23 / 42
23
しおりを挟む
「――――して話とは公爵」
最初に口を開いたのは俺だった。
何故なら時間は無限ではなく有限だからだ。
話の内容がキャシーならばきっと短くはない話だろうし……と思っていた。
「内容を察して頂き光栄ですよ殿下。陛下ならば先ずはあり得ませんからな。次代の国王の御代は期待が出来そうです」
何気なく父である国王を無能呼ばわりする公爵も公爵だが、それを咎めず静かに頷く俺も俺……だな。
「さて、話の内容を察して頂いたようなのでお互い腹を割ってお話致しましょう殿下」
「ああ」
そうして俺達は濃縮で短い密談を行ったのである。
その内容とは――――。
公爵自身キャシーを異性として見る事は出来ない。
ただし生まれが王女なのでそれなりに公爵夫人としては遇すると。
また一切お互いの私的な趣味や嗜好、愛人等についても干渉はしない。
その中に敷地内にある公爵の趣味目的で建てた別邸には一切立ち入らないし口も出してはいけない。
だがその代わり次代の公爵家となる者は公爵夫人であるキャシーの産んだ者とする事。
「し、しかし公爵はそのっっ」
これは同性であっても憚られる重大事――――。
「ご存じの通り私は成熟未成熟関係なく男としては不能なのです。ですから妻となるキャサリン王女の産みし子が次代の公爵となればよいと思っております。何と申しましても王女は王家の娘なのです。我が公爵家にまた新たなる王家の、いえ王族そのものより濃い血が入る事となるでしょうなぁ殿下」
「それはどういう……」
確かにキャシーは王女だ。
確かに王族の血が公爵家へ流れる――――までは理解が出来るのだが何故そこでより濃い血と強調されるのだろうか。
「ふふ、我が家には王家同様に影がおりましてな。ええ実に優秀な影なのです。特に貴方と王女の関係もよく理解しておりますよ」
「――――っっ⁉」
「まあまあその様に警戒されずともいいですよ。私には特段気にするものではないですしね。まあ妻となる王女が執着している相手が実の兄である貴方であり、貴方はご自身の愛する婚約者を護る為に妹君に身体の関係を強いられていると言う事実も今の私には全く以って関心はありません。何れ王女が生むだろう子は間違いなくこの世で最も王家の濃い血を受け継ぎし者。その事実だけで十分なのですよ」
「わ、俺は何があろうとキャシーとの間に子を儲ける心算はない!! わ、俺がこの俺が生んで欲しい女性は唯一エリザベス!! 彼女しか俺の子を産んで欲しくはない!!」
つい我を忘れて立ち上がれば声を大にして叫んでしまっていた。
常に冷静沈着であらねばならない王族として致命的な感情を吐き出してしまったがもう遅い。
そう一度吐き出したものは二度と回収出来はしないのだ。
「ふふ、殿下はまだお若い。しかしですよ殿下、貴方の性格ではあの狂女には恐らく打ち勝つ事は出来ないでしょう」
一瞬狂女とは誰の事なのかと俺は心の中でふと考えてみる。
すると公爵は声をあげて笑いながらその答えを教えてくれたのだ。
「狂女とは貴女の双子の妹君であられるキャサリン王女の事ですよ殿下」
最初に口を開いたのは俺だった。
何故なら時間は無限ではなく有限だからだ。
話の内容がキャシーならばきっと短くはない話だろうし……と思っていた。
「内容を察して頂き光栄ですよ殿下。陛下ならば先ずはあり得ませんからな。次代の国王の御代は期待が出来そうです」
何気なく父である国王を無能呼ばわりする公爵も公爵だが、それを咎めず静かに頷く俺も俺……だな。
「さて、話の内容を察して頂いたようなのでお互い腹を割ってお話致しましょう殿下」
「ああ」
そうして俺達は濃縮で短い密談を行ったのである。
その内容とは――――。
公爵自身キャシーを異性として見る事は出来ない。
ただし生まれが王女なのでそれなりに公爵夫人としては遇すると。
また一切お互いの私的な趣味や嗜好、愛人等についても干渉はしない。
その中に敷地内にある公爵の趣味目的で建てた別邸には一切立ち入らないし口も出してはいけない。
だがその代わり次代の公爵家となる者は公爵夫人であるキャシーの産んだ者とする事。
「し、しかし公爵はそのっっ」
これは同性であっても憚られる重大事――――。
