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第3話 村人の逆襲
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山賊の砦は、あのエリクサが群生していた森からほど近い山の中腹にあった。
岩肌に沿って木造の見張り台がいくつも並び、入口には二十名ほどの山賊が警戒している。
粗末な鎧に剣や弓を携えているが、顔つきは野盗そのものだ。
「……あそこだな」
俺は前を行くリードン村長に目配せをする。
背後には、カップラーメンパワーで超強化された村人十名が続く。
この時点で戦力比は明らかにおかしい──常識的には村人が勝てるわけがないのだが、今の彼らは常識の外にいる。
「おい、そこの連中! 何しに来やがった!」
無精ひげを生やした山賊が、にやつきながら剣を片手に近づいてくる。
その笑みは油断と残虐さが入り混じっていた。
「娘と息子を返してもらおうと思ってな」
村長の低い声が響く。
その目は、怒りでぎらついていた。
「ほう、代わりに献上品でも持ってきたのか? ぐへへ……」
山賊が下卑た笑いを浮かべた瞬間──
ゴッ!
村長のアッパーが山賊の顎を捉えた。
乾いた衝撃音とともに、顎がありえない角度に外れ、体ごと宙を舞う。
その場の空気が一変した。
「な、なんだあれ……!」
残った十九名の山賊が慌てて弓を構える。
次の瞬間、矢が一斉に放たれた。
だが──
「ほう……これくらいか」
村長と村人たちは片手で矢を掴み取った。
全員、まるで武道家の達人のような動きだ。
「バ、バケモノかよ!」
山賊が恐怖に叫んだ瞬間、村人たちは掴んだ矢を逆に投げ返す。
それは銃弾のような速度で飛び、山賊の額や喉を正確に撃ち抜いた。
矢を受けた者は悲鳴を上げる間もなく倒れ、九名が即死した。
「こ、こいつらただの村人じゃねえ!」
残った十名が剣を抜き、突撃してくる。
だが、村人たちはその動きをあざ笑うかのようにすり抜け、足を踏み潰し、拳で頭を叩き割った。
骨が砕ける嫌な音。
血と土が混じる匂いがあたりに漂う。
「退けぇぇ!」
生き残った数名が背を向けた瞬間、村長が地を蹴った。
その速さはチーター以上、視界から一瞬で消えるほどだ。
逃げる山賊の背後に回り込み、右手で背中を貫く。
「ぐはっ……!」
腕を引き抜くと、山賊は声にならない断末魔を残して崩れ落ちた。
わずか数分で戦闘は終わった。
地面には二十の亡骸。村人たちは息一つ乱していない。
俺はというと……異世界の現実をまざまざと見せつけられていた。
「……カップラーメン、やっぱりドーピング効果ありすぎだな」
現実世界の食べ物が、この世界の住人にとっては異常なパワーアップを引き起こすらしい。
もしエナジードリンクでも飲ませたら、勇者クラスになるんじゃないか……そんな妄想が頭をよぎる。
ふと視線を砦の奥に向けると──
「父さん!」
「父さん!」
駆け寄ってくる二人の若者。
娘のナナミーは、アニメのヒロインを思わせる整った顔立ちに、腰まで伸びた黒髪が揺れている。
息子のガルは鍛えられた体躯と精悍な顔つきで、剣を持つ姿がよく似合っていた。
「この人が助けてくれたんだ」
村長が俺を紹介すると、二人は同時に頭を下げた。
「初めまして、ナナミーです。……マナブさん、ですよね? よろしくお願いします」
「俺はガルだ。助けてくれて感謝する」
「こちらこそ、無事でよかった」
軽く会釈を交わし、俺たちは村へと引き返すことになった。
村に戻ると、村長は真剣な顔で切り出した。
「マナブさん……あなたは異世界から来たのですね?」
「……隠していてすみません」
「機械文明の国から来たのかと思っていましたが……この村には古い言い伝えがあります。『異世界人を衆目に晒すな』と」
「なぜです?」
「二十五年前、その戒めを破ったのです。結果、当時の異世界人……勇者様は、各国の依頼を受け続け、魔王軍との戦いに駆り出されました」
俺は眉をひそめた。
その話、どう考えても──
「あー……それ、多分俺の親父だわ」
「なんと……! ならばご存知でしょう。彼は幾度もこの世界を救い、今も魔王の領域で戦っているはずです。我らは彼を衆目に晒しすぎ、無用な義務を負わせてしまった……。マナブさん、あなたは目立ちたいですか?」
「ごめんだな。俺はこっそり商売して暮らせればそれでいい」
「ならば……この村で商店を開きませぬか? あなたの商品は人々を救う力になる。今この世界は混沌に満ちています。魔王軍の復活、各国の侵略、奴隷の横行……」
「なるほど……じゃあ、俺の商品が役に立つならやってみるか」
「この山にはエリクサが取れます。あなたの世界で売れば高くなるでしょう。ただし調合が難しい。ナナミー、あなたが教えて差し上げなさい」
「はい、もちろんです!」
ナナミーが笑顔を見せる。
その横で、ガルが一歩前に出た。
「父さん、俺はマナブさんの護衛になる。彼が死んだら全て終わりだ」
「うむ、そうせい。ガルよ、戦い方も教えて差し上げなさい。わしの父は、マナブさんの父君に剣術を授けたことがあるのだ」
「……そういうことなら、お願いします」
こうして俺は、ナナミーからはエリクサの調合を、ガルからは剣術を学ぶことになった。
確かにアーチェリーと木刀だけでは、長く生き残れる気がしなかったからだ。
岩肌に沿って木造の見張り台がいくつも並び、入口には二十名ほどの山賊が警戒している。
粗末な鎧に剣や弓を携えているが、顔つきは野盗そのものだ。
「……あそこだな」
俺は前を行くリードン村長に目配せをする。
背後には、カップラーメンパワーで超強化された村人十名が続く。
この時点で戦力比は明らかにおかしい──常識的には村人が勝てるわけがないのだが、今の彼らは常識の外にいる。
「おい、そこの連中! 何しに来やがった!」
無精ひげを生やした山賊が、にやつきながら剣を片手に近づいてくる。
その笑みは油断と残虐さが入り混じっていた。
「娘と息子を返してもらおうと思ってな」
村長の低い声が響く。
その目は、怒りでぎらついていた。
「ほう、代わりに献上品でも持ってきたのか? ぐへへ……」
山賊が下卑た笑いを浮かべた瞬間──
ゴッ!
