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幻想界編
第11話 影を操る元騎士
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「こねぇなら、こっちから行くぜ!」
盗賊(頭)が獣じみた声を上げ、右手に握った短剣を突き出す。
その動きはただの突きではない――鋭く、速く、無駄がない。創神流の一閃突き。
「っ!」
咄嗟に身をひねってかわすが、刃先は氷河の頬を浅く切り裂いた。血が一筋伝う。
彼の眼は驚きに見開かれていた。
(馬鹿な…この突き、洗練されすぎている。素人じゃない…!)
盗賊(頭)は間髪入れず次の突きを放つ。短剣が閃き、氷河の剣を弾き、隙を作らせない。
剣と短剣が打ち合うたび、火花が散り、氷河の防御が一瞬遅れれば致命傷に繋がりかねない。
だがその隙間を縫って、後方の盗賊が氷河に襲いかかる。
氷河は一歩後退し、間合いを広げた。
「チッ、他の連中は邪魔だ。お前らじゃ足手纏いだ」
盗賊の頭領らしい威圧感を纏いながら、仲間に命じる。
「そこにいる、弱そうな二人を相手してろ。こいつは俺がやる」
「了解!」
「へっ、余裕だな!」
盗賊の二人が志雄とツムギへとじり寄る。
「う、うそだろ…!? 二対三!? 俺、対人戦なんて初めてだぞ!しかも相手は武器持ちだし!」
心臓が跳ねる。背中を冷や汗が伝う。
拳を握りながらも足がすくむ。頭の中に浮かぶのは「死ぬかもしれない」という恐怖だけ。
「龍神拳は…まだ一回しか使えない。くそっ…怖ぇ…!」
ツムギは不安げな笑顔で、それでも志雄に寄り添うように言葉をかける。
「大丈夫です、志雄くん。覚悟次第で状況は変わります。…来ますよ!」
二人が構えると同時に、戦況は二つに分かれた。
⸻
氷河と盗賊(頭)の対峙。
剣を構える氷河は、目の前の男を値踏みするように睨んだ。
「……やけに戦闘慣れしてやがる。さっきの突き…まさか、創神流か?」
「お、勘がいいな!」
自慢げに笑うと、白い歯が光る。
「これでも元・白帝騎士団の団員だったぜ」
「……!」
氷河は息を呑んだ。冗談のつもりで言った言葉が、現実だったとは。
「元騎士として名乗ってやろう。――白帝騎士団の一人、カルド・ネグレイだ」
その声音には誇りと皮肉が混ざっていた。
氷河は一瞬だけ眉をひそめ、すぐ剣を握り直す。
「盗賊風情が、騎士らしく名乗るなよ」
彼の目に宿るのは揺るがぬ意志。
「――王聖騎士団の一人、氷河だ」
カルドの口角が僅かに吊り上がる。
「氷河、か。…一応覚えておこう」
「“一応”なんてつけるな。無理矢理でもこの名を刻んでやる」
瞬間――氷河の周囲の空気が冷え込む。
半径一メートルの地面が白く凍り、踏みしめるたびに氷が鳴る。
「――氷塊閃!」
鋭い一閃と共に氷刃が走る。
カルドは一瞬だけ目を細め、短剣を振り抜いて迎え撃つ。
「さっき見たぜ」
氷河の剣が至近で止められる。
すかさずカルドの短剣が逆手に振り上げられ、氷河の腕を狙う。
「単純だな、この技は。剣が相手の腕に触れなければ凍らない」
「――単純だからって侮るな!」
氷河は剣を引き、勢いのままに膝蹴りを叩き込む。
「ッ!」
カルドの体がわずかに浮き、後方へ飛ばされた。
(……押せる!)
だが、その時。
カルドの足元に伸びる黒い影が、不自然に揺れた。
「――なっ!?」
影の中から、漆黒の刃が三つ、突如として飛び出す。
氷河は咄嗟に剣を盾にするも、右脇腹を掠め、左腕に浅く突き刺さった。
「ぐっ……!」
熱い血が流れ出し、腕が痺れる。
カルドがにやりと笑う。
「そうだ、これが俺の属性――“闇”。俺の能力は、自分の影を操ることだ」
氷河は肩で息をしながらも、闘志を失わない。
「……影、ね。確かに汎用性が高そうだ」
剣先を構え直し、氷の靄を纏わせる。
「だが、俺はそれを負けの言い訳にはしない。勝つのは――俺だ」
両者の殺気がぶつかり合い、空気が張り詰める。
互いに一歩も引かない真剣勝負。
その刹那、夜風が二人の間を駆け抜けた――。
つづく。
★★★
読んでくださってありがとうございます。お気に入りやエールで応援していただけると、とても励みになります。
盗賊(頭)が獣じみた声を上げ、右手に握った短剣を突き出す。
その動きはただの突きではない――鋭く、速く、無駄がない。創神流の一閃突き。
「っ!」
咄嗟に身をひねってかわすが、刃先は氷河の頬を浅く切り裂いた。血が一筋伝う。
彼の眼は驚きに見開かれていた。
(馬鹿な…この突き、洗練されすぎている。素人じゃない…!)
