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第70話 集結する大戦争
しおりを挟むウィンタラーと15人の将軍達はファイガスタ帝国に到着していた。
その時には既に、ライル・オリゲートはノアの方舟に連れ去られており、ぶつかり合う事は無かった。
ただし、15人とウィンタラーが城門を通ると。
人は皆疫病にかかり死にかけていた。
その疫病の元となる原因が何であるかウィンタラー走っている。
「セフィロト! あいつは僕達の民からエネルギーを吸い上げている」
「やはりか」
帝王ラッドンが叫ぶ。
15人とウィンタラーが玉座の辿り着いた時、そこは国王の骨となった死体が転がっているだけで持抜けの殻であった。
「どうやら空の都に逃げたようだな」
「そのようですね」
帝王ラッドンの問い掛けに、ウィンタラーが頷くと。
突如として、城門の前に、1人の天使が舞い降りた。
大天使アリエルであった。
アリエルは右手と左手に神秘的な剣を握りしめながら。
「さて、と、これはどういうことなのかな? 帝王ラッドン? なぜウィンタラーがいるんですか? 彼は封印されており、その居場所はセフィロト様が教えはしたが、開放する約束はしていませんが?」
帝王ラッドンは背中から鉾を抜き打ちざま。
「もう、お前等の約束に従う必要もないという事だ」
「ほほう、キミたちの神への忠誠はなかったのか?」
「あるように見せかけていただけだ。まぁタルタロスが現れるのは困るがもう現れているのだろう」
「はは、さすがは帝王ラッドン、それくらいお見通しですか」
「タルタロスが現れてしまった以上、もうタルタロスを倒すしかないし、天使側に寝返っている暇はない」
「その為に天使族をどれだけ犠牲にしたか、知らないのでしょう?」
「それはこの国の王がやったことだが、まぁ、こちらの責任でもある。天使族の生き残りがいたら詫びようと思う」
「そんなので許されるほど世界は優しくありませんよ」
「それを大天使が言うのか?」
「そもそも、君達はその犠牲の上で生きているようなもの、天使族の魂を依り代にしているのだから」
「そして、大天使は天使族の肉体を依り代にしているのだろうさ」
「さてと、話は終わりにしませんか?」
ウィンタラーがゆっくりと瞼を開くようにして告げる。
「大天使ウリエル。あなたは、とても強い」
「そうでしょうね、ここにいる15人が束になっても勝てる自信があります」
「ですが、こちらには全知全能がいます」
「ああ、怖い、だが、その全知全能がいたところで、お前を殺せば」
「それをさせないために、15将軍がいるのですよ」
これは流星ガキが言った。
「なぁ、あんた、ぼく達の事を雑魚呼ばわりしているけど。そう簡単に死ぬ事は無いよ、こっちには全知全能っていうチートスキルを持っている奴がいるからね」
「全知全能の神はセフィロト様だけで良いのですよ」
大天使ウリエルは2本の剣を真横に振った。
それだけで、城の建物の柱が斜めに両断されていく。
ずるりと倒れていきながら。
その斬撃はとどまる事を知らず。
まっすぐにウィンタラーのいる所まで届くはずであったのだが。
「知ってますか、死とは絶対の斬撃の死を意味するのですよ」
死神のカラクリ。
人形のような姿をしていながら、その鎌に触れた者は何が何でも即死させる事が出来る。
それは事象の変化であっても、物事の変化であっても、終わりを告げる。
斬撃は消滅すると。
「伝説おっさんリギット、お酒を飲んで暴れてください」
「あいよーひっくひっく」
伝説おっさんリギッドの体がふにゃふにゃになりながら。
あっちへ行ったりこっちへ行ったりしている。
そして瞬時に消えたと思ったら。大天使ウリエルの背後に到達し。
「それくらい」
と大天使ウリエルは褐色の肌を晒しながら、1本の剣を真横に斬る。
