モメント 〜夢の真実を求めて五界を巡る〜

キマリ

文字の大きさ
14 / 27
幻想界編

第11話 影を操る元騎士

しおりを挟む
「こねぇなら、こっちから行くぜ!」
盗賊(頭)が獣じみた声を上げ、右手に握った短剣を突き出す。
その動きはただの突きではない――鋭く、速く、無駄がない。創神流の一閃突き。

「っ!」

咄嗟に身をひねってかわすが、刃先は氷河の頬を浅く切り裂いた。血が一筋伝う。
彼の眼は驚きに見開かれていた。

(馬鹿な…この突き、洗練されすぎている。素人じゃない…!)

盗賊(頭)は間髪入れず次の突きを放つ。短剣が閃き、氷河の剣を弾き、隙を作らせない。
剣と短剣が打ち合うたび、火花が散り、氷河の防御が一瞬遅れれば致命傷に繋がりかねない。

だがその隙間を縫って、後方の盗賊が氷河に襲いかかる。
氷河は一歩後退し、間合いを広げた。

「チッ、他の連中は邪魔だ。お前らじゃ足手纏いだ」
盗賊の頭領らしい威圧感を纏いながら、仲間に命じる。
「そこにいる、弱そうな二人を相手してろ。こいつは俺がやる」

「了解!」
「へっ、余裕だな!」
盗賊の二人が志雄とツムギへとじり寄る。

「う、うそだろ…!? 二対三!? 俺、対人戦なんて初めてだぞ!しかも相手は武器持ちだし!」
心臓が跳ねる。背中を冷や汗が伝う。

拳を握りながらも足がすくむ。頭の中に浮かぶのは「死ぬかもしれない」という恐怖だけ。

「龍神拳は…まだ一回しか使えない。くそっ…怖ぇ…!」

ツムギは不安げな笑顔で、それでも志雄に寄り添うように言葉をかける。
「大丈夫です、志雄くん。覚悟次第で状況は変わります。…来ますよ!」

二人が構えると同時に、戦況は二つに分かれた。





氷河と盗賊(頭)の対峙。
剣を構える氷河は、目の前の男を値踏みするように睨んだ。

「……やけに戦闘慣れしてやがる。さっきの突き…まさか、創神流か?」
「お、勘がいいな!」
自慢げに笑うと、白い歯が光る。
「これでも元・白帝騎士団の団員だったぜ」

「……!」
氷河は息を呑んだ。冗談のつもりで言った言葉が、現実だったとは。

「元騎士として名乗ってやろう。――白帝騎士団の一人、カルド・ネグレイだ」
その声音には誇りと皮肉が混ざっていた。

氷河は一瞬だけ眉をひそめ、すぐ剣を握り直す。
「盗賊風情が、騎士らしく名乗るなよ」
彼の目に宿るのは揺るがぬ意志。
「――王聖騎士団の一人、氷河だ」

カルドの口角が僅かに吊り上がる。
「氷河、か。…一応覚えておこう」
「“一応”なんてつけるな。無理矢理でもこの名を刻んでやる」

瞬間――氷河の周囲の空気が冷え込む。
半径一メートルの地面が白く凍り、踏みしめるたびに氷が鳴る。

「――氷塊閃!」

鋭い一閃と共に氷刃が走る。
カルドは一瞬だけ目を細め、短剣を振り抜いて迎え撃つ。

「さっき見たぜ」

氷河の剣が至近で止められる。
すかさずカルドの短剣が逆手に振り上げられ、氷河の腕を狙う。

「単純だな、この技は。剣が相手の腕に触れなければ凍らない」

「――単純だからって侮るな!」

氷河は剣を引き、勢いのままに膝蹴りを叩き込む。
「ッ!」
カルドの体がわずかに浮き、後方へ飛ばされた。

(……押せる!)

だが、その時。
カルドの足元に伸びる黒い影が、不自然に揺れた。

「――なっ!?」

影の中から、漆黒の刃が三つ、突如として飛び出す。
氷河は咄嗟に剣を盾にするも、右脇腹を掠め、左腕に浅く突き刺さった。

「ぐっ……!」
熱い血が流れ出し、腕が痺れる。

カルドがにやりと笑う。
「そうだ、これが俺の属性――“闇”。俺の能力は、自分の影を操ることだ」

氷河は肩で息をしながらも、闘志を失わない。
「……影、ね。確かに汎用性が高そうだ」
剣先を構え直し、氷の靄を纏わせる。
「だが、俺はそれを負けの言い訳にはしない。勝つのは――俺だ」

両者の殺気がぶつかり合い、空気が張り詰める。
互いに一歩も引かない真剣勝負。
その刹那、夜風が二人の間を駆け抜けた――。

つづく。


★★★

読んでくださってありがとうございます。お気に入りやエールで応援していただけると、とても励みになります。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

スキル素潜り ~はずれスキルで成りあがる

葉月ゆな
ファンタジー
伯爵家の次男坊ダニエル・エインズワース。この世界では女神様より他人より優れたスキルが1人につき1つ与えられるが、ダニエルが与えられたスキルは「素潜り」。貴族としては、はずれスキルである。家族もバラバラ、仲の悪い長男は伯爵家の恥だと騒ぎたてることに嫌気をさし、伯爵家が保有する無人島へ行くことにした。はずれスキルで活躍していくダニエルの話を聞きつけた、はずれもしくは意味不明なスキルを持つ面々が集まり無人島の開拓生活がはじまる。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

巻き込まれた薬師の日常

白髭
ファンタジー
神に選ばれ、魔素の循環する界へと送り込まれたのは――現代の薬師。 剣も魔法も扱えない彼が憑依したのは、戦闘力ゼロの商人見習いの少年だった。 彼の武器は、知識と経験。商品を生み出し、人脈を築き、産業を広げていく。 「居場所を見つけたい」その願いが、やがて世界を変える力となる。 これは、一人の薬師が紡ぐ研究と開発、そして成長の物語。 【カクヨムでも掲載しています】 表紙は紹介文をもとに、ai【adobe firefly】で作成したものです。(参考程度に……)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...