【第一部完結】忘れられた王妃様は真実の愛?いいえ幸せを探すのです

Hinaki

文字の大きさ
10 / 122
第一章  過去から現在へ向かって ~十年前より三年前

5  閑話エヴァとアナベル Sideアナベル

しおりを挟む


 私はアナベル・ルチアナ・ベイントン。
 ライアーン王国の伯爵家の二女として生を受けた者です。

 私は四人兄妹の末っ子で父や兄達に溺愛……いえ、体の良いと申しましょうか。
 幼き頃より剣や体術等の武芸をがっつりと教え込まれておりました。
 数年前とある理由により突然平民出身の母より『』と口癖と共に何故か家事全般、えぇ当然貴族家の家事ではなくそこは平民仕様で叩き込まれました。

 そんな私が初めて王宮へ伺候致した日に我が国の至宝であられる第一王女エヴァンジェリン・シャーリーン・フィオナ・オブライアン殿下と対面させて頂きましたのは、私が12歳になった時で御座います。

 当時エヴァ様はまだ5歳で大変お美しくもお可愛らしい、またご年齢に比べとても聡明な姫君でした。
 このまま国王ご夫妻に王子がお生まれにならなければエヴァ様が次期女王となられるのです。

 正式に立太子こそされてはおられませんが物心のつく頃より将来の女王陛下としての自覚も然る事ながら毎日御勉学に明け暮れ、口数も少なく不躾ながら第一印象は綺麗なお人形の様な姫君。

 とても凛としたお美しさの中にあどけなさを秘めた美少女でいらしたのは間違いありません。
 しかしなんと申しましょうか、あの頃のエヴァ様はその天使の様なお姿と内に秘められたお心が微妙にアンバランスだったのです。

 そんな印象を抱いた私へ父は簡単に説明をしてくれました。
 エヴァ様はとある事が切っ掛けでそれ以降お心を閉ざされているのだと。
 お人形ビスクドールな一面を理解すると同時にお労しい事だと心が痛みました。
 ただその辺り詳しい事情はまだ教えて貰えず、でもそれを踏まえた上でエヴァ様の護衛兼お話し相手コンパニオンとしての任を頂きました。

 勿論即答でお受けいたしましたわよ。
 愛らしい姫君のお傍に侍……いえ、断じて邪な思いは抱いておりません。
 とは言えただの伯爵令嬢コンパニオンではいざと言う時に動けない不便さを感じましたので、父に願い出てとしてお傍に上がる事となったのです。

 えぇ、当然ですがそうする事でこの私が何時如何なる時でもエヴァ様の御身をお護りする事出来るというものなのですよ。


 そうしてエヴァ様にお仕えする様になって三年経った頃でしょうか。
 突如隣国シャロンよりの要請?
 いえ、あれは完全に脅迫と言っていいでしょう。
 我が国へ勝手に潜ませている間者を使い生まれて間もないエヴァ様のお命を幾度となく狙っていた癖にです。
 要求を呑まなければ遊びでなく今度こそ本気でエヴァ様を狙うと言ってのけるのがシャロンなのです。
 実際私も何人かは捕縛しましたがアレが本気でないなんて!!

 確かにあの国が申す通り陛下が首を縦にお振りになられるまで、今迄のが単なる遊びだとでもいう様にエヴァ様は執拗にお命を狙われ、その事でお心が疲弊されてゆかれるエヴァ様を思い到頭とうとう陛下は後方支援ならば……という条件で承諾されました。

 それを聞いたエヴァ様は何度も撤回する様にと父王陛下をおいさめになられておられましたが、結果的には願いは叶わず、建国以来初めて戦に加担する事となったのです。

 陛下が正式に決断されたのをお聞きになり酷く落胆されたエヴァ様は子供の様に、いえ実際に8歳のお子様なのです。
 ですがご自分に力がなかった事に対し悔しかったのでしょうね。
 ご自分の所為で建国以降一度たりとも戦う事のなかった国が後方支援んとは言え参加する事に対し泣かれました。
 いえ、正確には声を上げて泣きたかったのでしょう。
 ですがあの頃のエヴァ様には感情がほぼなくされていた故に、涙を流す事も出来ず顔を微妙に歪めていらしたのが精一杯でした。


 ただその御姿はご両親へ一切お見せする事はなく、私にだけお見せ下さいましたが本当にお心が自由に表現出来ない辛さと悔しさはこちらが悲しくなるくらい十分に伝わりました。
 両陛下がお辛い立場にあるからと言えまだ8歳のお子様なのに甘える事もなく、唯一私の前で父王陛下を止められなくて『』と言っておられたのです。

 幼いのに護られるのが当然なのに、エヴァ様は幼いながらもその御心は既に次期女王陛下でした。

 優しくそして気高いお心を持ったエヴァ様に私はお仕えする事が出来て本当に幸せだと心より思っています。
 ですが最近は少々そのお育て方を間違えた感が否めないのも事実です。
 こうしてルガードで暮らす様になりエヴァ様は初めてご自分が育てた野菜を収穫出来た時、私に向けて少しはにかんだ笑みを浮かべて話されたのを今も決して忘れる事等出来ません。


「ねぇアナベル、自ら手を掛け育てればちゃんと収穫出来るって凄く幸せな事なのね。私……生まれてきて良かったわ。アナベルと一緒でなければこうして生きているって気持ちを持つ事が出来なかったからかもしれないもの」
「エヴァ様……」

 あぁ漸くです。
 私のエヴァ様はお人形より人間へとお戻りになられた瞬間でした。
 でもそれはまだ最初のほんの小さな一歩であり、エヴァ様の病を無事に克服されるまでにはまだまだ時間を要しましたがそれでも私にとっては至上の喜びなのです。

 ですのでエヴァ様のお元気なお姿を見られるその日まで私は今以上に頑張りますわ。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

仕事で疲れて会えないと、恋人に距離を置かれましたが、彼の上司に溺愛されているので幸せです!

ぽんちゃん
恋愛
 ――仕事で疲れて会えない。  十年付き合ってきた恋人を支えてきたけど、いつも後回しにされる日々。  記念日すら仕事を優先する彼に、十分だけでいいから会いたいとお願いすると、『距離を置こう』と言われてしまう。  そして、思い出の高級レストランで、予約した席に座る恋人が、他の女性と食事をしているところを目撃してしまい――!?

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

処理中です...