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第一章 過去から現在へ向かって ~十年前より三年前
4 Sideエヴァ
しおりを挟む翌朝洗い場で少し埃の付いた洗濯用の桶とやはり埃のついている洗濯板が幾つか見つかった。
私達は仲良く全身泡だらけになりながらも、ベッドのシーツや汚れたドレスに下着類を慣れない動作で洗う。
今まで経験した事のないばかりだけれども不思議と私は辛いという感情よりも、いつの間にかそれらを楽しんでいた。
王族として色んな勉強はしてきたのだけれどもそれは講師が行う座学であり、こんな風に身体を動かし覚える事の方が何倍も楽しいものだなんて思いもしなかったの。
そうしてこの国へ来てから一ヶ月が経過した頃には掃除や洗濯にも慣れ、奥の庭には小さいながらも菜園が出来上がっていた。
流石にライアーンより持ってきた焼き菓子は当になくなってしまったわね。
それでも持参していた少しのお金を使い時々アナベルが街へと買い物に行き、パンを購入してくれた事もあり私達は何とか生き延びていた。
とは言えお金は無尽蔵にある訳ではない。
貯えがある間に何か別の方法を考えなければいけないのだ。
でもそんな方法と言っても何がある?
それにもしかしなくとも陛下はこの離宮で私達が何も出来ず静かに息絶えるのを待っていらっしゃるのかもしれない……という不安は拭えない。
所詮私達は敗戦国の人質に過ぎない。
『坊主憎けりゃ袈裟まで……』という東方の諺がある様にだ。
きっと陛下やこの国の人間にしてみれば子供だとは言え私はライアーンの第一王女。
完全に憎しみの対象でしかないのでしょうね。
シャロンとルガートの関係を鑑みて相手を憎むという気持ちを理解は出来ても、だからと言ってあっさり『はいわかりました』と言って大人しく死を待つのは私らしくない。
実際に戦ってはいないにせよ、ただの後方支援を行っていた事実がある限り敗戦国だから責任は感じるわよ。
でもだからと言って大人しく死を待つのは嫌!!
何を言われようとも必ず生きる事をもう諦めたりはしない!!
しかし生きる為にはどうすれば……。
自問自答していれば買い物から帰って来たアナベルより突然決意表明をしたわ。
「エヴァ様、私明日より街で働く事にしましたわ」
思わず持っていた袋を私は落とし掛けてしまった。
危なかったわ。
そう私の中では一度として考えもしなかった事。
外で働くだなんて……。
アナベルは懐事情が寂しくなってきていたのをきっと私よりも理解していたのね。
だからこそ自分達がこの先も確実に生き抜く事が出来るよう街で働くという選択をした。
また驚いた事に働き口はもう見つけてあるというから本当に凄い。
勤め先も怪しげな場所ではなく、怪しげな……と言う表現が今一私には理解できない。
偶然街で買い物をしていたアナベルと知り合ったと言う女性が経営する食堂らしい。
勿論その時に私も働――――と言葉を発しかけたわよ。
でもそれはアナベルの一声で即却下となってしまった。
「一応エヴァ様はこの国の王妃陛下に御座います。それにまだエヴァ様は8歳という年齢ですので何処も雇ってはくれないでしょう。幾らエヴァ様が素晴らしく聡明でいらしても世の中には無理な事は無理なのです」
はぁ……そこは15歳のアナベルに言われてしまったら、それも年齢に関してならば尚の事何も言い返せない。
それに理由はそれだけではないのだから……。
そうして翌日よりアナベルは隠し通路を通って毎日食堂へ働き始めた。
離宮に残された私は一人という事もあり寂しい気持ちはあったけれど、その寂しさを紛らわせる様に部屋の掃除やお洗濯に菜園の手入れ等と出来る事から始めていく。
それから半年も経てば少しずつだが料理もそこそこ出来る様になって言ったのは言うまでもない。
当然料理とは言え王宮で出された様な料理ではなくごく簡単なものだけどね。
その簡単な料理でさえもアナベルが毎日美味しいと言ってくれる事にささやかな幸せを感じていた。
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