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第28話 内なる敵
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私は余りの魔力消費により、意識を失った。魔力を失うと、体力がそれをカバーするのだが、あっという間に体力も奪われたというわけだ。
ラースがいなかったら、落馬して雪の上で凍死してしまっただろう。
ファーガスから逃れきった我々は、ソリはなくしたが馬を一頭得て、キャンプを始めていた。
日も沈み、夜のとばりが落ちて、灯りがあるのは私たちのキャンプの焚き火だけ。
私は火の側で息も絶え絶えに毛皮に包まって眠っていた。ラースはそんな私を看病していた。
と思われた。
「ルビー。ルビー。好きだよ。好き」
動けない私に寄り添って、耳元でささやいているのだ。手を繋ぎ、腰を抱いて。
「ホント。ラース。ダメなの。辛い」
「うん。分かってる。だからこそ側にいるんじゃないか」
分かってない。離れて欲しいのだが。
時折、口移しで水や雪割り木イチゴを口内に入れてくる。これは口実の接吻だ。彼は欲求のままに荒々しい口づけをする。
しかし、抵抗する気力がない。彼は一線は越えないものの、動けない私に自分の欲求をぶつけてくるようだった。
「あー、ルビーの髪の香りはいい薫りだね」
「げ ん め つ」
「まぁまぁ、そう言わずに。ふふ」
見てらっしゃい。今に見てらっしゃい。
今までのうっぷんをはらすかのようなハラスメント。
しばらくくっついているだけのラースだったが、急に胸に触れてきた。だがすぐに手を放す。
「スイマセン……」
謝罪の後、体を離したが、またすぐに横になってまた胸に触れてきた。
「ラース、あなた」
「うーん。もういいだろ?」
「なにがいいのよ」
「そりゃ、将来夫婦になるんだから」
なんたるクズのセリフ。
我慢に我慢を重ねてきたくせに、私が動けないとなると、襲うような男なのね。くぬ~。しかし、嫌いになれない。いつもは優しいラースだもの、この一点で嫌いになれというのは浅慮だわ。
「ねぇルビー。もう思いを遂げてもいいだろ? 好きで好きでたまらないんだもの。キミを自分だけのものにしたいんだ。頼むよぅ」
「だから、前にもいったでしょ? あなたは清らかな勇者じゃなきゃ全国のそしりを受けるわよ?」
「なんかそういうのも、もういいかな~って思ってきた」
「な?」
「だって、黙ってればわからないもの。ルビーと私は愛し合ってる。だから!」
だから、ときた。
ラースは自分に負けそうになっているのだ。
それにしても体が動かないとは不自由なものだ。普段だったらラースを叱り飛ばしてオドオドモードにさせられるのに。
「今ちょうど敵もいないし、いいだろ? ね? ハイ決まりィ!」
「ダメに決まってるでしょ。嫌いになるからね」
「そんなぁ~。今決まったじゃない」
「あなたが勝手に決めたのよ」
「ルビーも本当の気持ちはオッケーだよね。でしょ? そうでしょ?」
うーざ。男ってこんなにウザいの?
「いい、これ以上なにかしたら嫌いになるから。絶対」
ラースは寂しそうな顔をしたがすぐに目に光りを宿らせた。
「どーせ嫌われるならいーか」
「はぁ?」
「ルビーは今動けないし、私がいないと国に帰れないわけだし」
コイツ、強攻策できた!
