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第三章《籠姫伝と焔の能力》
【十】
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基地が大きな音を立てながら崩れている最中、紅子ははっと目を覚ました。
土でできた緻密な基地は、砂埃をたてながら沈んでいく。
「目が覚めましたか」
と、声が上から降ってきた。
紅子は、妙な浮遊感に目を瞬いた。
そっと斜め上を見上げると、優しげな面差しの男が笑みを浮かべていた。
ずっと抱えられていたのか、と脳が理解すると、紅子は頬を真っ赤に染め、恥ずかしさのあまり、弥生の胸元を力いっぱい押した。
「……っと。危ないですよ」
と、横抱きにした紅子を抱え直し、
「ちょっとだけ我慢してください」
そう弱々しく笑った。
それでもなお紅子が身動ぎすると、弥生は困ったように眉を下げた。
「それより、暴れられる方が抱えるのが辛いのですが……」
と言われ、紅子は渋々弥生の腕の中で大人しくなった。
「気絶してからそう時間は経っていませんよ。見たところ首の痣が気になりますが、それ以外は外傷が無さそうでした。気分の方はどうですか?」
弥生の問いかけに、紅子は「大丈夫です」と答えようとしたが、声がカスカスと吐息に変わる。
仕方なく首を横に振って意志の疎通を図った。
首に手を添えると、あの男に締めあげられた箇所がぷっくりと腫れ上がっていた。一瞬、その時の光景が蘇ってきて震えた。
「…………クロが戻ってきませんね」
と、弥生が呟いた時だった。
一際大きな音が聞こえたかと思うと、基地だった建物が土と化し、跡形もなく消え去った。
──まさか。
サッと紅子の顔が青ざめる。
「少し様子を見てきます。あなたは──」
「私も連れてってください!」
そう言おうとした。しかし、やはり声はでない。
紅子は弥生の着物を掴み、必死に声を出そうとする。しかし出てくるのは吐息ばかりで、もどかしくて涙が溢れた。
「……一緒に、くると?」
弥生の言葉に、紅子は大きく二回頷いた。
弥生は紅子を片手で抱え直し、眼鏡を外した。
「可愛いらしい我が婚約者の貴重な願いを無下できるはずありせん。何かあっても私があなたを守りましょう。濡れるかもしれませんが、よろしいですか?」
紅子が首を縦に振るのを確認し、弥生は目を閉じた。
ふおっと風が紅子と弥生の髪を撫で、どこから湧いてきたのか、地面から水が渦を巻いて現れた。
「では行きましょうか。……この能力、全身ずぶ濡れになることが多いんですよね」
え、と紅子が口を少し開いた瞬間、地面が抉れ、水の渦に体を包まれた。
物凄い音が耳を刺激し、鼓膜が破れそうだ。
「繋がりました。少し、口と鼻を閉じてください」
──鼻ってどう閉じるの!?
慌てて両手で口と鼻を覆い、目を強く瞑った。
ピチョン、と水滴の音がして、恐る恐る目を開く。
そこは、紅子が数十分前まで閉じ込められていた部屋だった。
「クロ!」
弥生の声に、紅子はハッと辺りを見回す。
弥生のすぐ足元に、クロは血を流してうつ伏せになっていた。
ヒュッと喉が鳴った。
命が消えかけてる。不透明で気味の悪い空気が辺りに散って、気分が悪くなる。
その空気の源は、クロの生気だった。
一度死んだと言っていた彼は、どういう訳かまだこの世と繋がっている。
しかしその実態はとても脆く、危うい物なのだと肌が、脳が警告している。
近寄るな、触るな、何もするな、関わるな。
紅子の手は震えていた。
だが、もう知り合いなのだ。
情が移ってしまったのか、捨ておくことなどできなくなってしまったのだ。
まだ、助けられるかもしれないのだ。
とんとん、と弥生の胸を押し、地面を指す。
意図を汲んだ弥生は、紅子をそっとクロの前に下ろした。
紅子は着物をたくし上げ、クロの額に触れる。
