エルネスティーネ ~時空を超える乙女

Hinaki

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第一章

17  夢の中

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 その夜私は夢を見た。

 『さようなら、どうぞお幸せに……』

 その言葉を最期に私はふわりとした浮遊感を身体に感じた刹那――――地面へと、凄まじいスピードで地上に向かって一人堕ちていく。

 叶うならば最期の死顔までも笑顔で、ジーク様の瞳に映る最後の私は笑顔でありたいと思っていた。

 何故なら初めて好きになった御方なのだもの。
 だからこそ私の嫌な部分は少しも見せたくはない。

 えぇそう私はジークヴァルト様に笑顔の私だけを覚えておいて欲しいの。
 ジークヴァルト様の御心のほんの片隅でもいいのです。

 ジーク様、貴方を慕っていた娘がいたと言う事を……。



 えーっと夢これってよね?
 でも9歳のエルネスティーネの前に16歳の、あの日バルコニーよりダイブしたままの姿。
 そうウェディングドレスを纏うエルネスティーネが佇んでいた。
 

『私はエルネスティーネ。私は貴女と……の私。まだ本当の意味での恋を知らない、そしてジーク様の為だけに立派な淑女足らんとしていた私は貴女でもあるのですよ』


 あぁ確かに……そう言われればすとんと納得出来た。
 あの頃の私の全てはジーク様一色だったもの。
 誕生祝いで陛下より引き合わされ、私の婚約者となられるジークヴァルト様を見た瞬間私は恋に堕ちた?

 いやその前に幾ら王命とは言えよ。
 7歳も年上の、成人を迎えたばかりのジーク様の相手がたった9歳の小娘ならぬ
 またその時に感じたのは自分自身が余りにも子供だと言う現実?


 ――――と!!

 素敵なジークヴァルト様の隣に並ぶのは誰よりも素敵な淑女でなければダメなのだと……ね。


『えぇだから貴女でもある私は血の滲み出る様な努力を積み重ねたのですもの。礼儀作法は勿論、ダンスにピアノそうして細かな所作から淑女らしい言葉遣い。悍ましい過去を綺麗にラッピングをした上厳重に心の奥へと封じ込めればジークの好みや趣味を……ジークの見ている景色を知りたいと思っておりましたのにね。ふふ本当に愚かね』

 え、エルネスティーネ……?

『エルネスティ-ネ貴女はまだ。そう気づく筈はない』

 な、何を……。

『ふふそうして何時までも幼い子供のままでいなさいな』

 子供のままだなんて……。

『ただこれだけは忘れないで。何処へ逃げても何も変わりはしない。ジークの心には……アーデルが⁉』


『エルネスティーネぇぇぇぇええええええええええ!!』


『ふふ何処までも……邪魔をするのね』
 
 ジークヴァルト様のものだと何故かわかってしまった。
 悲痛で悲し気な声で私の名を叫ぶ……えっ⁉

 
 急速に地上へと堕ちていく私の傍にもう16歳のエルネスティーネはいない。
 でも私の身体が何か、そう何か優しくも温かなもので包まれていくと同時に私の心が急速に熱を帯び……。


『死ぬなああああああああああああ!!』


 今までの急速に堕ちていくスピードがなくなればだ。
 ふわりと雲の上にいる錯覚を感じると共に眩い光が私を、私の対面には涙を必死に堪え顔を醜く歪ませた16歳のエルネスティーネがいた。

『狡い、狡くて酷いよジーク。何時も貴方は真実の私を―――……』

 あれ、何も聞こえないよエルネスティーネ。
 見る間に霞んでいく16歳のエルネスティーネへ感じる微かな違和感。
 もしかして失恋のショックで頭のネジが何本か飛んで行きましたか⁇

 でも消えていく彼女は必死に何かを私へ伝えようとはしてくれているのだけれど、生憎ながら私には何もわからない。
 
 そうこれは夢。
 現実ではない。
 果たして今が現実なのかも定かではないのだけれど……。


 だたわかるのは私は徐々に眩い光に包まれていく。
 それと同時に地上より微かに見えていた一面に広がり咲き乱れていたのは禍々しい青い花。
 今まで一度たりとも見た事のない花。
 青いのに何故か鮮烈且つ赤黒さを連想させる様な花とその色に一瞬の恐怖を覚えはするも、それよりも何よりも私を包み込む光によって恐怖は一瞬で霧散する。


 あれは一体何だったのだろう。
 単なる夢それとも――――。
 

 何はともあれ私はもう直ぐ夢から覚めるだろう。
 そう新しい日常へと向かって……。
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