13 / 63
13
しおりを挟む
誤算だった。
おれは今までパートナーなんていた事がない。
つまり、どうして良いのか分からないのだ。
ポンッとサブの携帯が鳴る。こっちは裏の仕事用。美術講師準備室でひとりで昼ごはんをしているおれは完全に気を抜いてサブの携帯を開いた。
お得意様から。
『ヒカルくん、今日夜8でどう?場所はいつものホテル。』
正直この客、篠田さんは窒息プレイが好きで何度意識を飛ばしかけたか分からない絶妙なラインでやばい人なのでなやんだ。
でも、今月、ちょっとやばいんだよな。
『OKです!時間とか決めたらまた連絡ください!』
と。
「先生飯そんだけ?」
ビックリして椅子から落ちましたが。
「オーバーリアクション~」と言いながら高橋理人は俺を立ち上がらせた。
「先生ってケータイ2台持ちなんだね。」
「まぁ、な。」
「それよりお前は昼飯食べたのか?」
話の逸らし方、ちょっと強引だったかな。
「1個は食べたよ。2限目に。」
人はそれを早弁と言う。
「これ、2つ目。どうせなら一緒に食べたいと思って。……だめ?」
子犬を思わせる瞳でこちらを見てくる高橋理人。
「別にダメじゃないけれど、おれの昼飯これで終わるぞ。」
机に置いてある齧り掛けのコンビニおむすびと野菜ジュース。
「うそだー、信じらんない。足りないでしょ!」
足りてるからこれだけなわけですが。
「先生、口、開けて。」
へ?と思うまもなく、身体は素直に反応している。
ぽかんと空けられた口に卵焼きが突っ込まれる。
「食べて。」
ゆっくりと咀嚼する。
美味しい。甘い卵焼きだ。
「おいしい?」
「おいしい……。」
いい子。と、頭をなぜられる。
実は昼用の弁当、ちょっと多めに作ってきたんだよね、だからほかのも味見してみて。
「あーん。」
恥ずかしかったけれど、それに従う幸福感の方が強かった。
今度は唐揚げ、野菜炒め、煮物……、どれもひと口サイズに切り分けてある。
こいつなりに気を使ってるんだな……。なんて、ちょっと嬉しかったりした。
しかしひと通り食べたところで胃袋の限界が来た。
「もう、お腹いっぱい……。」
まだ高橋理人の弁当箱には相当の料理が残っていた。
それはおれが食べることを期待して作られたものだろう。そんな期待に応えることも出来ないのか。
「ごめん、なさい……。」
手が冷たくなっていく。指先からどんどんと、化石になっていくみたいに。
惨めで、吐きそうだ。すると高橋理人は俯いて震えるおれの手を両手で包み込んだ。その手をそっと持ち上げて、冷えきった指先にキスを落とした。
「謝らないでいいんだよ。たくさん食べたね、Good boy。ありがとう。」
キスされた指先が少しずつ温もりを取り戻していくのを感じた。
おれは今までパートナーなんていた事がない。
つまり、どうして良いのか分からないのだ。
ポンッとサブの携帯が鳴る。こっちは裏の仕事用。美術講師準備室でひとりで昼ごはんをしているおれは完全に気を抜いてサブの携帯を開いた。
お得意様から。
『ヒカルくん、今日夜8でどう?場所はいつものホテル。』
正直この客、篠田さんは窒息プレイが好きで何度意識を飛ばしかけたか分からない絶妙なラインでやばい人なのでなやんだ。
でも、今月、ちょっとやばいんだよな。
『OKです!時間とか決めたらまた連絡ください!』
と。
「先生飯そんだけ?」
ビックリして椅子から落ちましたが。
「オーバーリアクション~」と言いながら高橋理人は俺を立ち上がらせた。
「先生ってケータイ2台持ちなんだね。」
「まぁ、な。」
「それよりお前は昼飯食べたのか?」
話の逸らし方、ちょっと強引だったかな。
「1個は食べたよ。2限目に。」
人はそれを早弁と言う。
「これ、2つ目。どうせなら一緒に食べたいと思って。……だめ?」
子犬を思わせる瞳でこちらを見てくる高橋理人。
「別にダメじゃないけれど、おれの昼飯これで終わるぞ。」
机に置いてある齧り掛けのコンビニおむすびと野菜ジュース。
「うそだー、信じらんない。足りないでしょ!」
足りてるからこれだけなわけですが。
「先生、口、開けて。」
へ?と思うまもなく、身体は素直に反応している。
ぽかんと空けられた口に卵焼きが突っ込まれる。
「食べて。」
ゆっくりと咀嚼する。
美味しい。甘い卵焼きだ。
「おいしい?」
「おいしい……。」
いい子。と、頭をなぜられる。
実は昼用の弁当、ちょっと多めに作ってきたんだよね、だからほかのも味見してみて。
「あーん。」
恥ずかしかったけれど、それに従う幸福感の方が強かった。
今度は唐揚げ、野菜炒め、煮物……、どれもひと口サイズに切り分けてある。
こいつなりに気を使ってるんだな……。なんて、ちょっと嬉しかったりした。
しかしひと通り食べたところで胃袋の限界が来た。
「もう、お腹いっぱい……。」
まだ高橋理人の弁当箱には相当の料理が残っていた。
それはおれが食べることを期待して作られたものだろう。そんな期待に応えることも出来ないのか。
「ごめん、なさい……。」
手が冷たくなっていく。指先からどんどんと、化石になっていくみたいに。
惨めで、吐きそうだ。すると高橋理人は俯いて震えるおれの手を両手で包み込んだ。その手をそっと持ち上げて、冷えきった指先にキスを落とした。
「謝らないでいいんだよ。たくさん食べたね、Good boy。ありがとう。」
キスされた指先が少しずつ温もりを取り戻していくのを感じた。
1
あなたにおすすめの小説
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
隠れSubは大好きなDomに跪きたい
みー
BL
ある日ハイランクDomの榊千鶴に告白してきたのは、Subを怖がらせているという噂のあの子でー。
更新がずいぶん遅れてしまいました。全話加筆修正いたしましたので、また読んでいただけると嬉しいです。
世界で一番優しいKNEELをあなたに
珈琲きの子
BL
グレアの圧力の中セーフワードも使えない状態で体を弄ばれる。初めてパートナー契約したDomから卑劣な洗礼を受け、ダイナミクス恐怖症になったSubの一希は、自分のダイナミクスを隠し、Usualとして生きていた。
Usualとして恋をして、Usualとして恋人と愛し合う。
抑制剤を服用しながらだったが、Usualである恋人の省吾と過ごす時間は何物にも代えがたいものだった。
しかし、ある日ある男から「久しぶりに会わないか」と電話がかかってくる。その男は一希の初めてのパートナーでありSubとしての喜びを教えた男だった。
※Dom/Subユニバース独自設定有り
※やんわりモブレ有り
※Usual✕Sub
※ダイナミクスの変異あり
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
不透明な君と。
pAp1Ko
BL
Dom/Subユニバースのお話。
Dom(美人、細い、色素薄め、一人称:僕、168cm)
柚岡璃華(ユズオカ リカ)
×
Sub(細マッチョ、眼鏡、口悪い、一人称:俺、180cm)
暈來希(ヒカサ ライキ)
Subと診断されたがランクが高すぎて誰のcommandも効かず、周りからはNeutralまたは見た目からDomだと思われていた暈來希。
小柄で美人な容姿、色素の薄い外見からSubだと思われやすい高ランクのDom、柚岡璃華。
この二人が出会いパートナーになるまでのお話。
完結済み、5日間に分けて投稿。
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる