囚われ姫の妄想と現実

家紋武範

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第27話 魔法ボルガ

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襲いかかる騎馬隊の一人にラースは飛びかかり、簡単に馬から追い落とす。

「さあルビー! こっちへ!」
「え? わ、分かったわ!」

しかし、私の行動は雪上の上のため遅い。すぐさま囲まれるものの、ラースは剣を鞘に収めたまま兵士たちに打撃を与え、騎馬隊を簡単にやり込めてしまい、私を鞍の上に乗せ、自分は立ったまま馬を走らせた。
訓練されている兵士に素手で立ち向かえるなんて、ラースってばやっぱりすごい。魔法や刃のついた武器での攻撃はダメだけど、ケンカみたいなのはいいわけね。なるほど。

「ルビー! 居心地悪いだろうけど我慢して!」
「このくらいなんてことないわよ!」

馬は一気に駆け出した。ファーガスの軍団はワンポイント遅れたのだ。
ラースが選んだ岩壁の道は狭い。
向こうは軍団といえども、一列にしか並べないのだ。
だがこちらは二人乗り。向こうは一人乗りだ。
こちらの方が斤量がある。重さで負けているのだ。

「クソ! このままでは!」

ラースが珍しく弱音を吐く。
私はというと、ラースから習ったばかりの契約の言葉を呟いていた。
ボルより数弾威力のある魔法。
私には一度しか使えない──。

そう。大火球魔法ボルガ。
私が使うボルガがどの程度の力なのか分からない。でもこのままでは追いつかれてしまう。
私から、巨大な火球が発生し宙に浮いた。

「な、なにをルビー!? 人に魔法を使ってはダメだよ! 精霊はもう手を貸してくれないよ!」
「そうね。人なら」

「え?」
「ボルガ!」

私が魔法の言葉を唱えると、巨大な火球が暴走する。
しかし、ファーガスの軍団の元ではない。
我々の通った場所には山壁がある。
岩だらけのそこへとボルガの大火球は命中し、砕けた岩々は道の上に崩れ、道を塞いでしまった。
コレではファーガスの軍団は山を大きく迂回しなくてはこちらにこれまい。

「ちょっとマジで、自分で木イチゴ、カミカミできないレベル」
「はは! すごいや! やったね、ルビー!」

ラースは、馬の手綱緩め、ぐったりした私を抱き抱えて馬から下ろした。
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