ガチャガチャ戦記~ブラックなスキル持ち達の解放戦争~

AKISIRO

文字の大きさ
64 / 70

第64話 繰り返しの修行の果てのオーク

しおりを挟む
 緑色の小さな人。
 滅びたとされるオーク族。
 その王とされるグルブは背中の板剣を引きぬいていた。
 隣には光の道化師とされるメレルが立ち尽くしている。

「メレルよ下がっておれ」

「なによ叩けないとでも思ってるの?」

「そうではない、なぜなら、手加減が出来ないという事だ」

「こっちだってね」

 三つ又の槍を構えているポセイドンがにやりと笑う。
 地面から水ではなく海が湧き出ている。
 それが柱のようになり建物のフィールドを水浸しにしていく。

「ゼウスもハデスも逝ったからには」

 ポセイドンはこちらに向かって槍を指し示した。

「オーク族など、人間の女など、簡単に殺せる。それが神というものだ」

「ほう」

 グルブが前に立つ。
 板剣を構える。

「ただ、ただ修行してきた。オークというのはあまり剣術に詳しくないそうだが、こっちは違う。日々日々剣を振ってきた。ただ剣を振ったんだ。1年じゃない、何十年もずっと振り続けてきた。ただそれだけだ」

 津波が押し寄せる。
 メレルが背中から分身のような体を作り出しそれを階段にして空高く舞い上がる。

 だが、グルブはただただ、板剣を構えているだけ。

「あんた死ぬの?」

「いや、海を見ていただけだ」

 グルブの視線の先。
 海の流れ、海の息吹、そして海の力の向き。

 ぬるりとゆったりと板剣を振り下ろす。
 静寂の果てに、一瞬にして津波が二つに割れる。

「うそでしょ、あんたそんなに強かったの」

「これが剣だ。物を切るというのではなく力を切るというものだ」

「なぜ、オーク族が剣を!」

 ポセイドンが叫び声を上げる。

「斬撃とは1回で十分何もかも終わった」

 板剣をグルブは背中にしまう。

「は、何もかも終わっただと? どこが?」

 ポセイドンは気づいていない。今、彼の体が真っ二つに割れているという事を。

「気付かぬか? お前の体は二つに割れているぞ」

「な」

 その時、ポセイドンの体が光の粒のように消滅していく。

「あんたつよすぎでしょ」

 メレルが空より舞い降りるとそう言った。

「それがオークだ」

 ただ。グルブはそう言った。


 ガロン・ゴッド・エルレイムはただ悠然と黒い鎧に包まれて立ち尽くしていた。

「シヴァ、軍団というのがどういう物かを知っているか」

「さぁな、氷の拳がその鎧を破壊してくれよう」

「鎧ではない、軍団とは鎧ではない、意思疎通の意思の塊だ!」

「だが、お前の軍団とは数え切れぬほどのただの亡霊ではないか」

「ああ、亡霊だな、かつての友だ。彼等は俺のスキルとなって今も生きている」

「それを意思疎通とは言わぬ」

「意思疎通というのだ。かつて子供だった頃、かつて騎士になる為に頑張ったこと、かつてハルニレム王を守ると決意した事、全てが繋がる。そこに俺がいるからだ!」

「なら、全ての亡霊を凍り付かすだけだ」

「知っているか亡霊は氷より寒い所にいるものだ」

 ガロンの軍勢がシヴァに向かって押し寄せる。
 津波の怒涛のように、次から次へと。
 
 シヴァの4本の拳が、ガロン騎士団の亡霊を殴り凍り付かせる。
 鎧が砕かれても騎士団は倒れる事なく立ち上がる。
 まるで亡霊そのもののように。

 シヴァはガロン騎士団の亡霊たちを片端から殴り倒し、馬から下落させる事に成功したのだが。
 1人また1人とむくりと立ち上がっていく。

「だから言っただろう、亡霊とは氷よりも冷たい所にいるのだと、そこは冥王星と呼ばれ宇宙の果てだ」

「それなら何度でも倒すだけだ」

 シヴァが体を低くして、眼の前に向かって跳躍する。
 
「剣を持て!」

 ガロンがそう叫ぶ。
 まだ倒れていたガロン騎士団の亡霊たちがまた剣を掴み立ち上がる。
 1体また1体と立ち上がり。
 剣を持つ。
 それを何度もシヴァが殴り氷つかせる。

「立ち上がれ! 剣を持て!」

 ガロンの声で、またもや亡霊の騎士たちが何度も立ち上がる。

「おまえらあああああ」

 シヴァが叫び声をあげるのだが。
 ガロンはただ鼓舞を続ける。

「お前は戦わないのか」

「俺か? 俺は戦っているぞ指揮官として指令を出している」

「それは戦いとは言わん」

「良いか、聞け、シヴァ、俺は指揮官として戦っている。指揮官が戦って死ぬのは大きな間違いだ」

「それを卑怯者というのだ」

「なぁ、指揮官が戦って死ぬのは大きな間違いだといったが死なない戦いならするという事だよ」

 ガロンは颯爽と歩きだす。

 シヴァは亡霊たちに足止めを食らいつつも、少しずつ少しずつ後ろに下がっていく。
 ガロンは今も颯爽と前に突き進む。
 だが、シヴァはまだまだ後ろに下がらされる。

「シヴァ、戦いとはな、相手が弱ったところを狙うだけだ」

 シヴァの体が沢山の亡霊によって覆い隠されて行き。

 最後にはガロンがその喉笛を剣で突き刺していた。

 何も話す事がなく、神としての末路を迎えたシヴァ。

 だが、シヴァの喉が凍り付き出血を抑え。

「それはこっちのセリフだ」

 と叫び、拳をガロンの顔面にめり込ませた。
 だが、ガロンは微動だにしなかった。

「良いか聞け、亡霊を操るものがどんな苦痛でも耐えられなければならない、なぜなら、どんな冷たい攻撃でもどんなに熱い攻撃でも耐え続けなくてはいけない。それが指揮官だ」