破れかぶれの作戦。
敵より厄介じゃない。
「光りの勇者さまは、人を攻撃できないんじゃないんでしたっけ!?」
しかしラースはそれを無視。興奮度合いが増したキスに夢中。
ふと、馬のいななきが聞こえた。
ラースのガッカリした顔ときたら。
「ホラホラ敵じゃない?」
「……あーもぅ!」
かなりイライラした態度のままラースは立ち上がり辺りを警戒し始めた。手にはすでに火球が宿りすぐさま攻撃できるようになっている。
私はそのスキに雪割り木イチゴを口の中に放り込む。魔力よ回復せよ。体力よ戻れと祈りながら。早くしないと、このソフト強姦魔は敵を片付け次第私に襲いかかってくるだろう。
しかしイチゴが消化されない限りは魔力なぞ回復されるはずもない。
ラースがいなかったら、落馬して雪の上で凍死してしまっただろう。
ファーガスから逃れきった我々は、ソリはなくしたが馬を一頭得て、キャンプを始めていた。
日も沈み、夜のとばりが落ちて、灯りがあるのは私たちのキャンプの焚き火だけ。
私は火の側で息も絶え絶えに毛皮に包まって眠っていた。ラースはそんな私を看病していた。
と思われた。
「ルビー。ルビー。好きだよ。好き」
動けない私に寄り添って、耳元でささやいているのだ。手を繋ぎ、腰を抱いて。
「ホント。ラース。ダメなの。辛い」
「うん。分かってる。だからこそ側にいるんじゃないか」
分かってない。離れて欲しいのだが。
時折、口移しで水や雪割り木イチゴを口内に入れてくる。これは口実の接吻だ。彼は欲求のままに荒々しい口づけをする。
しかし、抵抗する気力がない。彼は一線は越えないものの、動けない私に自分の欲求をぶつけてくるようだった。
「あー、ルビーの髪の香りはいい薫りだね」
「げ ん め つ」
「まぁまぁ、そう言わずに。ふふ」
見てらっしゃい。今に見てらっしゃい。
今までのうっぷんをはらすかのようなハラスメント。
しばらくくっついているだけのラースだったが、急に胸に触れてきた。だがすぐに手を放す。
「スイマセン……」
謝罪の後、体を離したが、またすぐに横になってまた胸に触れてきた。
「ラース、あなた」
「うーん。もういいだろ?」
「なにがいいのよ」
「そりゃ、将来夫婦になるんだから」
なんたるクズのセリフ。
我慢に我慢を重ねてきたくせに、私が動けないとなると、襲うような男なのね。くぬ~。しかし、嫌いになれない。いつもは優しいラースだもの、この一点で嫌いになれというのは浅慮だわ。
「ねぇルビー。もう思いを遂げてもいいだろ? 好きで好きでたまらないんだもの。キミを自分だけのものにしたいんだ。頼むよぅ」
「だから、前にもいったでしょ? あなたは清らかな勇者じゃなきゃ全国のそしりを受けるわよ?」
「なんかそういうのも、もういいかな~って思ってきた」
「な?」
「だって、黙ってればわからないもの。ルビーと私は愛し合ってる。だから!」
だから、ときた。
ラースは自分に負けそうになっているのだ。
それにしても体が動かないとは不自由なものだ。普段だったらラースを叱り飛ばしてオドオドモードにさせられるのに。
「今ちょうど敵もいないし、いいだろ? ね? ハイ決まりィ!」
「ダメに決まってるでしょ。嫌いになるからね」
「そんなぁ~。今決まったじゃない」
「あなたが勝手に決めたのよ」
「ルビーも本当の気持ちはオッケーだよね。でしょ? そうでしょ?」
うーざ。男ってこんなにウザいの?
「いい、これ以上なにかしたら嫌いになるから。絶対」
ラースは寂しそうな顔をしたがすぐに目に光りを宿らせた。
「どーせ嫌われるならいーか」
「はぁ?」
「ルビーは今動けないし、私がいないと国に帰れないわけだし」
コイツ、強攻策できた!
破れかぶれの作戦。
敵より厄介じゃない。
「光りの勇者さまは、人を攻撃できないんじゃないんでしたっけ!?」
しかしラースはそれを無視。興奮度合いが増したキスに夢中。
ふと、馬のいななきが聞こえた。
ラースのガッカリした顔ときたら。
「ホラホラ敵じゃない?」
「……あーもぅ!」
かなりイライラした態度のままラースは立ち上がり辺りを警戒し始めた。手にはすでに火球が宿りすぐさま攻撃できるようになっている。
私はそのスキに雪割り木イチゴを口の中に放り込む。魔力よ回復せよ。体力よ戻れと祈りながら。早くしないと、このソフト強姦魔は敵を片付け次第私に襲いかかってくるだろう。
しかしイチゴが消化されない限りは魔力なぞ回復されるはずもない。
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