しあわせのあしどり

伊澄(ism)

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63 最終話

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あの夏から2年が経った。
理人は無事大学生になった。心理学を学ぶそうだ。

「痕になっちゃったね。」

「ナイフで刺されたんだもん、痕くらい残るよ。」

理人の長くてごつい指が腹を撫でる。やめろ、変な気分になるだろ。
今俺たちはあの部屋を引っ越して少しだけ広い部屋を借り、同棲している。理人は学生なので一応ご両親に挨拶に行ったが、行く途中に緊張で3回電車を途中下車し、2回吐く、という不名誉な歴史を刻んだ。
会ってみればご両親もお姉さんも優しい人で、今では家族ぐるみで仲良くしてもらっている。
生まれて初めて家族ができたような気がしている。
特にお姉さんはおれのひとつ上で、ほんとうの弟のように気にかけてくれている。というか、割とパシリのように使われている面もある。
理人が年上の扱いがうまい理由が分かった気がした。

「そう言えば理人、今日バイト最後だったんだっけ?」

「うん。今日が最終日!」

「お疲れ様。」

「それでね、光太に渡したいものがあるんだ……。」

ガサガサ、とリュックを漁り始める。
なんだろう。今月分の家賃は食費もまとめて既に預かってるし。

「これ、受け取ってください。嫌だったら付けなくてもいいからさ、持っていてくれるだけでも……いいから。」

「これ、おれの?」

「うん。」

「あけていいの?」

「うん。」

なんだか既視感。
このバングル貰った時と同じだ。
左手首につけている理人から貰ったバングルに手をやる。革が日に焼けたり擦れたりして、色が変わっている。

「あけるぞ?」

「いいよ。」

包み紙を丁寧に剥がしていくと革張りの立派な箱が入っていた。
ゆっくり蓋を開けると中には……。

「これって……。」

「あの、今更かとも思ったんだけど、……カラー。」

「……。」

「本当は高校卒業してすぐ渡したかったんだけれど、自分の稼いだ金でって思ったらやっぱり遅くなっちゃった。」

「あ、ありがと……。」

「……あ、やっぱりつけるの抵抗ある?」

「ちがう……!うれ、しくて……!」

首につけようとしたら理人が後ろから手伝ってくれた。

「似合うかな?」

黒い革でできた細身のチョーカーのようなカラー。上品でおれに似合うか分からなかった。
理人が急に抱きついてきた。

「わっ、なに?だめだった、かな……?」

「すごい!すごい似合ってる!!」

「……ほんと?」

「うん!俺のパートナーだって、すごい感じた。一生大切にする。」

一生、そんな言葉が自分に向けられる日が来るなんて思ってもみなかった。

「おれも、一生大切にする……。」

一言一言噛み締めるように言葉を紡いだ。
今日から始まる日々を大切に紡いでいこう。
理人とふたりで紡いでいこう。




おわり
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感想 1

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みんなの感想(1件)

あーる。(Kaname)

コメント失礼します( _ _)
すっごく満足感のあるお話で一気読みしましたっ!とっても大好きなお話です!もっと早く出会いたかった~♪ これからの休日のお供になりそうです・・・( ^ Ⴗ ^ ) そしてとにかく幸せになれてよかったです泣 理人がデレデレに愛してくれてて安心です…ラストのカラーを渡されたところなんか…私の涙腺崩壊しました(TT)
こんな素敵で満足感のあるお話、1周じゃ足りないので読み返してきますっ!

2022.08.04 伊澄(ism)

あーる。さんへ

コメントありがとうございます。
初めてのお話でこんな素敵なコメント頂けて、感激しております。
楽しんでいただけて何よりです!
ありがとうございます!!!(*´ ꒳ `*)

解除

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