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しおりを挟む「まあ有体に言えばそうですな。私の欲するものと既に王家のお荷物と化した……おっと失礼、流石にこれは不敬と捉えられましても致し方がありませんな。王女は妙齢の女性で縁付かれる御相手が見つからぬと陛下より打診を受けたのです。そこで私が立候補する事で現王制を政治的手腕よりの維持と貴方のご婚約者の生家であるセジウィック公爵家の力を現状を維持させたまま押さえる事を条件に、私がキャサリン王女の夫となる事になったのですよ」
「そんな――――…」
「私がいるからこそ現王制は揺るぐ事なく維持が出来ている事は王太子殿下、御父君であられる父王陛下とは違い優秀な貴方様ならば既にご理解しておられる事でしょう。そして今私が反意を示せば一体どれだけの貴族陛下の許へ馳せ参じる事でしょうな」
俺は何も言い返せないでいた。
確かにロリコン醜男と陰口を叩かれつつも彼自身の政治また外交手腕には誰も敵いはしない。
外見こそ恵まれはしなかったものの彼自身、生きていく為の才能には難物も恵まれているのだ。
そんな公爵にしてみれば俺なんてまだまだ肩書だけの王太子であり、俺を、そして王家を本気で倒そうと思えば出来る男が彼なのである。
「まあその様に深刻な表情をしないで下さい殿下。私と陛下はお互い全て合意の上での政略結婚なのです」
「だがキャシーは、妹のキャサリンはそうではないだろう」
あと数日で降嫁するのにも拘らずキャシーは連日狂った様に怒りで暴れ回っていると聞いている――――と言うかだ。
夜中になれば俺の身体を貪っているのが実の妹だなんて本当にあり得ない。
「ああその件で御座いましたらどうぞご安心を。我が公爵家へ降嫁される際には王女らしく淑やかに振る舞われる様に私が既に手を回させて頂きました故」
満面の笑みを湛える公爵へ背筋に寒いものを感じさせられる。
「一体何をする気だ。あのキャサリンが罷り間違ってもそなたの許へ淑やかに降嫁する等俺には全く考えられないのだがな」
反対に体力の続く限り暴れ回るかまたは咲弥へ命じて公爵を殺害――――⁉
「まさかっ、キャシーに何かっっ」
公爵はうっそりとした笑みを湛えれば悪戯がバレてしまった子供の様な面持ちで口を開く。
「流石は殿下ですな。ええ既に私の影達が王宮へ、いえキャサリン王女の許におりますよ。名目はそうですな、愛しい未来の妻を護る為?」
「おい一体何を企んで――――」
「企むも何も私は何でも、ええ仕事は特に失敗等したくはないのですよ。勿論私の欲する望みも――――です。一度は諦めかけた臨んだものを取り逃がしたときのあの消失感と後悔、怒りに悔しさとありとあらゆる負の感情が私の心へ大挙となって襲い掛かりました故にです。過去の過ちを教訓としたからこそ私に二度目の失態は存在しないのです。咲弥がキャサリン王女を大切にするならば私もそうしましょう。あの娘が私のモノとなるならば私は何でも、それこそ咲弥を通してキャサリン王女が望むものを提示するまでです。まあ公爵家へ降嫁する際には気分を落ち着かせる薬は盛らせて頂きますよ。何分建前上王族と名門公爵家の婚礼なのですからね。スキャンダルは出来るだけ避けたいのはお互い様ですからね」
なんて事も無げに公爵は言ってのけた。
そうか、これは何も公爵の一存ではなく――――。
「キャシーへ薬を盛るのは父上も承知の上と言う事だな」
公爵はゆっくりと上下に頷いた。
ならば俺はこれ以上何も言う事はない。
咲弥が元々公爵のモノならば、そしてキャシーが公爵の手の裳のによって見張られている状態ならば恐らく公爵へは何も手が下せまい。
そして数日後大人しくキャシーが公爵家へ降嫁するのであらば俺の今までの憂いは晴れ、これで漸く貴女との間を阻む者がいなくなるのだから……。
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