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第31話 ラースに託して
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ラースは観念した。つまり、私と長旅をしたいがために、徒歩や速度の遅いソリを使ってきたと言うことだ。それに聖剣をドラゴンにすると剣が使えないという理由もあったが睨みつけたら大人しくなった。
「まったく、ラースってそればっかり。国は危機に瀕しているというのに」
「スイマセン。でもルビーを愛している気持ちは本当なんだ」
そりゃ当たり前でしょ。だからこそドラゴンを秘密にしていたということなんだから。
「とりあえず、ラースはドラゴン。私はユニコーンに乗ってすぐさま国に急ぎましょ」
「は、はい」
私はユニコーンに跨がると、ラースは聖剣をドラゴンに変え二人は空へと舞い上がる。
国境が近かったのであろう。魔族と人間の境界である長城が見える。長い長い城壁。空を飛んだりする魔物には無意味だが、軍勢をなしてやってくるものには効果が高い。この城壁があっても魔族は境を破って侵入してしまうのだが。
その長城から、煙が上がっている。どうやら戦闘が起きている。しかも、味方の旗色は悪そうだ。
「ん? あれは──」
ラースが声を上げるのも無理はない。
その戦いは魔族とではない。
人対人。
人間が魔族側に立ち、長城を攻略しようとしている。しかも、あれはファーガス将軍だ!
「ラース! 加勢するわよ!」
「ちょ、ちょっと! ルビー!」
ラースは、ユニコーンの馬首を長城へと向けようとする私を止める。
「なによ」
「無茶だよ。私には人間を攻撃出来ない」
「なっ! じゃ、むざむざと味方がやられるのを見ていろって言うの?」
「そうじゃないけど、しかし!」
「しかしも、かかしもない」
私はユニコーンとともに城壁に向かうと、最初は誰も気付かなかったが、ユニコーンの光りに誰かが叫び、味方から歓声が起こった。
「あ、あれはルビー王女だ!」
「ルビー王女が我々を鼓舞しに来て下さった!」
一気に城壁の味方の士気は高まった。だが持ち場を離れることはしない。籠城しているのに劣勢だ。これがファーガス将軍の用兵ということだわ。ラースもこっそりとドラゴンで飛来し、すぐさま聖剣に戻してしまった。
「ラース。あなたの力はこの中で一番優秀よ。敵の要であるファーガス将軍を討ち取ってもらうわ。いいわね」
「だ、ダメだよ、ルビー。私は刃のついた武器で人間を殺傷することは許されない。そうすると勇者の力は失われるんだ。ただの人間になってしまうんだよ」
「そうね。でも、刃のついた武器じゃなきゃいいわけでしょ。ラースは軍勢の後ろでふんぞり返ってるファーガスをドラゴンに乗って奇襲して倒す。指揮官を失った兵士たちは蜘蛛の子を散らすようになるか、全員降伏するわ。小の虫を殺して大の虫を生かすのよ。いい?」
「う、うん……」
ラースは納得して後ろに下がる。城壁にある国旗の鉄竿を引き抜き、旗を取り払った。なるほど、その鉄竿がラースの武器というわけだ。
私が来たことで城壁の兵士たちの士気は高まったものの、熟練度は低い。長年の戦で兵士は訓練度の少ないものに変更されるほど行き詰まっているのかも知れない。だから、ファーガスの兵士にいとも容易くやり込められる。
少しでも城壁から顔を出せば弓矢の餌食になる。
かといって攻撃しなければ、壁に梯子を立てられ攻め込まれてしまう。
まだ人数が多いのでそこまでの攻城には至ってはいないが時間の問題だ。
だからこそラースに期待するしかない。
「まったく、ラースってそればっかり。国は危機に瀕しているというのに」
「スイマセン。でもルビーを愛している気持ちは本当なんだ」
そりゃ当たり前でしょ。だからこそドラゴンを秘密にしていたということなんだから。
「とりあえず、ラースはドラゴン。私はユニコーンに乗ってすぐさま国に急ぎましょ」
「は、はい」
私はユニコーンに跨がると、ラースは聖剣をドラゴンに変え二人は空へと舞い上がる。
国境が近かったのであろう。魔族と人間の境界である長城が見える。長い長い城壁。空を飛んだりする魔物には無意味だが、軍勢をなしてやってくるものには効果が高い。この城壁があっても魔族は境を破って侵入してしまうのだが。
その長城から、煙が上がっている。どうやら戦闘が起きている。しかも、味方の旗色は悪そうだ。
「ん? あれは──」
ラースが声を上げるのも無理はない。
その戦いは魔族とではない。
人対人。
人間が魔族側に立ち、長城を攻略しようとしている。しかも、あれはファーガス将軍だ!
「ラース! 加勢するわよ!」
「ちょ、ちょっと! ルビー!」
ラースは、ユニコーンの馬首を長城へと向けようとする私を止める。
「なによ」
「無茶だよ。私には人間を攻撃出来ない」
「なっ! じゃ、むざむざと味方がやられるのを見ていろって言うの?」
「そうじゃないけど、しかし!」
「しかしも、かかしもない」
私はユニコーンとともに城壁に向かうと、最初は誰も気付かなかったが、ユニコーンの光りに誰かが叫び、味方から歓声が起こった。
「あ、あれはルビー王女だ!」
「ルビー王女が我々を鼓舞しに来て下さった!」
一気に城壁の味方の士気は高まった。だが持ち場を離れることはしない。籠城しているのに劣勢だ。これがファーガス将軍の用兵ということだわ。ラースもこっそりとドラゴンで飛来し、すぐさま聖剣に戻してしまった。
「ラース。あなたの力はこの中で一番優秀よ。敵の要であるファーガス将軍を討ち取ってもらうわ。いいわね」
「だ、ダメだよ、ルビー。私は刃のついた武器で人間を殺傷することは許されない。そうすると勇者の力は失われるんだ。ただの人間になってしまうんだよ」
「そうね。でも、刃のついた武器じゃなきゃいいわけでしょ。ラースは軍勢の後ろでふんぞり返ってるファーガスをドラゴンに乗って奇襲して倒す。指揮官を失った兵士たちは蜘蛛の子を散らすようになるか、全員降伏するわ。小の虫を殺して大の虫を生かすのよ。いい?」
「う、うん……」
ラースは納得して後ろに下がる。城壁にある国旗の鉄竿を引き抜き、旗を取り払った。なるほど、その鉄竿がラースの武器というわけだ。
私が来たことで城壁の兵士たちの士気は高まったものの、熟練度は低い。長年の戦で兵士は訓練度の少ないものに変更されるほど行き詰まっているのかも知れない。だから、ファーガスの兵士にいとも容易くやり込められる。
少しでも城壁から顔を出せば弓矢の餌食になる。
かといって攻撃しなければ、壁に梯子を立てられ攻め込まれてしまう。
まだ人数が多いのでそこまでの攻城には至ってはいないが時間の問題だ。
だからこそラースに期待するしかない。
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