27 / 34
第二章
6 デジャブ?
しおりを挟む「エルネスティ-ネ嬢これは愛らしい貴女へのプレゼントだよ」
目の前に差し出されたのは大きな熊のぬいぐるみ。
「ご、御機嫌よう……ですわ⁉ じ、しゅ、シュターデン公爵様⁉」
何故かジーク様をお見受けするのに抵抗を感じてしまう。
そんな私の戸惑いなんて関係ないとでもいう様にジーク様はとてもご機嫌が良いみたい。
「そこは是が非ともシュターデン公爵ではなくジークと呼んで頂けると嬉しいな」
真っ白な歯と笑顔が眩しいからの……。
「じ、じーくさまぁあ?」
どきどきどきどき。
うぅ、ジーク様の期待を込めた熱い眼差しと衝撃的な言葉によって私は動揺しっぱなしだ。
私の心臓は物凄く煩くて、挨拶の時につい頂いてしまった大きな熊の、とてもふわふわモコモコとして極上の触り心地の良いぬいぐるみへ掴まる形でしっかりと抱き締めてしまった。
そんな何とも頂けない子供な私の様子にジーク様の笑顔。
ジーク様程のイケメンともなれば笑顔一つで国を一つ滅ぼしかねないですわっっ。
本当にどうなっているのかしら。
こんなにも素敵に微笑まれられるジーク様のお姿を近くで見るのは初めてだわ。
その所為なのかしら。
胸が先程よりどきどきとしてしまうのは……。
でも何故か切ない気持ちにもなるのはどうして?
私は頂いた熊のぬいぐるみをぎゅっと強く抱き締める。
ねぇどうしてこんな風に私へ気を遣って下さるの。
エルネスティーネは本当に何もわからないのです。
何故こんなにもお優しいのに16歳のエルネスティーネは貴方の前で死を選んでしまったの。
今の私は16歳ではなく9歳で、貴方と出逢うほんの少し前に目覚めたの。
覚えているのは家族の事。
とは言えそれまでの過去の記憶も正直に言えば酷く朧気で、ましてやジーク様と婚約をした以降の記憶はあの最後の時のものしかないのです。
ううんそれだけではない。
はっきりとは覚えてはいないの。
ただ遠い記憶の中で微かに覚えているのはジーク様の物憂げだけれども酷く優しい眼差しと、本当は私ではなくジーク様が泣いていらっしゃるのかと思うくらい悲しい表情。
悲しいお顔の理由なんてわからないわ。
何故ジーク様が悲しいのかさえも今の私にはわからない。
で、でも抑々ジーク様にはアーデルトラウト様と言う恋人がいらっしゃる筈なのに、どうして婚約も交わしていないただの友人の妹でしかないモブの私へ会いに来られたの?
確かに私達は全くの他人ではなく親戚関係と言えばそうなのよね。
とは言え私へ会いに来られただけでも驚きものなのに、一体どうしてなのかしら。
こんなに可愛い熊の、前からずっと欲しいと思っていたものが形となって表れたのですもの。
でも不思議ね。
こんな感じのぬいぐるみを私は以前誰かからプレゼントをされた様な気はするのだけれど……。
私は熊のぬいぐるみを抱き締めたまま心の奥にある違和感について考える。
「エル僕の大切な天使はどうしたのかな?」
「アルお兄……様?」
気づけば……って何時も私の傍には誰かがいる。
例えば今はアルお兄様。
「我が家のお姫様。何時までもエントランスにいては身体を冷やしてしまうよ。さぁ暖かいサンルームでお茶でもしようか。それから余りお勧めはしないけれどジークも良かったら一緒にお茶にしよう。まぁはっきり言って積極的に勧めはしないよ。何しろ僕にはこの可愛過ぎる天使の相手をしなければいけないからね。最初に言っておくが野郎の機嫌取りをする心算もされる心算もないからね」
「お、お兄様ってばそんな!?」
「いいの。エルは気にしなくていいからね」
そう言って私をひょいっと軽く抱き上げればお兄様はすたすたとサンルームへと歩いていく。
その後ろからテアとジーク様もついてくる。
縦抱きにされている故に否が応にもテアは兎も角ジーク様とはがっちりと視線が合う訳で、何ともこれば居た堪れない。
ジーク様の優しい眼差しより視線を逸らせようとアルお兄様の胸の中に顔を埋めればよ。
「僕の天使は何時までも甘えん坊だね。まぁそこが可愛い所だけれど」
それ絶対に違うからあああああああああ!!
斜め上な発言と物凄くご機嫌な様子のお兄様。
私は何時までも甘えん坊ではありません!!
そこは違うのだとはっきり訂正をしたい。
でも訂正すればする程訳の分からないゾーンの中へと入っていく可能性が無きにしも非ずなのよね。
結局アルお兄様の妹大好きシスコン街道まっしぐらは留まる事はない。
これで七年後にテアと婚約間近だったと言う事実が今でも信じられない。
ねぇテア、こんなドシスコンなお兄様の何処に惚れる要素があったの?
何時か、そう何時の日かその心の変化を是非聞かせてね。
私の幸せな人生設計を立てるお手本にするから……。
だけど出来れば森の中でカフェのお姉さんか若しくは薬剤師になりたいかな。
あ、その前にお料理と勉強もしなきゃだわ。
1
あなたにおすすめの小説
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
辺境伯夫人は領地を紡ぐ
やまだごんた
恋愛
王命によりヴァルデン辺境伯に嫁ぐことになった、前ベルンシュタイン公爵令嬢のマルグリット。
しかし、彼女を待っていたのは60年にも及ぶ戦争で荒廃し、冬を越す薪すら足りない現実だった。
物資も人手も足りない中、マルグリットは領地の立て直しに乗り出す。
戦しか知らなかったと自省する夫と向き合いながら、少しずつ築かれていく夫婦の距離。
これは、1人の女性が領地を紡ぎ、夫と共に未来を作る「内政×溺愛」の物語です。
全50話の予定です
※表紙はイメージです
※アルファポリス先行公開(なろうにも転載予定です)
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
さようなら、私の初恋
しょくぱん
恋愛
「さよなら、私の初恋。……もう、全部お返しします」
物心ついた時から、彼だけが世界のすべてだった。 幼馴染の騎士団長・レオンに捧げた、十数年の純粋な初恋。 彼が「無敵」でいられたのは、アリアが無自覚に与え続けた『治癒の加護』があったから。
だが婚約直前、アリアは知ってしまう。 彼にとって自分は、仲間内で競い合う「賭けの対象」でしかなかったことを。
「あんな女、落とすまでのゲームだよ」
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
欠席魔の公爵令嬢、冤罪断罪も欠席す 〜メイリーン戦記〜
水戸直樹
ファンタジー
王太子との婚約――それは、彼に恋したからでも、権力のためでもなかった。
魔王乱立の時代。
王も公爵も外征に出ている王都で、公爵令嬢メイリーンは“地味な婚約者”として王城に現れる。
だが、王太子は初顔合わせに現れなかった。
にもかかわらず、記録に残ったのは「公爵令嬢の欠席」。
抗議はしない。
訂正もしない。
ただ一つ、欠席という事実だけを積み上げていく。
――それが、誰にとっての不合格なのか。
まだ、誰も気づいていない。
欠席から始まる、静かなるファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる