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学園編 シャルロット13歳でも大人

信じてくれなくても……。

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マリウス、シャルロット、クラウス、エリオットの四人を乗せた馬車はアマルティス公爵家へ向けて真っ直ぐ走っていた。


「シャーリー入学式はどうだったかい?変な奴もいたが、学園で新しい友達が早速出来て良かったね」

マリウスはいつもの様に自身の膝にシャルロットを乗せて、彼女に穏やかに話しかけた。
いい子いい子と頭なでなでも忘れない。

「ええ、びっくりする事がいっぱいでしたけれどメアリーとお友達になれたのでとっても素敵な入学式になりましたわ」

シャルロットはにっこりと嬉しそうに満面の笑みで応えた。
その微笑みを見たマリウス達もひと安心して自然と微笑みがもれていた。
するとシャルロットが急にもじもじとしだす。

「あの……マリ様」

「ん?何だい?シャーリー」

膝の上でもじもじするシャルロットに、まだほっこりとした気持ちで微笑みを浮かべているマリウスは油断していた。

「えっと……入学式の最中に見てしまったのですけれど、前列の席の女性の方達は皆んな……や、やらしい下着を、ま股を開いて見せていたのです。……メアリーも。中にはその……下着をつけるのを忘れたのか……わざとなのか……う、上や下がその……す全て見えていらっしゃる方達も……」


ピキーンと馬車内の空気が固まった。

「……」
「……」
「……」

シャルロットによって突然投下された爆弾に、油断していたマリウス達は衝撃をもろにくらい大ダメージを受けていた。
勿論マリウス達のそんな様子に気付く事無くシャルロットは話しを続ける。


「皆さん見られる事に何とも思っていないのか、笑顔で自ら見せている様子でした。メアリーも見られると興奮するからって……。前列には先輩方が多かったみたいなので、これはいつもの事なのでしょうか?私が知らないだけでこれは普通の事なのですか?マリ様もお兄様達も何時もああいった、女生徒のえっちな姿をたくさん見ているのですか?」

「……ええっとねシャーリー、それは…………エリオットお前答えろ」

「はぁ?!卑怯だぞマリウス!僕だってヤダよ!見ろよシャーリーのあの否定を願うキラキラした目!兄さん、頼んだ!」

「ふざけるなっ、俺も無理だ。お前はいつも確信犯だろっエリオット!そもそも元はと言えばシャーリーは殿下に話しかけてたじゃないですか、責任を持って殿下が答えてあげて下さい」

「はぁっ!?何だ責任って!お前こそ長男だろっ?!兄としての責任はどうした!」

「あのマリ様?教えてください」
キラキラした目でシャルロットに死刑宣告を受けたのは最終的にマリウスだった。

「ゔっ……!……わ、分かったよシャーリー」

不幸にも回り回って自らに戻ってきた要らぬ解答権にマリウスは動揺を押し流す様にごくりと唾を飲んだ。何故こんなにマリウス達がシャルロットへの解答をなすりつけ合うのか、勿論それは質問の答えが是であるからだ。

エリオットと違いマリウスとクラウスは見たくて見ている訳では無いが、事実目に映り見ているのは変わらない。そして、この学園の女生徒の大半が淫乱で、あちこちでエロパンツやらま〇こやらエロブラやらおっぱいやらを出しまくっているのも事実であり、それはシャルロットの想像以上だ。しかもそこら辺で隠れてにゃんにゃんいたしている者も珍しく無い。
この淫乱推奨ご時世の学園で風紀云々など無いし、笑い飛ばされてしまう。

シャルロットを傷付けずショックを与えず如何に上手く説明するかで頭を悩ますマリウスだったが、どの道学園に通い始めれば嫌でも分かるのだ。変に誤魔化さない方が後々シャルロットの為だとマリウスは覚悟を決めた。