「お、お前」

「ああ、俺は、既に肉体を凍り付かせている。壊すとしたら燃やすだけだ。本当に残念だ。キミが炎の神様じゃなくて」

「ぐああああああああ」


 シヴァの絶叫が迸る中。
 ガロンの剣が何度もシヴァの喉を貫き。
 シヴァの体が光の粒となって消滅していく。
 
 ガロン騎士団団長。
 体を凍り付かせてまで亡霊の騎士団長を務める。
 それはかつての仲間達の誠意、誓いなのだから。

 永遠と凍り付く肉体は、暖かさを知らない。
 それでも、老いる事もなく生きているのだから。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

九尾と契約した日。霊力ゼロの陰陽師見習いが大成するまで。

三科異邦
ファンタジー
「霊力も使えない。術式も出せない。 ……西園寺玄弥、お前は本当に陰陽師か?」 その言葉は、もう何度聞いたか分からない。 霊術学院の訓練場で、俺はただ立ち尽くしていた。 周囲では炎が舞い、水がうねり、風が刃のように走る。 同年代の陰陽師たちが、当たり前のように霊を操っている。 ――俺だけが、何もできない。 反論したい気持ちはある。 でも、できない事実は変わらない。 そんな俺が、 世界最強クラスの妖怪と契約することになるなんて―― この時は、まだ知る由もなかった。 これは―― 妖怪の王を倒すべく、九尾の葛葉や他の仲間達と力を合わせて成長していく陰陽師見習いの物語。

あべこべな世界

廣瀬純七
ファンタジー
男女の立場が入れ替わったあべこべな世界で想像を越える不思議な日常を体験した健太の話

最弱弓術士、全距離支配で最強へ

Y.
ファンタジー
「弓術士? ああ、あの器用貧乏な最弱職のことか」 剣と魔法が全てを決める世界において、弓は「射程は魔法に及ばず、威力は剣に劣る」不遇の武器と蔑まれていた。 若き冒険者リアンは、亡き叔父から譲り受けた一振りの弓「ストーム・ウィスパー」を手に、冒険者の門を叩く。周囲の嘲笑を余所に、彼が秘めていたのは、世界をナノ単位で解析する「化け物じみた集中力」だった。 リアンの放つ一矢は、もはや単なる遠距離攻撃ではない。 風を読み、空間を計算し、敵の急所をミリ単位で射抜く精密射撃。 弓本体に仕込まれたブレードを操り、剣士を圧倒する近接弓術。 そして、魔力の波長を読み取り、呪文そのものを撃ち落とす対魔法技術。 「近距離、中距離、遠距離……俺の射程に逃げ場はない」 孤独な修行の末に辿り着いた「全距離対応型弓術」は、次第に王道パーティやエリート冒険者たちの常識を塗り替えていく。 しかし、その弓には叔父が命を懸けて守り抜いた**「世界の理(ことわり)」を揺るがす秘密**が隠されていた――。 最弱と笑われた少年が、一張の弓で最強へと駆け上がる、至高の異世界アクションファンタジー、開幕!

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

現代ダンジョンの苦情係 〜元クレーム処理担当の俺、魔物の言葉がわかるので菓子折り一つで世界を救う〜

ぱすた屋さん
ファンタジー
「その咆哮は、騒音公害に当たります」 現代日本に出現した『ダンジョン』と、そこから溢れ出す魔物たち。 人々が英雄(Sランク探索者)の活躍に熱狂する一方で、組織の闇に葬られた部署があった。 ――ダンジョン管理ギルド・苦情係。 そこへ左遷されてきたのは、前職で数万件のクレームを捌き倒した伝説のカスタマーセンター職員・久我良平(くが りょうへい)。 彼にとって、新宿に降臨した災害級ドラゴンは「騒音を撒き散らす困ったお客様」であり、聖女の奇跡は「同意なきサービスの押し付け(強売)」に過ぎない。 「力」でねじ伏せる英雄たちが敗北する中、久我は「正論」と「どら焼き」と「完璧な事務手続き」を武器に、魔物たちの切実な悲鳴(クレーム)をハックしていく。 一癖も二癖もある仲間と共に、久我はギルド上層部の腐敗や外資系企業の傲慢な介入を次々と「不備」として処理していく。 これは、組織の鎖を断ち切った一人の事務屋が、人間と魔物の間に「新しい契約」を紡ぎ、世界を再起動させるまでの物語。 「――さて。予約外の終焉(ラグナロク)ですか? 承知しました。まずは、スケジュールの調整から始めましょう」

処理中です...