2 / 4
彼等が送る日常、その破綻
飛魚
しおりを挟む
ある所に紙魚乃国(しみのくに)という国があった。
栄えに栄えたその国は、ある日突如現れた侵略者たちの脅威に晒される事となった。
なんせ今の今まで戦争などしたことの無かった国であったため、みるみるうちに国民は数を減らしとうとう一軒家ほどの規模のシェルターに入りきるほどまで減ってしまった。
そんな中、国王であるひときわ大きな紙魚が紙魚乃国のうち、紙魚より地位の低い少数民族であるユサイの民に戦闘要員となる事を命じた。
狩りを行い暮らしてきたユサイの民は、紙魚よりも幾分かは侵略者とやり合う事ができたが、それでも徐々に人数を減らしていき、ただでさえ少なかったその人数が前線基地に入りきるほどまで減ってしまった。
そんな中、10ある隊の10人の隊長は皆同じ想いを抱いていた。
紙魚どもの指図を受けて戦うのは癪だ、と。
紙魚はユサイの民と違い一週間あれば子を成すし、しかも卵生で一度に何十人も産む。
そろそろシェルターもいっぱいいっぱいになってきた頃だろう。
そも、我々を奴隷として扱ってきた奴らの為に戦う義理などない。
その日、一夜にして10人のユサイの民たちはシェルター内の紙魚たちを殺し尽くし、何人かのつがいを食用として基地へ持ち帰った。
そうして今へと至る。
墨汁で浸したかのような空にサイレンが響く。
敵性モノ出現の合図だ。
敵性モノ、侵略者である有機物とも無機物とも知れぬ物体の総称である。
R部隊とYG部隊が出撃する。
「トビウオ型は厄介ですね」
全認否断の無線機から窓入帰無が言う。
「殺してしまえば飛べないだろう、ならば殺してしまえばいいのだ」
窓入帰無に全認否断がそう言う。
やがてトビウオの形をした無数の敵性モノが低空飛行で隊列に割り入るようにして飛び込んできた。
眼前目掛けて弾丸のように飛翔する敵性モノを全認否断がサーベルで両断すると、上がった血飛沫を合図にあちこちで戦闘が始まった。
敵性モノの刃のようなひれが銀色に閃き、切りつけてはその反射光を赤く変えていく。
的が小さく素早いため皆苦戦を強いられている中、全認否断は返り血に肌は元から服すら赤く染めていた。
最中、全認否断の無線機に窓入帰無が
「報告、両部隊苦戦の様子、応援を呼んだ方がよろしいかと」
全認否断は
「構わん、奴らを地に落とせるならな!」
窓入帰無が本部へ
「本部、至急応援を頼みます、ええ、BV部隊だと助かるのですが、ええ、はい、え、もう向かっている?それは助かります」
窓入帰無がそれを全て言い切る前に青紫の影が戦場に一筋入る。
すると敵性モノたちの動きがまるで空中に留まっているかのように遅くなった。
進戻繰行による速度操作により、その速度が脅威であった敵性モノはあっという間に片付いた。
「いやあ、助かりましたよ、流石は隊一の特殊能力者!ああ、勿論この速度で片付けられたのは否断様の攻撃力あってですが!」
窓入帰無の世辞を聞き流し、進戻繰行は
「出撃できる状態だったのが幸いだったが、トビウオ型には対抗策を考えておかねばな」
それに対して全認否断が
「向かって来る奴らを片っ端から斬ってしまえば良い、それが出来ない奴らは隊から外してしまえば良い」
相変わらず独裁的だと進戻繰行は全認否断を一瞥し帰路を行く。
基地へ帰れば傷の治療にまた自分の力を必要とするのだろう、と進戻繰行は後にくるであろう疲労を思い気が重くなった。
これが今のユサイの民たちが送る日常であった。
眠り、戦い、食い、また眠る。常に侵略者の脅威に晒される張りつめた世界が彼らの全てであり、侵略者たちのやってくる白い地平線の向こうの事などは彼らにとって理解の及ばぬ事柄であったのだ。
墨汁浸しの空はホワイトのインクを滲ませたように白んでいた。
栄えに栄えたその国は、ある日突如現れた侵略者たちの脅威に晒される事となった。
なんせ今の今まで戦争などしたことの無かった国であったため、みるみるうちに国民は数を減らしとうとう一軒家ほどの規模のシェルターに入りきるほどまで減ってしまった。