一度死んだものに、この能力が効くかはわからない。だが、助けたかった。
もう誰も、目の前で死ぬのを見たくなかった。
紅子は目を閉じ、祈った。
──戻れ、戻れ、生きる気よ。そちの傷を塞ぎたまえ。そちの血を巡らせたまえ。そちの生命を繋ぎたまえ。
変化は顕著だった。
紅子が目を閉じた数秒後、彼女の髪が光り始めたのだ。
艷めく紅い髪が風もないのになびいて、白い肌までもが発光していく。
光る珠がほわりほわりと浮かんでは、天井の向こうへ消えていく。
ピク、とクロの腕が動いた。
「クロ!」
弥生がクロの腕に触れる。
紅子はぱっと手を離し、じっとクロの顔を見つめる。
クロは眉間にシワをよせ、「うぅ」と苦しげに呻いたものの、呼吸は戻り、出血も止まっていた。
深かったはずの肩の傷は塞がり、折れていたであろう腕と足が、もとの形に戻っていた。
弥生は膝をつき、クロを仰向けにした。
「……とても信じられませんが、貴方がこの傷を……」
治したんですよね、と言おうと振り返るが、思わず言葉を呑み込んだ。
彼女は静かに泣いていた。
「ど、うか…………いえ。どこか、痛むんですか?」
おろおろと目に見えて狼狽える弥生に、紅子は首を振った。
「泣かれると、私はどうしたらいいのか分からないんです。どうすれば泣き止んでくださいますか?」
何も答えようとしない紅子に、弥生は眉を下げる。
そして、ふと気づいた。
「声が、出ないんですか?」
弥生の問いかけに、紅子は微かに頷いた。
弥生はぐっと拳を握る。
自分の鈍感さに腹が立った。状況が見えているつもりで、身近な存在の異変にすら気づかなかった。
自分が自覚している以上に動揺していたようだ。
「気づくのが遅れてすみません。直ぐに医者に見せましょう」
と弥生が紅子に手を伸ばす。
──別に声が出ないから泣いたのではないのだけど……。
斜め上な解釈に、紅子は俯き唇を結ぶ。
──秋桐様が来てくれたことを実感して嬉しくて涙が出てしまった、なんて。
そんなことは口が裂けても言えない。
紅子は躊躇いがちに、その手をとろうとした。
その時、微かに人の呻く声が聞こえたのだ。
紅子はパッと振り返り、思うように動かない足を引き摺って、崩れた瓦礫を退かしていく。
すると、人の手が出てきた。まだ胴体と繋がり、脈もあった。
弥生を勢いよく振り返ると、彼は既に紅子の近くにきて能力を使っていた。
瓦礫が水の流れに沿って退かされ、だんだんと顕にしていく。
出てきたのは一人ではなかった。
その人物たちを目にした紅子は、息を呑んだ。
シンと呼ばれていたバンダナ男と、サクラと、要人が倒れていた。
要人とシンはといえば、サクラを庇うようにして倒れていたのだ。
紅子ははやる鼓動を落ち着かせるため、深呼吸を繰り返した。
すっと掌を前に差し出し、目を閉じた。
「奇跡というのかなんと言うのか。しぶといと言うのか、なんと言うのか」
意識の戻ったクロが、馬を走らせながらブツブツと呟いている。
「まぁ、普通の人間なら死んでいましたね。おそらく三人のうちの誰かの能力のお陰でしょう。まぁ、私の婚約者殿の能力が無ければ皆お陀仏だったでしょうが」
と、弥生は柔らかく微笑む。
「とりあえず、貴方が無事で何よりです。無傷で助け出せなかったのは非常に心苦しいですが……取り返しのつかないことになる前で、良かったです」
と、紅子を抱く腕に力が込められた。
馬は元々兵と予備隊の分しかなかったため、仕方なく紅子は弥生の馬に乗ることになった。
そんな状況が堪らなく恥ずかしい紅子は、ずっと下を向いていた。
「医者も数日中には声が出せるようになると言っていましたし、とりあえずは一件落着ということにしておきましょう」
弥生の言葉に、紅子は小さく頷いた。
「それと、貴方の声が出るようになったらお連れしたい場があるのですが、お付き合い頂けますか?」
弥生の申し出に、紅子は目を見張った。