「ご存じの通り私は成熟未成熟関係なく男としては不能なのです。ですから妻となるキャサリン王女の産みし子が次代の公爵となればよいと思っております。何と申しましても王女は王家の娘なのです。我が公爵家にまた新たなる王家の、いえ王族そのものより濃い血が入る事となるでしょうなぁ殿下」
「それはどういう……」
確かにキャシーは王女だ。
確かに王族の血が公爵家へ流れる――――までは理解が出来るのだが何故そこでより濃い血と強調されるのだろうか。
「ふふ、我が家には王家同様に影がおりましてな。ええ実に優秀な影なのです。特に貴方と王女の関係もよく理解しておりますよ」
「――――っっ⁉」
「まあまあその様に警戒されずともいいですよ。私には特段気にするものではないですしね。まあ妻となる王女が執着している相手が実の兄である貴方であり、貴方はご自身の愛する婚約者を護る為に妹君に身体の関係を強いられていると言う事実も今の私には全く以って関心はありません。何れ王女が生むだろう子は間違いなくこの世で最も王家の濃い血を受け継ぎし者。その事実だけで十分なのですよ」
「わ、俺は何があろうとキャシーとの間に子を儲ける心算はない!! わ、俺がこの俺が生んで欲しい女性は唯一エリザベス!! 彼女しか俺の子を産んで欲しくはない!!」
つい我を忘れて立ち上がれば声を大にして叫んでしまっていた。
常に冷静沈着であらねばならない王族として致命的な感情を吐き出してしまったがもう遅い。
そう一度吐き出したものは二度と回収出来はしないのだ。
「ふふ、殿下はまだお若い。しかしですよ殿下、貴方の性格ではあの狂女には恐らく打ち勝つ事は出来ないでしょう」
一瞬狂女とは誰の事なのかと俺は心の中でふと考えてみる。
すると公爵は声をあげて笑いながらその答えを教えてくれたのだ。
「狂女とは貴女の双子の妹君であられるキャサリン王女の事ですよ殿下」
10
あなたにおすすめの小説
貴妃エレーナ
無味無臭(不定期更新)
恋愛
「君は、私のことを恨んでいるか?」
後宮で暮らして数十年の月日が流れたある日のこと。国王ローレンスから突然そう聞かれた貴妃エレーナは戸惑ったように答えた。
「急に、どうされたのですか?」
「…分かるだろう、はぐらかさないでくれ。」
「恨んでなどいませんよ。あれは遠い昔のことですから。」
そう言われて、私は今まで蓋をしていた記憶を辿った。
どうやら彼は、若かりし頃に私とあの人の仲を引き裂いてしまったことを今も悔やんでいるらしい。
けれど、もう安心してほしい。
私は既に、今世ではあの人と縁がなかったんだと諦めている。
だから…
「陛下…!大変です、内乱が…」
え…?
ーーーーーーーーーーーーー
ここは、どこ?
さっきまで内乱が…
「エレーナ?」
陛下…?
でも若いわ。
バッと自分の顔を触る。
するとそこにはハリもあってモチモチとした、まるで若い頃の私の肌があった。
懐かしい空間と若い肌…まさか私、昔の時代に戻ったの?!
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
放蕩な血
イシュタル
恋愛
王の婚約者として、華やかな未来を約束されていたシンシア・エルノワール侯爵令嬢。
だが、婚約破棄、娼館への転落、そして愛妾としての復帰──彼女の人生は、王の陰謀と愛に翻弄され続けた。
冷徹と名高い若き王、クラウド・ヴァルレイン。
その胸に秘められていたのは、ただ1人の女性への執着と、誰にも明かせぬ深い孤独。
「君が僕を“愛してる”と一言くれれば、この世のすべてが手に入る」
過去の罪、失われた記憶、そして命を懸けた選択。
光る蝶が導く真実の先で、ふたりが選んだのは、傷を抱えたまま愛し合う未来だった。
⚠️この物語はフィクションです。やや強引なシーンがあります。本作はAIの生成した文章を一部使用しています。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
私の願いは貴方の幸せです
mahiro
恋愛
「君、すごくいいね」
滅多に私のことを褒めることがないその人が初めて会った女の子を褒めている姿に、彼の興味が私から彼女に移ったのだと感じた。
私は2人の邪魔にならないよう出来るだけ早く去ることにしたのだが。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる