モメント 〜夢の真実を求めて五界を巡る〜

キマリ

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幻想界編

第13話 影と氷

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「影縫!」

カルドの足元から伸びた影が一気に広がり、五本の細い刃のように形を変えて氷河に襲いかかった。
黒い糸は地を這う蛇のようにうねり、殺意を剥き出しにして四方八方から突き刺さろうとする。

氷河は剣を抜き放ち、息を一つ整える。
「――創神流・居合閃!」

空気が裂けた。
氷河の剣が稲妻のように閃き、迫る影の糸を一瞬で切り払う。斬られた影は同時に凍りつき、砕け散った氷片が光を反射して舞い落ちた。

「へぇ……俺の影すら凍るのか」
カルドは興味深げに呟き、次の瞬間にはもう氷河の間合いへと滑り込んでいた。

「一閃斬!」
短剣が閃光のように走る。

氷河も即座に応じる。
「返陣砕!」

剣と短剣がぶつかり合った。
甲高い金属音が辺りに響き、二人の姿が一瞬かき消える。残像のような斬撃が交錯し、次の瞬間――

「……っ!」
氷河の腹から左肩にかけて浅く血が走った。鮮血が吹き出し、服を濡らす。

だが同時に――

「なっ……!」
カルドの首筋から胸元にかけても浅い傷が刻まれていた。赤い線が浮かび上がり、彼もまた血を流す。

「……斬られた? この俺が……!」
カルドは手で傷を押さえ、顔から余裕を消した。

「舐めてた。剣技は俺の方が上だと思ってたんだがな……。しょうがねぇ」
目に宿る光が鋭さを増し、獣のような闘志があふれ出す。
「全力で叩っ斬るッ!」

彼の影が爆ぜるように広がり、半径四メートルの円を覆った。黒い闇が渦を巻き、地を塗りつぶす。
短剣の刀身は影に飲まれ、伸び、禍々しい長剣へと姿を変えていく。

「……影月」

カルドの吐息は静かだが、全身から溢れる闇の気配は圧倒的だった。

氷河は眉をひそめる。
「……なんだ? 影が拡大して――っ!」

足を動かそうとした瞬間、異変に気づく。
地に張り付いた影が氷河の足を絡め取り、鎖のように拘束していた。

「……くっ。拘束系か」
氷河は歯を食いしばりながらも冷静に状況を分析する。
「だが、足以外は動ける。大したことはない」

カルドの影の剣が、唸りをあげて振り下ろされる。
「黒天ッ!!」

周囲の闇が一点に収束し、全ての影が刀身へと吸い込まれる。振り下ろされるそれは、まるで夜そのものが刃に凝縮されたかのようだった。

氷河は瞳を細め、静かに息を吸う。
「……氷菓」

無駄のない一閃。冷気が爆ぜ、蒼白の刃が走る。

気づいたときには――カルドの腹部に深い切り傷が刻まれていた。

「……がはっ!」
口から血を吐き、膝をつくカルド。
「俺が……負け……だと……」

手にしていた影の剣が砕け散り、闇は地へと溶けて消えた。
カルドはそのまま地に倒れ込み、気を失った。

氷河は肩で荒く息をしながらも、剣を収める。
「……ふぅ。終わったか」

血の滴る傷口を手で押さえながら、彼は振り返る。
「そうだ……志雄、ツムギ……!」
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