血管を通る血の流れが加速していくのを感じながら、彼女はまた小さく頷き、胸の前で手を握った。
土でできた緻密な基地は、砂埃をたてながら沈んでいく。
「目が覚めましたか」
と、声が上から降ってきた。
紅子は、妙な浮遊感に目を瞬いた。
そっと斜め上を見上げると、優しげな面差しの男が笑みを浮かべていた。
ずっと抱えられていたのか、と脳が理解すると、紅子は頬を真っ赤に染め、恥ずかしさのあまり、弥生の胸元を力いっぱい押した。
「……っと。危ないですよ」
と、横抱きにした紅子を抱え直し、
「ちょっとだけ我慢してください」
そう弱々しく笑った。
それでもなお紅子が身動ぎすると、弥生は困ったように眉を下げた。
「それより、暴れられる方が抱えるのが辛いのですが……」
と言われ、紅子は渋々弥生の腕の中で大人しくなった。
「気絶してからそう時間は経っていませんよ。見たところ首の痣が気になりますが、それ以外は外傷が無さそうでした。気分の方はどうですか?」
弥生の問いかけに、紅子は「大丈夫です」と答えようとしたが、声がカスカスと吐息に変わる。
仕方なく首を横に振って意志の疎通を図った。
首に手を添えると、あの男に締めあげられた箇所がぷっくりと腫れ上がっていた。一瞬、その時の光景が蘇ってきて震えた。
「…………クロが戻ってきませんね」
と、弥生が呟いた時だった。
一際大きな音が聞こえたかと思うと、基地だった建物が土と化し、跡形もなく消え去った。
──まさか。
サッと紅子の顔が青ざめる。
「少し様子を見てきます。あなたは──」
「私も連れてってください!」
そう言おうとした。しかし、やはり声はでない。
紅子は弥生の着物を掴み、必死に声を出そうとする。しかし出てくるのは吐息ばかりで、もどかしくて涙が溢れた。
「……一緒に、くると?」
弥生の言葉に、紅子は大きく二回頷いた。
弥生は紅子を片手で抱え直し、眼鏡を外した。
「可愛いらしい我が婚約者の貴重な願いを無下できるはずありせん。何かあっても私があなたを守りましょう。濡れるかもしれませんが、よろしいですか?」
紅子が首を縦に振るのを確認し、弥生は目を閉じた。
ふおっと風が紅子と弥生の髪を撫で、どこから湧いてきたのか、地面から水が渦を巻いて現れた。
「では行きましょうか。……この能力、全身ずぶ濡れになることが多いんですよね」
え、と紅子が口を少し開いた瞬間、地面が抉れ、水の渦に体を包まれた。
物凄い音が耳を刺激し、鼓膜が破れそうだ。
「繋がりました。少し、口と鼻を閉じてください」
──鼻ってどう閉じるの!?
慌てて両手で口と鼻を覆い、目を強く瞑った。
ピチョン、と水滴の音がして、恐る恐る目を開く。
そこは、紅子が数十分前まで閉じ込められていた部屋だった。
「クロ!」
弥生の声に、紅子はハッと辺りを見回す。
弥生のすぐ足元に、クロは血を流してうつ伏せになっていた。
ヒュッと喉が鳴った。
命が消えかけてる。不透明で気味の悪い空気が辺りに散って、気分が悪くなる。
その空気の源は、クロの生気だった。
一度死んだと言っていた彼は、どういう訳かまだこの世と繋がっている。
しかしその実態はとても脆く、危うい物なのだと肌が、脳が警告している。
近寄るな、触るな、何もするな、関わるな。
紅子の手は震えていた。
だが、もう知り合いなのだ。
情が移ってしまったのか、捨ておくことなどできなくなってしまったのだ。
まだ、助けられるかもしれないのだ。
とんとん、と弥生の胸を押し、地面を指す。
意図を汲んだ弥生は、紅子をそっとクロの前に下ろした。
紅子は着物をたくし上げ、クロの額に触れる。
一度死んだものに、この能力が効くかはわからない。だが、助けたかった。
もう誰も、目の前で死ぬのを見たくなかった。
紅子は目を閉じ、祈った。
──戻れ、戻れ、生きる気よ。そちの傷を塞ぎたまえ。そちの血を巡らせたまえ。そちの生命を繋ぎたまえ。
