しあわせのあしどり

伊澄(ism)

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「概ねのお話は幼なじみでらっしゃる空木さんから聞きましたが、詳しい話をおきかせ願えますか。」

「理人、ここに居て……。」

「わかった。」

高二のあの日、おれが家に帰ると祖父がいつになく上機嫌で「おかえり。」と言った。向こうから罵倒以外の声をかけてくるなんてめずらしいことだから少し不審に思った。

「喉乾いてるだろ。」

と、いっぱいのジュースの入ったコップを渡された。今思うとそれになにか薬が入っていたんだと思う。でも甘い飲み物なんて滅多に与えられなかったので嬉しかった。
飲んだあと酷く眠くなったことは覚えている。
気づいたら家の裏の物置小屋で、何人もの男に囲まれていた。
そのうちの一人に当時一つ年上で高校を中退して近所でも不良で有名な設楽がいた。
抵抗したが、体に力が入らず、また頭がぼんやりとしてうまく抵抗できなかった。
設楽がDomだったため、Commandを言われて従うしかなかった。
学ランを脱いで、裸にさせられた。
それからはもうよく思い出せないけれど、次から次へ口やアナルへの挿入があった。
嫌がると容赦なく殴られた。
次に気づいた時には全て解散しており、物置小屋には自分一人だった。
それ以来、設楽が執拗に付きまとうようになった。
高校三年の時祖父が死に、大学生になった頃には祖母もボケたのでホームに預け大学の近くに引っ越すまで、設楽のストーカーは続いた。
大学在学中にも一度設楽に家がバレて引越しをした。
そして、今年の四月末、スーパーマーケットの脇のベンチに座っている時、この街で久しぶりに設楽の姿を見た。

「それって、あの日?過呼吸起こしてたとき……。」

「うん……。」

それから家に帰る時はつけられてないかとか、気をつけていたんだけれど、結局家バレするより先に公園に引きずり込まれてしまった。

「人通りの少ない道を歩いてしまったのも、迂闊でした……。」

あとは、殴られて蹴られて刺されて犯されて……。

話していて少し混乱してきた。
死にたい。
死んでしまいそうだ。
どうしよう、死んじゃう!
刺されたんだ!
死んじゃうよ!

「光太、光太、こっち見て。」

「り、ひと……?」

「大丈夫。もう大丈夫だから。」

だいじょうぶ……。
だいじょうぶ、だいじょうぶ。
隣には理人が居る、だいじょうぶ。

「あと何点かお聞きしたいことが……。」

そう言って刑事さんが何個か質問をして、それにたどたどしく応えた。
刑事さんは、また進展があり次第ご連絡差し上げます、と言って帰って行った。

「疲れたでしょ、寝てもいいからね。」

「理人、おれのこと嫌いになった……?」

「え?どこで?なるわけないじゃん。」

よかった。これだけ汚れてることが分かってもまだ理人は横にいてくれるらしい。
なんだか、ふわふわしてきた。
額にキスが降ってきて、おれは意識を手放した。
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