しあわせのあしどり

伊澄(ism)

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ため息。
今日何度目だろう。
昨日はもう勝手に盛り上がってしまった高橋理人を追い返すのに必死だった。
思い出しても情けない。

「か、え、れ、よ!!」

と背中を全力で押すも、ビクともしない。
あれ、こいつ、けっこう筋肉質だな……。

「まだ、いいじゃないですか~!」

「とにかくもう話すことは無い!」

「パートナーになるって言ってくれなきゃ帰りません。」

「ンーーーー!!」

体幹強。

「くそ、お前何部だったっけ?!」

「バスケ。」

体育会系め!
バスケなんてルールすらよく知らん!
スラムダンク読まずに生きてきた人種なんだよ!

「ていうか、ほんとっ、おまえ、重い、なっ……!」

追い出そうと背中を押している俺の動きを、まるで無視して急に振り向くから勢いよく胸に飛び込む形になってしまう。

「あ、積極的。」

背中に手を回してくる、高橋理人。

「ちがうッ!!!」

手を突っ張って距離をとる。
決しておれが小さいわけではない。身長172cm、日本人男性の平均はあるんだから、チビではない。バスケットボール部なだけあってか高橋理人がデカめなだけで。

「くそバスケ部……!」

「あ~、いまバスケ部ディスりました?」

「お前をディスったんだよ!!!」

そんな~とか言いながら、腹を押す俺の腕を掴んで持ち上げる。
やっぱ先生腕細すぎ、骨しかないじゃん。失礼な独り言だ、多少は筋肉も……。
両方の手首を掴んでバンザイさせたり、頭の上でブンブン振らせたり、やりたい放題だ。
筋肉がないことは認めるよ!

「一体何が望みだ!」

「だから言ってるじゃん、俺のパートナーになって。」

「パートナーってお前な、教師と生徒という立場があるだろうが!」

「内緒にすれば大丈夫。俺絶対秘密守るし。」

それに、俺たち相性いいんじゃないかな?
ドキッ。
それは自覚していただけに反論できない。
多分めちゃくちゃ相性はいい。でも、生徒とplayするなんて、倫理観ないって言うか、なんかもう反社会的だろ。
でも、こいつに褒められるの、気持ちよかったなぁ……。

「……じゃない!ちがうちがうちがう!」

触られたところが、ジン、て熱くなって……。

「……って、待て待て!待ておれ!」

命令に従うと心が落ち着いて……。

「もしかして先生、葛藤してる?」

腕を持ち上げてむりやり背伸びさせると顔をのぞきこんだ。

「うるさい!」

噛みつきそうな勢いで返事をする。
図星だったからなわけだけど。
……図星だって、馬鹿らしい。なんだかもう抵抗するのが面倒くさくなってきた。
高校生(しかもバスケ部)の相手ができるほどタフじゃない。もう体力と気力の限界だった。

「……解ったよ。」

「え、なにが?」

「……ナーに……る。」

「え……?」

わかってて聞き返してやがるな。

「パートナーにでも何でもなってやるって言ってんだ!!」

もし漫画なら、おれの後ろには大きな文字で【ででーん】と書かれていることだろう。
斯くして、おれ、佐伯 光太サエキ コウタと高橋理人はパートナー関係になった。
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