《無限倉庫》×10人の異世界転移者~倉庫x通販xガチャx魔獣x癒しx影支配x武装x召喚x情報x翻訳の力で異世界を支配しろ!

AKISIRO

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第2部 十人十色

第41話 勇者語翻訳開始

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「逃がしません!」
 ユリ・グラベルが鋭く叫び、爆発と煙の中を勇者の影がすり抜ける。
 その動きはまるで小鳥――いや、スズメのような小刻みさと速さ。燃え盛る建物の狭間を泳ぐように滑り抜けていく。

「まったく、すばしっこいガキね!」
「あっちです、クラリッサさん!」
「あいよ! ……って、ちょっとロボットの操作が難しくなってきたけど、慣れてきたー!」

 二足歩行型ロボット《カエグサ》の背部スラスターが咆哮し、炎が吹き出す。地面が揺れ、衝撃波が破片を巻き上げた。機体はジグザグに爆発の隙間を縫うように飛び込む。

「にしても、この爆発、なんとかならないかしら」
「先程、どこかのドワーフ爺が爆弾を投げていました!」
「あ、それは……見なかったことにしてね。あの爺さん、ちょっと心の病気かもしれないから」
「え、どゆこと――きゃあああああ!」

 次の瞬間、炎の塊がユリの視界を覆い、体がふわりと浮く。
 爆風の中で銀色の光が閃き、勇者の周囲を文字の輪が取り囲んだかと思うと、その懐から分厚い一冊の本が弾き飛ばされた。

「あああ、僕の黙示録があああ!」

 そこへ、一人の老人が躍り出る。腰を落とし、懐の剣を抜きかけたその動きは異様に素早い。
 老人は空中の勇者を片腕で引き寄せ、着地と同時に息を吐く。

「この十番目のビジャンがお相手いたそう」
「よし、国王ビジャン、あとはよろしく~!」
「あっ、待ちなさい! あなた国王ですかい!」

 ユリは慌てて落ちた本を拾い上げる。表紙には金文字で《黙示録》と刻まれていた。

「これは……勇者の黙示録? ふむ、文字は……読めない。でも、翻訳を使えば――」
「お嬢さん、そんなことしてる場合じゃなかろう!」

 ちょび髭の国王が鬼の形相で迫る。その気迫に空気が震えた。直後、王は気合と共に剣を振るい、ユリの背後の建物が音を立てて崩れ落ちる。

「ちぃ……ぬかったわ」
「自分の国でしょうが!」

 カエグサのコックピットでクラリッサがfireヒートソードとfireガンを同時に構える。
 引き金が引かれ、火線が一直線に国王へ。赤熱のビームが迸るが――

「ぬるいわ!」

 国王が剣を一閃すると、ビームは弾き返され、背後の城へ直撃。轟音と共に天守が崩れた。

「……また城が。まぁ、いいけどな」
「良くないでしょ!」

 クラリッサが叫び、再び攻撃態勢を取る。
 ユリはその間に深く息を吸い、黙示録を開いた。

「私がこれを解読します。クラリッサさん、あとは任せます」
「任されたわ!」

 ページに指を置くと、文字が光り、視界が一気に白に包まれた。
 意識が本に吸い込まれる――そんな感覚。

★ ユリが見る勇者の世界
「フッ……魔王よ、忘れたと思うなよ。お前の妹エリー、今ここでぶち殺してやる!」
「や、やめろぉぉぉぉぉ!」


 悲鳴が魔王城に響く。
 エリーと呼ばれた小さな少女は震え、涙で頬を濡らしていた。勇者はピエロじみた大袈裟な足取りで彼女に迫る。

「これでも食らえ! 次元斬りぃぃぃぃ!」

 空間が裂け、エリーの周囲が爆炎に包まれた。
 魔王は咆哮し、闇色のオーラを噴き上げる。

「あ、やべ……やりすぎた。魔王、ちょっと死んでね」

 巨大な剣が勇者の両手に現れ、振り下ろされる。
 魔王の体は吹き飛び、海沿いの崖下へと消えていった。

「いえ~い! 虐殺って楽しいなぁ!」

 勇者は壊れた玩具のように笑いながら城を破壊し尽くす。
 その背後にもう一人の少女――スカーレット姫が立っていた。

「勇者よ……お主、自分が何をしているか分かっておるのか?」
「はっはー! 楽しいからいいんだよ!」

 姫は深いため息をつき、魔法の羽ペンで羊皮紙に書き記す。

「この黙示録には百八人の選ばれし者の名を記す。彼らが勇者を正しき道へ導かんことを……」

 彼女は本を魔法バリアに乗せ、遠くジェラルド王国へ飛ばした。
 勇者はその場で、自ら心臓に剣を突き立て、笑いながら消えた。

 意識が現実に引き戻される。
 ユリは額に汗を浮かべながら黙示録を閉じた。

「はぁ……また厄介ごとを引き当てたわね」
 そこには、百八人の名前が克明に刻まれている。全員、ジェラルド王国内。
 ――全員を捕える必要がある。
 視界が鮮明になると、カエグサは無惨に大破し、クラリッサが血を流して倒れていた。

「クラリッサ!」
「……大丈夫。でも、あの国王、化け物よ」
「ふはははは! このビジャンの次に強いのは、影の支配者様だけじゃて!」
「じゃあ、次はわたくしがお相手しますわ」

 ユリ・グラベルは腰の鞘から《サフィルシード》の木剣を静かに抜いた――。
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