盗賊(頭)は間髪入れず次の突きを放つ。短剣が閃き、氷河の剣を弾き、隙を作らせない。
剣と短剣が打ち合うたび、火花が散り、氷河の防御が一瞬遅れれば致命傷に繋がりかねない。
だがその隙間を縫って、後方の盗賊が氷河に襲いかかる。
氷河は一歩後退し、間合いを広げた。
「チッ、他の連中は邪魔だ。お前らじゃ足手纏いだ」
盗賊の頭領らしい威圧感を纏いながら、仲間に命じる。
「そこにいる、弱そうな二人を相手してろ。こいつは俺がやる」
「了解!」
「へっ、余裕だな!」
盗賊の二人が志雄とツムギへとじり寄る。
「う、うそだろ…!? 二対三!? 俺、対人戦なんて初めてだぞ!しかも相手は武器持ちだし!」
心臓が跳ねる。背中を冷や汗が伝う。
拳を握りながらも足がすくむ。頭の中に浮かぶのは「死ぬかもしれない」という恐怖だけ。
「龍神拳は…まだ一回しか使えない。くそっ…怖ぇ…!」
ツムギは不安げな笑顔で、それでも志雄に寄り添うように言葉をかける。
「大丈夫です、志雄くん。覚悟次第で状況は変わります。…来ますよ!」
二人が構えると同時に、戦況は二つに分かれた。
⸻
氷河と盗賊(頭)の対峙。
剣を構える氷河は、目の前の男を値踏みするように睨んだ。
「……やけに戦闘慣れしてやがる。さっきの突き…まさか、創神流か?」
「お、勘がいいな!」
自慢げに笑うと、白い歯が光る。
「これでも元・白帝騎士団の団員だったぜ」
「……!」
氷河は息を呑んだ。冗談のつもりで言った言葉が、現実だったとは。
「元騎士として名乗ってやろう。――白帝騎士団の一人、カルド・ネグレイだ」
その声音には誇りと皮肉が混ざっていた。
氷河は一瞬だけ眉をひそめ、すぐ剣を握り直す。
「盗賊風情が、騎士らしく名乗るなよ」
彼の目に宿るのは揺るがぬ意志。
「――王聖騎士団の一人、氷河だ」
カルドの口角が僅かに吊り上がる。
「氷河、か。…一応覚えておこう」
「“一応”なんてつけるな。無理矢理でもこの名を刻んでやる」
瞬間――氷河の周囲の空気が冷え込む。
半径一メートルの地面が白く凍り、踏みしめるたびに氷が鳴る。
「――氷塊閃!」
鋭い一閃と共に氷刃が走る。
カルドは一瞬だけ目を細め、短剣を振り抜いて迎え撃つ。
「さっき見たぜ」
氷河の剣が至近で止められる。
すかさずカルドの短剣が逆手に振り上げられ、氷河の腕を狙う。
「単純だな、この技は。剣が相手の腕に触れなければ凍らない」
「――単純だからって侮るな!」
氷河は剣を引き、勢いのままに膝蹴りを叩き込む。
「ッ!」
カルドの体がわずかに浮き、後方へ飛ばされた。
(……押せる!)
だが、その時。
カルドの足元に伸びる黒い影が、不自然に揺れた。
「――なっ!?」
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「ぐっ……!」
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「そうだ、これが俺の属性――“闇”。俺の能力は、自分の影を操ることだ」
氷河は肩で息をしながらも、闘志を失わない。
「……影、ね。確かに汎用性が高そうだ」
剣先を構え直し、氷の靄を纏わせる。
「だが、俺はそれを負けの言い訳にはしない。勝つのは――俺だ」
両者の殺気がぶつかり合い、空気が張り詰める。
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