王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範

文字の大きさ
9 / 13

第9話 オリビア⑤

しおりを挟む
 お茶会。
 あれから三人でしばらく談笑していた。それはカーラの出身やスザンヌの昔の屋敷の話。最近の天気や流行の髪飾り。そんな雑談だったが楽しくて仕方がない。
 しかし、カーラはスザンヌに目配せを送ったことが分かった。スザンヌも、している話を切り上げてしまった。

「あ、あら、どうしたの?」

 その言葉にカーラは少女らしさから一変して妖しい笑みを浮かべた。

「実は先ほど言いました、私たちの不満のことですの」
「ふ、不満? 王宮に来て陛下に愛され、なにか不都合がおありになって?」

 私がそういうと、二人は顔を見合わせて扇で口元を隠した。口が見えないが、眉が逆立って怒っているような、挑発するような、そんな感じに見て取れた。

「ああ、カーラ。キミはオリビアに比べてまるで少女のように素直で従順だ。素晴らしいよ」

 カーラからの言葉にドキリとした。それはアドリアン様の口調。アドリアン様と二人の時に聞いた言葉なのだ。

 オリビアに比べて。
 オリビアに比べて──。

 私の頭は真っ白になってしまったが、今度はスザンヌからだった。

「スザンヌ。キミはオリビアに比べて、明るい性格だな。一緒にいて楽しいよ」

 なにがなんだか分からない。二人はなぜこんなことを私に聞かせるのか。私は目の前が真っ暗になってしまった。

「カーラ。キミにこの耳飾りを送ろう。この中からどれがいい? それからスマンがオリビアにはどれが似合うと思う? それ以外を選んでくれたまえ」

 え──?

「スザンヌ。もう夜も遅い。オリビアの部屋の明かりも消えてしまったな。私は自室に帰るとするよ。お休み」

 ん? ん?

 二人は細くため息をついた。そして扇を下ろしてまくし立てるように話し出す。

「ああん、もう! 二人ともなんでそんなに強情ですの? 好きなんでしょう!?」
「そうですわ。二人とも早くに互いに心を通じ合っていれば私たちは籠の鳥にならずに済んだのに!」

 わあわあと二人は私に詰め寄る。その内容は、アドリアン様は私を愛しているものの、私の態度が緩まないのでなにも出来ないので、イヤミを言うことしか出来ないらしい。
 そして、私がアドリアン様を愛していることも侍女たちの裏情報で分かっているとのことだった。

 私は顔から火が出るように真っ赤になってしまっていた。

「陛下のおっしゃることといえば、オリビアが──、オリビアは──、オリビアに比べれば──、ばっかり。私たちなんて元々、家臣から薦められただけで、恋とか愛の相手じゃありませんわ」
「もう。二人ともしっかりなさいまし。これでは私たちは、ただの飾り物ですわ。なにしろ陛下は子どものようにオリビア様を一途に思ってらっしゃいますから。一生手をつけられません。さっさと二人が愛し合って、我々はこの国の伝統にありますように、側室を家臣に下賜されたほうがよっぽどましな人生を送れましてよ?」

 カーラがそう言うと、スザンヌはすぐさま口を開いた。

「私は騎士長のヘンリーがいいです」

 ヘンリーって。なんか一途に思い続けてる人がいて、婚約者もとらないって有名な人よね。たしかスザンヌとは縁続きだったような……。
 それを聞くと今度はカーラだ。

「私は、ローガン将軍ですわね」

 ローガン将軍……。カーラと20歳くらい歳が離れてるけど、戦のことしか考えてない寡黙な国の大忠臣って聞いてたけど……。



 私は頭を押さえてため息をついた。二人ともよく考えている。
 それよりも私たちだ。王宮内で私たちの互いに譲らず気のない振りをする姿は滑稽だったに違いない。

「さあオリビア様。私たちの不満はこういうことですの。いい加減に素直におなりあそばして、陛下に愛を伝えて下さいまし」
「そうですわ。私たちは一度は恋を諦めて王宮に来ましたが、お二人を見ているとなんとかなりそう。命がけでお二人の仲を取り持ちたく思っております」

 これは……。おそらく二人には別に縁があって愛する人がいたのかもしれない。しかし、国王陛下の側室と言われて他に婚約もしていないので断ることも出来ずに王室に嫁してきたのだわ。
 しかし、陛下は実は二人に愛を示さず、二人はこの計画を打ち明けてきたということね。
 私は笑顔になって本心を打ち明けた。