「シャーリーの言う通りだよ。」

「えっ……」

マリウスの肯定にシャルロットの顔は明らかに曇り愛くるしいエメラルドの瞳にみるみる涙が溜まっていく。女生徒のいやらしい姿をいつも見ていると認めたのだから。

「ゔっ……シャーリー泣かないで」

シャルロットの溢れる涙に怯みながら、何故か浮気がバレて白状した男の気持ちになったマリウスだった。


「おいっマリウス!もう少し言い方があるだろっ!何シャーリー泣かせてんだ!」

「殿下!俺の可愛いシャーリーを傷つけましたね?!」

解答から逃げたエリオットとクラウスの勝手ないい草にマリウスは……

カッチーン。

極悪非道の大魔王が降臨した。

「オイ、テメェら。城のてっぺんから逆さにして吊るすゾ?ゴラァ。死ヌか?死ニタイのか?アぁ?」
大魔王にギロッ!と肝が縮む様なひと睨みをされ、ヒュウ~と凍えるような冷気が二人を駆け抜けた。

「あ~まぁ、言い方はお前に任せるよマリウス」

「事実ですしね、シャーリーの事は殿下にお任せします」

「……ふんっ!」


マリウスは自分の膝の上でぽろぽろと涙をこぼすシャルロットを優しく抱き締めると、美しい瞳から溢れる水滴を舌や唇で舐めたり吸い取ったりしてく。

「ふぇ……マリ様、泣いてごめんなさい……ひっく……私だってルシアスさまにあんな事されて、感じてしまったのに……やきもちなんて、っく……泣く資格なんて……無いのに……っく」

「シャーリー、あの時も言ったけれどそれは違うよ。シャーリーを敏感にしたのは僕達だから、シャーリーが直ぐに感じてしまうのは仕方がない事何だよ。だからシャーリーは悪く無いよ。それにあんなところを弄られたらその気が無くても大抵の女性は感じて濡れてくるもんなんだよ。よっぽど生理的に受け付けない奴か下手くそでなければね。だから別に感じても当然な事なんだよ」

ちゅっちゅっ……ぺろっぺろっ……。
マリウスは話しをしながらもシャルロットの眦、頬、唇、顎、額、眉間、こめかみ、と顔中を舐めて口付けていく。

「……大抵の女性って……ゔっ……ふぇっマリ様はそんなに女性経験がお有りなのですか~っひぃう~」
ぽろぽろぽろっとまた大粒の涙がシャルロットのエメラルドの瞳から溢れだした。

「えっ!?いやっ!そっそういう訳じゃ無いよ、一般論だよっシャーリー?僕はシャーリーしか愛して無いからね!ちゅっ」

焦るマリウスは新しく溢れてくるシャルロットのきらきら水(涙)をひたすら舐めとる。

「ぐずっ……本当ですか?」

「ああ、本当だよ。僕はシャーリーがいれば世の中の女なんて絶滅しても良いんだから。チュッ」

「ひっく……マリさま…」

「こほんっ!殿下、ただでさえ女性が少数で少子化な世の中何ですから、王太子自ら不吉な事を言わないでください」

向かいの座席で二人を見守っていたクラウスだったが思わず注意してしまう。

「煩いな例えだよっ!ウソでも無いが……。いちいち口を挟むなっ少し静かにしてくれ」

鬱陶しい、とクラウスにシッシッと手をふるマリウス。

「今嘘じゃないって言いましたね?まったく次期国王となる人なのに……」
ブツブツと言いながらもとりあえず引いたクラウスだった。


「シャーリー落ち着いた?ちゅっ」

「はい……ごめんなさい心配かけてしまって」

しゅんっ……。と俯くシャルロットをマリウスは更にぎゅっと抱き締める。シャルロットの涙はいつの間にか止まっていたが、今も顔中にチュッチュとキス の雨を降らしているのはマリウスのただの欲求だ。

「ちゅっ。あのねシャーリー聞いて。今の世の中が女性が少ないのは知ってるよね?クラウスがさっき言ってた様に、段々と少子化になって来てるんだ」

「はい、それは知っています。王妃教育の授業で習いましたから」

「うん。今世の中は沢山の男とえっちな事する女性のが素晴らしいとされてる風潮があるのも知っているよね?」

「はい……私には難しい事ですけど……」


「シャーリーはそれで良いんだよ。それはね、政府が策をこうじたからなんだ……誰が考えたのか阿呆みたいな政策を打ち立ててね。男があぶれるから一妻多夫は解るんだが、女性が沢山子供を産むために沢山の男と沢山えっちさせよう!勿論大切な女性に無理は強いれないからその為には女性にえっちが大好きになって貰おう!……と安易な考えのもと、学園に性教育までガッツリ実技入で導入されたんだ。
でね、まぁ……喜ぶ男性達と色んなえっちな授業を受けて育つ女生徒達は政府の狙い通りやっぱりちょっと……いや、だいぶえっち好きになっていってね、世間の後押しも手伝い世の中のいんら……ごほん!えっちな子バンザイ的な風潮もいっきに強まっていったんだ。」

