさいな」
「私は光りの勇者で、魔物に魔法を使うのは許されてるけれど、人間に魔法を使うことは許されてないんだ」
「は? はぁ?」
迫り来る追っ手。
だが、魔法を使うことは出来ないですって?
「なんてこと? いつもはドッカンドッカン大爆発させるくせに」
「そんなに爆発させてないだろ」
「いいわよ。私がボルで追い払うわ」
「ダメ! ルビーの魔法も私の契約と同じなんだから!」
「なによぅ! 仕方ないわね」
私は魔法の杖を構えて、後方を走る騎馬へと目がけて杖を振るう。
すると、そこからはボルと同じ威力の火の玉が飛び出し、地面をえぐって爆発した。
馬は怯えて、騎馬の進行が止まる。
「やった! やったわ!」
「あー! ダメだよルビー!」
「なによ。これもダメなの?」
「人に向けて魔法を使っちゃダメなんだってば!」
「うるさいわね。だったらどうやってこの危機を乗り切るのよ?」
「……なんとか逃げ切る」
「ば く ぜーー ん」
漠然としている。なんというノープラン。
光りの勇者とあろうものが、魔王を倒せる唯一の人が、魔王軍に降伏した人間の将軍に追われているなんて。
ファーガス軍はなんとか持ち直し、またもや私たちの背中に迫る。
なによ! こっちは攻撃できないのに、あっちは攻撃できるなんて!
「あ」
「どうしたのルビー!」
「いいこと思いついちゃった」
「いいこと?」
私はイスに捕まりながら荷物袋をまさぐると、そこには小さな箱。箱を開けると、金の棒が入っていた。
私はそれを一本つまみあげ、後ろを走る騎馬隊へとチラつかせた。
「あ!」
「金だ!」
やはり、釣られた。この一本はかなりの価値があるであろう。私はそれを林の方へと投げる。
それを追って数騎隊列から離れた。
「やーいやーい!」
「すごい。いい考えだね、ルビー!」
「お次は二本いっちゃおうかしら?」
後ろの騎馬隊から、ツバを飲み込む音が聞こえる。私は今度は逆サイドの森へと投げ入れると、またもや騎馬隊は数騎そちらの方へと走っていった。
その調子でどんどん金の棒を投げて騎馬隊を隊から離脱させ、ファーガス将軍は数騎に囲まれるのみとなった。
「ファーガス! あなたには、空っぽの箱をくれてあげるわよ!」
そう言いながら箱を投げると、騎馬隊の一人にヒットして、彼は落馬した。
「へっへーん。どんなもんよ~」
「あ!」
「どうしたのよ。あ!!」
道が狭くなる。両脇には岩壁。道はそこにしかない。
だが、このソリではそこは通れない。横幅が余りにも大きいのだ。
「ルビー!!」
ラースは運転から離れ、私を抱く。そしてひょいひょいと持てるだけの鍋や食糧が入った袋を掴むと、ソリから飛び降り、雪の上へ。
ソリは岩壁に当たって砕けた。私はラースに抱きかかえられたまま。
ラースは私を雪の上に下ろすと、私の体に二つの鍋を巻き付けた。なるほど、鎧というわけだわ。
ソリを失った我々の元にファーガスの軍団は私たちを囲み始めた。ファーガスは余裕で私たちに話し掛けてきた。
「さぁ、ルビー王女。こちらに参りませ。私はあなたを魔王様に献上すれはさらなる地位を得られましょう」
「だーれがアンタなんかに」
「そしたら、私は魔王様にあなたを妻に下さるように上奏するつもりです。つまり、あなたの栄華でもあるわけです」
「うるさいわよ、デブ」
「は、はぁ?」
「私には心に決めた人がいるもんね」
そういって私はラースにキスをした。
ラースは最初は驚いていたが、私を抱いて自分から吸う力を強めた。
「ぬ、ぬ、ぬ、ぬ。王女を捕らえよ。男は殺してしまえ!」
その言葉にファーガスの軍団は私たちに襲いかかってきた。
どうなるの?
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