「爆弾のオニ! 視線で爆破してあげてください」
爆弾のオニの視線爆破によって大天使ウリエルの背中が爆発する。
それでも微動だにせず、前に振り向くと。
「こっちーを忘れてありぃまふぇんかー」
伝説おっさんのリギッドの拳が次から次へと見舞われる。
大天使ウリエルの背中に何度もその小拳が乱雑に繰り出される。
彼はそれでも微動だにしない。
「で? しつこい虫けらが」
「だと思うなら、このおれさまを見な」
「うるさいなー」
斬撃が無敵のマルハを両断するはずであった。
だが無敵のマルハの体は両断される事なく、神秘的な剣が折れてしまった。
「これだから、おれさまは無敵のマルハなんだぜ」
「なんだと」
大天使ウリエルの表情にようやく焦りが生まれてくると。
「じゃあ、魔界王デンリン止めを刺してあげてください」
「あいよーまかせて」
魔界王デンリンの右手と左手にエネルギーの塊が集結していく。
それは。
「スキル:ブラックホール」
「ちょっとまってよ」
ようやく大天使ウリエルの表情が真っ青になっていく。
「送り先は太陽、燃え尽きろ大天使」
「ま、まて、飛べば」
「小説家マハイ、束縛的な小説を頼む」
「まかせな、ぼっちゃん」
老婆が、小説をつらつらと書く。
大天使ウリエルの体が身動きがとれなくなる。
「ちょとまってくれ、聞いてない、ふ、ふざけるなああ、ああああああああああああああ」
魔界王デンリンのブラックホールが大天使ウリエルを飲み込み。
そのまま、彼は太陽にまで飛ばされてしまい。
そのまま、じゅっと消滅してしまったのであった。
「まずは、1人だな」
その場の全員がどっと疲れたようで、ぐったりとしていた。
「こちらに被害は無かったとはいえ、大天使ウリエルがこちらを舐め切っていた事と、1人だったからなんとかなった」
ウィンタラが呟きながら、冷静に全知全能スキルを活用していく。
「14人の天使は各地に散らばっている。まずは1人ずつ掃除していきたい」
「ああ、そうだな」
「最後はセフィロトだ」
ウィンタラーが呟く。
大天使ウリエルが最後にはなった魔法。
それは、ファイガスタ帝国の住民の死を意味していた。
城壁が爆発し、建物が崩壊し、疫病にかかって身動きが取れない彼等は生き埋めになっていく。
「無理だ。助けられない」
ウィンタラーは即座にそれを知覚してしまった。
もう無理だと、そう認識してしまったのだ。
「不可能を可能にする。それが流星ガキって奴だろ」
彼はあばら骨をがりがりにさせているのに、にやりと笑って走り出した。
「待ってくれ、流星ガキ、無理をすれば、体が」
「んなもん、知るかよ、ウィンタラーお前は王だろう、王は民を守るもんだろうがよ」
ウィンタラーの瞳から涙があふれかえってくる。
流星ガキが尋常じゃないスピードで、人の領域を超えてしまった。
次から次へと疫病にかかっている民を救っては炎の中瓦礫の中を走る。
ウィンタラー達は城の外に出て茫然としている。
それでも流星ガキは1人でも多く、1000人の命を救った。
そして、流星ガキの心臓は止まろうとしていた。
彼はウィンタラーの手の中で眠ろうとしている。
「ようやく会えたのに、ごめんなぁ、せっかく自由ていう素早い動きがとれたのになぁ、人間を超える事が出来たのに」
「お前は十分人の命を救ったよ、かつて人殺しばかりしてきて命を奪い続けてきた少年はもういないだろう」
「それも抱えてあの世へもっていくさ、ウィンタラーお前は幸せにな……」
流星ガキの開かれた瞼を閉じさせる。
それが人間のスピードを超えるという事の意味だったのだろう。
その日、滅んだファイガスタ帝国の城門の真下には流星ガキが眠りについた。
14人の将軍とウィンタラーが丁重に埋葬した。
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