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MITSUKADO

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彼等について

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Rを受け持つ彼は名を全認否断(ぜんにんひだん)といった。
秩序を重んじ逸脱するものを罰する正義漢。
とは、彼の役職上の設定であり、その実彼は己の基準のみを良しとする非常に独善的な人物であった。
ある時は他人に意見され逆上し、鞭で叩き殺した。
またある時は、視界に入った他人が目障りだという理由で首をはねた。
彼の世界には彼しかおらず、他人の支えが目に入らない、言うなれば屑のような畜生であった。

YRに身を置く彼は名を光刺流求(こうざしるきゅう)といった。
彼は気が違っていたために恋人を惨殺した過去をもつ。
当然裁判にかけられたのだが、その日のうちに裁判官の気が狂い彼は無罪放免となった。
以来彼の側に寄るものは居なくなり、彼の話をするものも居なくなった。
彼を見かけたものは皆目を逸らしたし、いつの間にか彼について噂する事はタブーとなっていた。
しかし本人は非常に礼儀正しく会話好きの、いたってまともな人物に見えた。
そう見えるだけともいう。

Yを宿す彼は名を目瞬幾都(めまたたいくつ)といった。
気まぐれで快楽主義者の彼はその日暮らしで生きていた。
少しでも気に入らない事があれば先端にいくつものトゲがついた棒つきの鉄球を振り回し、排除してきた。
彼にはかつてとても仲の良い友達が何人もいたが、ある日その友達のうち一人が、彼に心ない言葉を一つ投げかけた事があった。
それを皮切りに周りの友達たちも気まぐれで自己中心的な彼への不満を噴出させた。
結果、その友達たちは全員頭をひしゃげさせ物言わぬ肉塊となった。

YGを誇る彼は名を窓入帰無(まどいりきなし)といった。
虚勢と嘘で身を固めて生きてきた彼は、今日も息をするように嘘を吐いた。
しかし周りのものたちは彼が嘘吐きであることをとうの昔に知っていたし、彼も自分の嘘を簡単に他人は信じない事を知っていた。
弱きをなじり、強きに媚びへつらう彼は常に全認否断と共にいた。
虎の威を借る狐という言葉の何と似合うことだろうと皆思っている。
彼はあまりにも嘘を吐きすぎたがために、自分でも何が嘘で何が真実であるか分からなくなってしまった。

Gを纏う彼は名を華開手折(はなひらたおり)といった。
何事にも無関心で事なかれ主義の彼は、持病の突発性開花千現病にすら無関心であった。
この突発性開花千現病というのは肌から、または服の上から突如花が咲くという病で、彼の場合は黒い合弁花類の花が咲いている。
しかし、本当にただ花が咲くだけであり、本人にも周囲にも基本何の害もないものであった。
毒にも薬にもならない、正にどっちつかずの彼にぴったりな花であると言えよう。
彼は誰の味方にもならず、敵にもならないが、もしも敵になるとするならば、彼にこちらから攻撃を仕掛けた時だろう。
彼は正当防衛として戦うことしかしないのだ。

BGを被る彼は名を虚言滅路(うろごとほろろ)といった。
彼には虚言癖があった。
これは窓入帰無の吐く嘘とは違い、他意のないうわごとのようなものであった。
故に周りのものたちは彼の言葉を聞き流すし、彼に頼るものは誰もいなかった。
以前彼が突然「十一時の方向!高度150!蛇型!」と騒いで回った時があった。
これは敵性モノの出現時に用いられる号令だが、虚言癖のある彼の号令は誰も反応しなかった。
しかしその翌日、同じ時間に彼が言ったのと同じ条件で敵性モノが出現した。
未来予知か偶然か、彼は虚言しか返さない。

Bを燻らせる彼は名を蓮幻金糸(れんげんきんし)といった。
彼は常に穏やかな笑みを浮かべていた。
それは誰とも顔を合わせていない時もそうで、眠っている時すらそうであったため、周りからはそれが当たり前と認識されている。
唯一、その貼り付けた笑み以外の顔を知るものといえば、同僚である虚言滅路であった。
彼と肉体的関係にある虚言滅路は、彼の普段の笑みからは想像もできないようなおぞましいとしか形容できない表情を嫌というほど見てきた。
彼はサディストであり、同色性愛者であったのだ。

Vに浸る彼は名を踊乱胡乱(ようらんうろん)といった。
彼はとにかく意味不明であった。
あらゆる奇っ怪で理屈の通らない言動はもはや皆には虫の羽音程度にしかとらえられていない。
彼が真価を発揮するのは、敵性モノとの戦闘時であった。
彼は体のいたるところに目があったため、あらゆる方向からの攻撃を見切る事ができた。
実のところ、この体のいたるところにある目が彼の意味不明な言動の原因である。
彼はあらゆる物が見えすぎていたために気が狂ってしまったのであった。

BVに鎮座する彼は名を進戻繰行(しんれいくりゆ)といった。
彼はあらゆる物の速度を操る事ができた。
戦闘時には敵性モノの弾丸のスピードを遅らせ、非戦闘時には同僚たちの傷の治癒を進ませ周囲をサポートした。
彼は神のごとき力をもつがために、一つ欠点をその身に抱えていた。
彼は幼児退行をしてはまた元の大人である人格に戻る事を繰り返している。
幼児退行時は戦闘はおろか言うことすらまともに聞かず、まったく使い物にならないのであった。

RVに携わる彼は名を来巡茨芽(くるめぐばらが)といった。
彼はずば抜けた戦闘力をもち、戦場では彼に勝るものはいなかった。
棘の無数に生えた二本の触手は容易く地面をえぐり、敵性モノすら貫いた。
ただ、戦闘力以外にはとくにこれといった長所は無く、言ってしまえば不器用であった。
計器の修理を任せれば更に壊し、炊事を任せれば炊事場ごと吹き飛ばした。
故に彼は戦闘以外任されることはなく、非戦闘時は暇をもてあまし、しかし誰も傷つけぬよう基地の屋上で空を眺めているのであった。
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