村長のアッパーが山賊の顎を捉えた。
乾いた衝撃音とともに、顎がありえない角度に外れ、体ごと宙を舞う。
その場の空気が一変した。
「な、なんだあれ……!」
残った十九名の山賊が慌てて弓を構える。
次の瞬間、矢が一斉に放たれた。
だが──
「ほう……これくらいか」
村長と村人たちは片手で矢を掴み取った。
全員、まるで武道家の達人のような動きだ。
「バ、バケモノかよ!」
山賊が恐怖に叫んだ瞬間、村人たちは掴んだ矢を逆に投げ返す。
それは銃弾のような速度で飛び、山賊の額や喉を正確に撃ち抜いた。
矢を受けた者は悲鳴を上げる間もなく倒れ、九名が即死した。
「こ、こいつらただの村人じゃねえ!」
残った十名が剣を抜き、突撃してくる。
だが、村人たちはその動きをあざ笑うかのようにすり抜け、足を踏み潰し、拳で頭を叩き割った。
骨が砕ける嫌な音。
血と土が混じる匂いがあたりに漂う。
「退けぇぇ!」
生き残った数名が背を向けた瞬間、村長が地を蹴った。
その速さはチーター以上、視界から一瞬で消えるほどだ。
逃げる山賊の背後に回り込み、右手で背中を貫く。
「ぐはっ……!」
腕を引き抜くと、山賊は声にならない断末魔を残して崩れ落ちた。
わずか数分で戦闘は終わった。
地面には二十の亡骸。村人たちは息一つ乱していない。
俺はというと……異世界の現実をまざまざと見せつけられていた。
「……カップラーメン、やっぱりドーピング効果ありすぎだな」
現実世界の食べ物が、この世界の住人にとっては異常なパワーアップを引き起こすらしい。
もしエナジードリンクでも飲ませたら、勇者クラスになるんじゃないか……そんな妄想が頭をよぎる。
ふと視線を砦の奥に向けると──
「父さん!」
「父さん!」
駆け寄ってくる二人の若者。
娘のナナミーは、アニメのヒロインを思わせる整った顔立ちに、腰まで伸びた黒髪が揺れている。
息子のガルは鍛えられた体躯と精悍な顔つきで、剣を持つ姿がよく似合っていた。
「この人が助けてくれたんだ」
村長が俺を紹介すると、二人は同時に頭を下げた。
「初めまして、ナナミーです。……マナブさん、ですよね? よろしくお願いします」
「俺はガルだ。助けてくれて感謝する」
「こちらこそ、無事でよかった」
軽く会釈を交わし、俺たちは村へと引き返すことになった。
村に戻ると、村長は真剣な顔で切り出した。
「マナブさん……あなたは異世界から来たのですね?」
「……隠していてすみません」
「機械文明の国から来たのかと思っていましたが……この村には古い言い伝えがあります。『異世界人を衆目に晒すな』と」
「なぜです?」
「二十五年前、その戒めを破ったのです。結果、当時の異世界人……勇者様は、各国の依頼を受け続け、魔王軍との戦いに駆り出されました」
俺は眉をひそめた。
その話、どう考えても──
「あー……それ、多分俺の親父だわ」
「なんと……! ならばご存知でしょう。彼は幾度もこの世界を救い、今も魔王の領域で戦っているはずです。我らは彼を衆目に晒しすぎ、無用な義務を負わせてしまった……。マナブさん、あなたは目立ちたいですか?」
「ごめんだな。俺はこっそり商売して暮らせればそれでいい」
「ならば……この村で商店を開きませぬか? あなたの商品は人々を救う力になる。今この世界は混沌に満ちています。魔王軍の復活、各国の侵略、奴隷の横行……」
「なるほど……じゃあ、俺の商品が役に立つならやってみるか」
「この山にはエリクサが取れます。あなたの世界で売れば高くなるでしょう。ただし調合が難しい。ナナミー、あなたが教えて差し上げなさい」
「はい、もちろんです!」
ナナミーが笑顔を見せる。
その横で、ガルが一歩前に出た。
「父さん、俺はマナブさんの護衛になる。彼が死んだら全て終わりだ」
「うむ、そうせい。ガルよ、戦い方も教えて差し上げなさい。わしの父は、マナブさんの父君に剣術を授けたことがあるのだ」
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