年上イケメン彼女と頼られたい年下彼氏

木風 麦

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不思議な先輩〈彼方語り〉

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 最近、陽菜さんが忙しい。
 彼女が泊まった日、とくに何かがあったわけではないのだが、何だかその日以来あまり会えていない。
 そう。何もなかった。
 少女漫画展開を期待しなかった訳では無い。だが、本当に何も無かった。わざわざ姉さんが同室にまでしてくれたのに。
 ほんの少しがっかりしながらも、どこかホッとした気にもなる。


 そんな気分で、通学していた時だった。
「あのぉ……」
 と、背中をトンと触られた気配がして振り返る。
「落としましたよ?」
 ふわりと柔らかい笑みをたたえて、鞄に付いていたはずのキーホルダーを見せられる。
「え、あ……ありがとうございます」
 落としてしまっていたのか、と受け取りながら息を吐く。
 鞄に付けていたキーホルダーは、まだ付き合う前に陽菜さんから貰った誕生日プレゼントだった。
 いや、陽菜さんは俺の誕生日なんか知らなかったんだ。誕生日に、たまたま陽菜さんが「これ、ユーフォーキャッチャーで取ったんだけど、いる?」と言ってくれて、有難く頂戴したんだ。
 だから、結構俺からすれば大事なものなんだ。
「あら?あなたは……オジサンの元カノの、彼氏さん?」
 え、ともう一度キーホルダーを拾ってくれた人を見上げる。
 動物園で陽菜さんにアイスをお見舞した人……の、隣にいた人だった。
「先日は妹が本当にすみませんでした。彼女さん、風邪とか大丈夫でした?」
 心配そうに眉を寄せる彼女に「ええ」と笑いかける。
 姉妹だったのか、とまじまじと見つめる。
 言われてみれば、目のあたりが似ている気がしなくもない。
「よかったぁ……あら?もしかして、同じ学校ですか?」
 その彼女の指摘通り、彼女の纏っている制服は俺の通う学校の物だった。学年は一つ上らしい。スカートの模様がそれを語っていた。
「私、二年の伴田ともだ涼音すずねといいます。これも何かの縁でしょうか。よろしくお願いしますね」
 そう言った伴田先輩はほんわかした顔で手を握ってきた。
 流石に驚いて固まってしまう。
「あの、俺彼女いるから……こういうことは……ちょっと」
 やんわり断ると、伴田先輩ははっと目を見開いて慌てて手を離した。
「ごめんなさい、つい……気をつけますね」
 ペコペコと頭を下げる先輩に、つい「いえ」と口が勝手に動く。
「それじゃ、行きましょうか」
 先輩のふわっとした雰囲気は、有無を言わさず他の人を巻き込むような感じがした。
 そしてその日は、先輩と一緒に登校した。


「お前、伴田先輩とデキてんの?」
 昼休み、友人に神妙な面持ちで尋ねられ、思わず飲んでいたアセロラ炭酸ジュースをごくんと音がするほど勢いよく飲み、むせた。
「なん……っデキてなんか、あるはず、ないだろ!」
 変な日本語になってしまった。
「なんでそう思ったんだよ」
 友人である尚真しょうまに呆れ顔を向ける。
「いや、結構噂になってんぞ。伴田先輩て美人で有名だからな。それに、あの人が男と一緒に居ることなんて全然無いらしいんだよ」
 だから余計に誤解されたんだろ、と尚真は肩を竦めた。
「俺、か、彼女いるのしってるだろ」
 彼女、という響きに幸福感を感じながらそう言うと、尚真は「まあな」と肩を竦めた。
 尚真には真っ先に陽菜さんとのことを報告した。
 すごく驚いた表情をされたのを覚えている。
「別れたのかと」
「違うわ!!そんなんだったら立ち直れんわ!!」
 と勢い余って立ちあがってしまった。
 クラス中の視線が集まっているのを感じ、慌てて座り直す。
「……伴田先輩とはこれといって何も無いって。本当に。もう会うこともないと思うぞ」
 溜息混じりに笑いを零すと、尚真はふと考えるように目を伏せた。
「……そう、か?」
「なんで疑問形なんだ」
 会わないって、と念を押したのだが、尚真はまだ何かが引っかかるようで、口元に手を当てたまま動かない。
「なんだよ。そんな気になることか?」
 茶化す気でそんなことを言ったのだが、尚真は真剣な表情で、
「……お前、充分気をつけとけよ」
 と、意外なことを口にした。
「彼女、大事にしとけよ」
「は?なんの話だよ」
 女好きな尚真からそんなことを言われる日がくるとは。
「そんなの、当たり前だろ」
 と返すが、尚真は「まぁ」と腰を上げた。

「気をつけても、意味ないこともあるけどな」

 だがその言葉は俺の耳には上手く聞き取れず、「え?」と聞き返したが、「なんでもない」といって答えてはくれなかった。
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