「私も──。私も、陛下を深く愛していて……」
「「知ってた!」」

 二人とも冷や汗を垂らして立ち上がり、苦笑している。やっぱり知っていたのね……。
 カーラは小さい体を震わせて、拳を突き上げた。

「さぁ、では今から陛下の元へ愛の告白へ行ってらっしゃいませ!」
「え? い、今から? だって陛下は国境にいるのよ? 馬車でも一週間の旅程だわ」

 それにカーラはポンと胸を叩いた。

「大丈夫。秘密ですが私の侍女に移動魔法を使える者がおりますの」

 魔法? 歴史上ではずいぶん前に失われた技術だわ。おとぎ話でもあるまいし、そんなことが本当に?

「ソフィア。いらっしゃい」

 カーラがそういうと、少し歳の行った侍女が笑顔で現れた。

「王妃さま。準備はよろしいですか?」

 そう問うので、そんなに早くは行けない。私は少し時間をもらい、部屋へと帰り、侍女たちに命じて召し物を替えさせた。
 着替えて戻ると、みんな目を丸くした。それもそのはず、私は軍服姿の軽装となっていたからだ。

「さあこれでいいわ。その魔法で私をアドリアン様の元に届けてくださる?」
「かしこまりました、王妃さま」

 ソフィアという侍女は私の手をとり、なにやら念じ始めた。

「さあ行きます! 国王陛下の元へぱぴゅーーん!!」

 私とソフィアの姿はその部屋から消えた。
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~

矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。 隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。 周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。 ※設定はゆるいです。

跡継ぎが産めなければ私は用なし!? でしたらあなたの前から消えて差し上げます。どうぞ愛妾とお幸せに。

Kouei
恋愛
私リサーリア・ウォルトマンは、父の命令でグリフォンド伯爵令息であるモートンの妻になった。 政略結婚だったけれど、お互いに思い合い、幸せに暮らしていた。 しかし結婚して1年経っても子宝に恵まれなかった事で、義父母に愛妾を薦められた夫。 「承知致しました」 夫は二つ返事で承諾した。 私を裏切らないと言ったのに、こんな簡単に受け入れるなんて…! 貴方がそのつもりなら、私は喜んで消えて差し上げますわ。 私は切岸に立って、夕日を見ながら夫に別れを告げた―――… ※この作品は、他サイトにも投稿しています。

旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。

アズやっこ
恋愛
私は旦那様を愛していました。 今日は三年目の結婚記念日。帰らない旦那様をそれでも待ち続けました。 私は旦那様を愛していました。それでも旦那様は私を愛してくれないのですね。 これはお別れではありません。役目が終わったので交代するだけです。役立たずの妻で申し訳ありませんでした。

婚約者が実は私を嫌っていたので、全て忘れる事にしました

Kouei
恋愛
私セイシェル・メルハーフェンは、 あこがれていたルパート・プレトリア伯爵令息と婚約できて幸せだった。 ルパート様も私に歩み寄ろうとして下さっている。 けれど私は聞いてしまった。ルパート様の本音を。 『我慢するしかない』 『彼女といると疲れる』 私はルパート様に嫌われていたの? 本当は厭わしく思っていたの? だから私は決めました。 あなたを忘れようと… ※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。

〖完結〗愛しているから、あなたを愛していないフリをします。

藍川みいな
恋愛
ずっと大好きだった幼なじみの侯爵令息、ウォルシュ様。そんなウォルシュ様から、結婚をして欲しいと言われました。 但し、条件付きで。 「子を産めれば誰でもよかったのだが、やっぱり俺の事を分かってくれている君に頼みたい。愛のない結婚をしてくれ。」 彼は、私の気持ちを知りません。もしも、私が彼を愛している事を知られてしまったら捨てられてしまう。 だから、私は全力であなたを愛していないフリをします。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全7話で完結になります。

婚約者の様子がおかしいので尾行したら、隠し妻と子供がいました

Kouei
恋愛
婚約者の様子がおかしい… ご両親が事故で亡くなったばかりだと分かっているけれど…何かがおかしいわ。 忌明けを過ぎて…もう2か月近く会っていないし。 だから私は婚約者を尾行した。 するとそこで目にしたのは、婚約者そっくりの小さな男の子と美しい女性と一緒にいる彼の姿だった。 まさかっ 隠し妻と子供がいたなんて!!! ※誤字脱字報告ありがとうございます。 ※この作品は、他サイトにも投稿しています。

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

処理中です...