そんな中、国王であるひときわ大きな紙魚が紙魚乃国のうち、紙魚より地位の低い少数民族であるユサイの民に戦闘要員となる事を命じた。
狩りを行い暮らしてきたユサイの民は、紙魚よりも幾分かは侵略者とやり合う事ができたが、それでも徐々に人数を減らしていき、ただでさえ少なかったその人数が前線基地に入りきるほどまで減ってしまった。
そんな中、10ある隊の10人の隊長は皆同じ想いを抱いていた。
紙魚どもの指図を受けて戦うのは癪だ、と。
紙魚はユサイの民と違い一週間あれば子を成すし、しかも卵生で一度に何十人も産む。
そろそろシェルターもいっぱいいっぱいになってきた頃だろう。
そも、我々を奴隷として扱ってきた奴らの為に戦う義理などない。
その日、一夜にして10人のユサイの民たちはシェルター内の紙魚たちを殺し尽くし、何人かのつがいを食用として基地へ持ち帰った。
そうして今へと至る。
墨汁で浸したかのような空にサイレンが響く。
敵性モノ出現の合図だ。
敵性モノ、侵略者である有機物とも無機物とも知れぬ物体の総称である。
R部隊とYG部隊が出撃する。
「トビウオ型は厄介ですね」
全認否断の無線機から窓入帰無が言う。
「殺してしまえば飛べないだろう、ならば殺してしまえばいいのだ」
窓入帰無に全認否断がそう言う。
やがてトビウオの形をした無数の敵性モノが低空飛行で隊列に割り入るようにして飛び込んできた。
眼前目掛けて弾丸のように飛翔する敵性モノを全認否断がサーベルで両断すると、上がった血飛沫を合図にあちこちで戦闘が始まった。
敵性モノの刃のようなひれが銀色に閃き、切りつけてはその反射光を赤く変えていく。
的が小さく素早いため皆苦戦を強いられている中、全認否断は返り血に肌は元から服すら赤く染めていた。
最中、全認否断の無線機に窓入帰無が
「報告、両部隊苦戦の様子、応援を呼んだ方がよろしいかと」
全認否断は
「構わん、奴らを地に落とせるならな!」
窓入帰無が本部へ
「本部、至急応援を頼みます、ええ、BV部隊だと助かるのですが、ええ、はい、え、もう向かっている?それは助かります」
窓入帰無がそれを全て言い切る前に青紫の影が戦場に一筋入る。
すると敵性モノたちの動きがまるで空中に留まっているかのように遅くなった。
進戻繰行による速度操作により、その速度が脅威であった敵性モノはあっという間に片付いた。
「いやあ、助かりましたよ、流石は隊一の特殊能力者!ああ、勿論この速度で片付けられたのは否断様の攻撃力あってですが!」
窓入帰無の世辞を聞き流し、進戻繰行は
「出撃できる状態だったのが幸いだったが、トビウオ型には対抗策を考えておかねばな」
それに対して全認否断が
「向かって来る奴らを片っ端から斬ってしまえば良い、それが出来ない奴らは隊から外してしまえば良い」
相変わらず独裁的だと進戻繰行は全認否断を一瞥し帰路を行く。
基地へ帰れば傷の治療にまた自分の力を必要とするのだろう、と進戻繰行は後にくるであろう疲労を思い気が重くなった。
これが今のユサイの民たちが送る日常であった。
眠り、戦い、食い、また眠る。常に侵略者の脅威に晒される張りつめた世界が彼らの全てであり、侵略者たちのやってくる白い地平線の向こうの事などは彼らにとって理解の及ばぬ事柄であったのだ。
墨汁浸しの空はホワイトのインクを滲ませたように白んでいた。
0
あなたにおすすめの小説
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
「魔物の討伐で拾われた少年――アイト・グレイモント」
(イェイソン・マヌエル・ジーン)
ファンタジー
魔物の討伐中に見つかった黄金の瞳の少年、アイト・グレイモント。
王宮で育てられながらも、本当の冒険を求める彼は7歳で旅に出る。
風の魔法を操り、師匠と幼なじみの少女リリアと共に世界を巡る中、古代の遺跡で隠された力に触れ——。
レオナルド先生創世記
ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる