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第二章 五日後に何かが起こる?
【14】
しおりを挟む「こ、これは奥方様何故この様な部屋へ⁉ ま、まさか私に何か用がありましたのであれば他の者へ命じ……いいえっ、このシンディー音速級の速さで以って奥方様の御許へ馳せ参じましたのに!!」
ほんの一分前の事だった。
ヴィヴィアンが単身で訪れ部屋の扉をノックをすればである。
そこにはもう不承不承と言った、それは決してヴィヴィアンには見せる事のない不満たらたらの、ぶすっと不貞腐れたお世辞にも可愛いとは言えない表情のままで応対をしようとしていたシンディーだったのだがそれこそ音速?
そこは敬愛、最早崇拝しきっているだろうヴィヴィアンの姿を確認した刹那、見えない大きな尻尾をこれ以上ないくらいぶんぶんと振り捲りつつシンディーは瞬殺級の速さで以って常のキリっと引き締まった表情と、然もこうして態々訪ねてきてくれたのは当然自分の為だと彼女は完全に信じてそれを疑わなかったのである。
ヴィヴィアンとシンディーが知り合ってもう十年にはなるだろう。
また主従の関係となって四年と少し。
ジェーンとメアリーもだが今この客間で強制的に眠らされているだろうサブリーナへ、自分達の崇拝し敬愛してやまない主の夫を寝取った上のその夫との間に子供が出来ちゃった略奪疑惑女に、当の被害者であるヴィヴィアンが会いに来るとは1ミクロンの可能性もないと、だからここで一番ヴィヴィアンとの付き合いが長い自分へ当然会いに来てくれたのだとシンディーは固く信じていのだが……。
「サブリーナ嬢のお加減はどうかしら? 先日甘い物を好んでいらしたでしょう。今日は沢山作ったので良かったらお召し上がりになられるかしらと思って……ね」
小首をこてんと傾げ、ふんわりと何時もと変わらない和やかな笑みを湛えれば、持っていたバスケットをシンディー達へと見せるのだ。かごの中はどれもこれも見た目といい、可愛らしいお菓子達より放たれる独特の甘さだけではない。香ばしいバターや焼き上げられた小麦より芳醇に漂ってくる香りはたった数日でささくれ、荒み切った心を一瞬で癒されていく。
何時もながらヴィヴィアンの手より作り出される美味しいお菓子にシンディー達の心は何度そのまま天へ召されてしまうのかと思ったものなのだがなのに何故、どうしてっ、このお菓子達が自分達に――――いや決して貰えないからと言って単にいじけている訳ではないと、シンディーは98%心の中で叫んでいた!!
因みに残り2%はやはりお菓子を食べる事が出来ないのだと理解出来れば地味に落ち込んでいたらしい。
だけどっ、いやだからこそである!!
意を決した様にシンディーはヴィヴィアンへ思わず物申してしまった。
「お、奥方様がこの様にお心を砕く必要なんてありません。あの女は本来この屋敷内へ招いてはいけない者なのです!!」
「シンディー……」
「ま、万が一ですっ。もし万が、億が一に旦那様が真実あの者と情を交わしたとして、また胎の子が旦那様の血を受け継ぐ者であったとしてもです!! う、裏切られた奥方様が情けを掛ける等何処にもないでしょう。あの女は貴族令嬢としての矜持も何も御座いません。あるのは己の慾のみなのです。それにしてもだ、第一旦那様も旦那様です!! ヴィ……お、奥方様を、この様に素晴らしい奥方様を裏切るなんて、わ、私には到底許される事ではないと思っています!!」
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