変化は顕著だった。
紅子が目を閉じた数秒後、彼女の髪が光り始めたのだ。
艷めく紅い髪が風もないのになびいて、白い肌までもが発光していく。
光る珠がほわりほわりと浮かんでは、天井の向こうへ消えていく。
ピク、とクロの腕が動いた。
「クロ!」
弥生がクロの腕に触れる。
紅子はぱっと手を離し、じっとクロの顔を見つめる。
クロは眉間にシワをよせ、「うぅ」と苦しげに呻いたものの、呼吸は戻り、出血も止まっていた。
深かったはずの肩の傷は塞がり、折れていたであろう腕と足が、もとの形に戻っていた。
弥生は膝をつき、クロを仰向けにした。
「……とても信じられませんが、貴方がこの傷を……」
治したんですよね、と言おうと振り返るが、思わず言葉を呑み込んだ。
彼女は静かに泣いていた。
「ど、うか…………いえ。どこか、痛むんですか?」
おろおろと目に見えて狼狽える弥生に、紅子は首を振った。
「泣かれると、私はどうしたらいいのか分からないんです。どうすれば泣き止んでくださいますか?」
何も答えようとしない紅子に、弥生は眉を下げる。
そして、ふと気づいた。
「声が、出ないんですか?」
弥生の問いかけに、紅子は微かに頷いた。
弥生はぐっと拳を握る。
自分の鈍感さに腹が立った。状況が見えているつもりで、身近な存在の異変にすら気づかなかった。
自分が自覚している以上に動揺していたようだ。
「気づくのが遅れてすみません。直ぐに医者に見せましょう」
と弥生が紅子に手を伸ばす。
──別に声が出ないから泣いたのではないのだけど……。
斜め上な解釈に、紅子は俯き唇を結ぶ。
──秋桐様が来てくれたことを実感して嬉しくて涙が出てしまった、なんて。
そんなことは口が裂けても言えない。
紅子は躊躇いがちに、その手をとろうとした。
その時、微かに人の呻く声が聞こえたのだ。
紅子はパッと振り返り、思うように動かない足を引き摺って、崩れた瓦礫を退かしていく。
すると、人の手が出てきた。まだ胴体と繋がり、脈もあった。
弥生を勢いよく振り返ると、彼は既に紅子の近くにきて能力を使っていた。
瓦礫が水の流れに沿って退かされ、だんだんと顕にしていく。
出てきたのは一人ではなかった。
その人物たちを目にした紅子は、息を呑んだ。
シンと呼ばれていたバンダナ男と、サクラと、要人が倒れていた。
要人とシンはといえば、サクラを庇うようにして倒れていたのだ。
紅子ははやる鼓動を落ち着かせるため、深呼吸を繰り返した。
すっと掌を前に差し出し、目を閉じた。
「奇跡というのかなんと言うのか。しぶといと言うのか、なんと言うのか」
意識の戻ったクロが、馬を走らせながらブツブツと呟いている。
「まぁ、普通の人間なら死んでいましたね。おそらく三人のうちの誰かの能力のお陰でしょう。まぁ、私の婚約者殿の能力が無ければ皆お陀仏だったでしょうが」
と、弥生は柔らかく微笑む。
「とりあえず、貴方が無事で何よりです。無傷で助け出せなかったのは非常に心苦しいですが……取り返しのつかないことになる前で、良かったです」
と、紅子を抱く腕に力が込められた。
馬は元々兵と予備隊の分しかなかったため、仕方なく紅子は弥生の馬に乗ることになった。
そんな状況が堪らなく恥ずかしい紅子は、ずっと下を向いていた。
「医者も数日中には声が出せるようになると言っていましたし、とりあえずは一件落着ということにしておきましょう」
弥生の言葉に、紅子は小さく頷いた。
「それと、貴方の声が出るようになったらお連れしたい場があるのですが、お付き合い頂けますか?」
弥生の申し出に、紅子は目を見張った。
血管を通る血の流れが加速していくのを感じながら、彼女はまた小さく頷き、胸の前で手を握った。
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