しあわせのあしどり

伊澄(ism)

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入院して一週間経った。
夜は相変わらず眠れず、その代わり昼間にウトウトとすることが多くなってきてしまった。
これじゃ昼夜逆転してしまう。夜寝なきゃ、と焦ると余計に眠れなくなる。暗闇の恐怖のなか完全な悪循環に陥っていた。
今日は補講期間で理人も昼過ぎまで来ない。寝不足で頭がガンガンする。

「よう、光太。見舞いに来たぞ~。」

「先輩。」

顔色わる。
と吹き出す先輩。笑い事じゃねえ……。

「なんか眠れないって?」

「はい、その……。薬飲んで一度は眠りに落ちるんですけれど、一時間もしないうちに悪夢で目が覚めちゃって。」

「悪夢っていうのは?あ、これお見舞い。暑いから冷蔵庫入れとくな。プリンだから後で理人と食え。」

先輩が冷蔵庫に小さな箱を入れる。

「昔の夢とか、この間の夜の夢とか、何かに追いかけられる夢とか、色々ですけど、とにかく嫌な夢……。」

「うん。なるほどな。薬はこの間見せてもらったの飲んでるんだよな?」

「はい。」

あれ以上は増やせないよな……。と呟く先輩。

「暗いのが……、……怖くて。あれ以来、暗いのが怖いんです。あいつが居そうな気がして……、怖い。」

「そうか、それで眠れない?」

「の、かも……しれない。」

「わかった、ナースステーションに言ってみてやるよ。」

すみません……。
自分では恥ずかしくて言えなくて……。

「しょぼくれるなよ~。」

ガシガシと頭を撫でられる。

「子どもじゃないんですからやめてくださいってば!」

「悪いがいつまで経っても子どもにしか見えん。」

ははは、といい声でわらった。
相変わらず顔と声だけは良い。
性格は悪いけど。だから結婚出来ないんだ、きっとそうだ。

「なんか今失礼なこと考えてたろ、お前。」

「別に、なにもですけど?」

それからいくつか雑談をして、アップルパイが美味しかった話とか、をして先輩は帰って行った。
その晩からでん気をつけたまま就寝することが特別に許されることになった。
快眠とまでは行かないし、夜中に何度も目が覚めてしまうのは変わらなかったが明るい部屋に帰ってくれば夢は夢として消えてくれる。
久しぶりに恐怖せずに済んだ。
次の日の朝ごはんも、半分くらいは食べられた。

「また残してる~。」

と西島さんには言われるが、おれ的には、ここの入院食は量が多すぎるのだ。
成人男性は毎食こんなに食べるものなのか?
比較対象が大食いの理人なので参考にならない。理人だったらここのご飯だけじゃ足りず下の売店でおむすびとかも買って食べるだろうな。なんて、ぼんやり考えていた。
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