「そうだったんですね………王太子の婚約者なのに私何も知りませんでした。」

しゅん……と悲しげな顔になるシャルロットの唇にマリウスは、元気出して。という様にちゅぅぅっと吸い付くように口付けた。最後に短く一つキスして。
  

「ちゅっ。で、貴族の子供達がガッツリ性教育をするうちの学園は、貴族学園ならではの緩さや、国の政策に忠実な所、加えてお膳立てする様に完璧に整った設備。それらが揃ってなのか、他所の学園や世間一般よりもだいぶえっちな女子が多いんだ。特にここ最近増えているんだよ。えっちな女性や同意の上での性行為を国が推奨してるのもあって、女性徒達は増大した性的欲求をどうどうとオープンにしてるという訳何だ。だからうちの学園の女生徒はほぼ大半がああいった子達で締められているんだ。…………さっきシャーリーが言った事は全て当たっているんだよ。あんな格好の女生徒はいつもその辺に大勢居て、特に珍しい事でも何でもなくて、この学園の日常、普通の事なんだよ。……それでねシャーリー、いい訳する訳じゃないけれど、僕達は確かに毎日見てはいるけど、どこを向いてもあんな格好ばかりだから嫌でも視界に入る羽目になるだけで、好きで見てる訳じゃないからね?エリオットは別だけど。それだけは名誉にかけて言わせて。信じてくれなくても仕方ないけれど」


そう言って、マリウスは悲しげに苦笑いした。
そんなマリウスを下から見つめるシャルロットはマリウスの頬に手を伸ばして優しく撫でると、彼の整った薄い唇に自分のぷるんと艷めく赤い唇をそっと静かに合わせた。


「もちろん信じますわ。だってマリ様がそうおっしゃるんですもの疑う筈がありませんわ」


ふふふっ、とシャルロットは無垢で可愛い微笑みをマリウスに向けた。マリウスの言う事や、やる事は全て正しく嘘などつく筈が無いと純粋に信じているシャルロットは、マリウスに昔から絶大な信頼を寄せているのだ。

「シャーリー……本当に君は可愛い過ぎるよ。僕をどれだけ夢中にさせれば気がすむんだ……」

「??」

今度はまたマリウスが、シャルロットの艷めく唇にちゅっちゅっとゆっくりと軽いキスの雨を降らしていく。

「愛してるよシャーリー」

「ふふ、私もですわマリ様」


ちゅっ……ちゅっ……ちゅっ……

結果、正面でイチャイチャを見る羽目になったクラウスとエリオットだが、多少のやきもちは焼いても昔からのいつもの事なので今更の事である。
それよりも二人は広い王家の馬車をいい事にマリウスとシャルロットに聞こえ無いようヒソヒソと話しだす。

「兄さん見た?あいつなんて奴だ!またうちの純粋なシャーリーを騙しやがって。確かにマリウスはシャーリー以外は眼中に無い変態で好きで見て無いのは嘘では無いけど、何が『信じてくれなくても仕方ないけれど……』だ!しゅんと悲しげに笑って気持ち悪い小芝居しやがって!あの悪魔が!」

「あれはかなりの確信犯だな。あんな顔して見せたら優しいシャーリーが許さない筈ないし、何よりシャーリーが自分を信頼してる事を良く分かった上でのあのセリフと演技……結局シャーリーの好感度をさらにあげて狙い通りイチャイチャに持ち込むとは。さすが我が国を代表する腹真っ黒王太子だな……」

「しかも僕だけえっちな姿をわざと見てるとかいいやがって!」

「見てるだろ。採点までして。見ないのは男じゃないんだろ?なぁ、エリオット」

「…………兄さんもけっこう腹黒くてねちこいよ」




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いや~1ページが長くなり過ぎました(^_^;)

なかなか切るところが見つからず(笑)






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