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【番外編】寝てる間のおはなし
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刹那が瑠々を庇って、階段から落ちて一時間後。刹那は、薄っすらと意識を取り戻した。右手を包む柔らかくて温かい瑠々の体温を感じて、完全に目が覚めた。保健室で間違いないようだが、肝心の先生はいなかった。職員室で何かをしているのだろう。
「記憶も、あるね」
ちゃんと受け身はとったので、記憶が飛ぶなどの事態にならずにすんだことを心底ほっとした。そんなことになれば、瑠々はもっと責任を感じてしまうだろう。今も涙の跡を残して眠る瑠々の頭を、刹那は起こさないようにそっと撫でる。そこで、保健室の扉が開く。
「ちーっす」
石川だ。
「なんや、先生おらんのかい。って、おー神崎。目ぇ覚ましてるやん、よかったわ」
「……どうも」
「つめたっ!」
「感謝はしてるよ」
「えっ、伝わってこぉへんのやけど」
カラカラと笑う石川は、隣のベッドに腰かけた。
「……僕と瑠々の邪魔をするのは、どういうつもり?」
「なんや、全部バレてんのか」
「僕には、ね。瑠々は、君が心細いと思って何も言わなかったようだけど」
「ほんま優しい子やなぁ。……ますます、好きやわ」
その一言を聞いた瞬間、嫌悪感に近い何かが刹那の胸の底からぶわっと湧き上がる。油断を、していた。入学してからずっと隣で瑠々を守り続けてきた刹那にとって、異性からのそんな意識のされ方をすること自体が許せなかった。
「殺気は勘弁してぇな。今日の望月さん見てたら、もう付け入る隙もないんはよぉ分かった」
「最初から、そんな隙なんてない」
「おーこわ。やから、諦めた言うてるやん」
「……」
「悔しいんやろ。望月さんを守ることしか出来んのが」
「瑠々は、優しくて可愛くて脆くて素直だ。僕が、しっかり閉じ込めておくべき存在なんだ。でないと、汚れた視線に晒されていることにも気付けない」
「監禁でもしたいんか」
「……」
「えっ、ここで黙る?」
ほんま怖いなぁ、あんた。首を竦めて、両手をあげて降参のポーズをとるが、鋭い刹那の眼差しは未だ石川を捉えたままだ。このまま睨まれ続けても仕方がないので、石川は重い溜め息を一つ吐くと保健室の扉へと歩いて行った。
「想いの重さが違いすぎるんも、考えものやな。ご苦労さん」
「黙れ」
「こんなん、いつかすれ違うで」
「黙れ」
「ほな、邪魔したな」
石川は保健室を出て行った。
「分かってる。僕の好きと、瑠々の好きは……比べることが出来るくらい、違うなんて」
そう呟いて俯く刹那の表情を、誰も知らない。誰も知り得ない。誰も図れない。
「あーあ、ただイチャイチャしとるだけなら簡単に壊したろ思うただけなんやけど、えらいのと御近付きになってもうたなぁ。ま、明日からはクラスの人気者石川くんにシフトチェンジしたろ。望月さんには、悪いことした反省の印として……な」
そう自嘲気味に笑う石川の肩に、そっと手が置かれる。
「っ!」
「あら、ごめんなさい。驚かせちゃった?」
「なんや、保健の先生かいな。もう放課後やから、お二人さんの荷物置いといたで」
「ありがと。意外と、気が利くのね」
「意外は余計や」
ほな、さいなら。と言って歩き出した石川の背に僅かな哀愁が漂う。何だかんだ言って、初恋は実らなかったのが事実。胸がじくじくと痛んだ。
「瑠々、瑠々……」
「……ん。あれ、セツくん……?」
そして、保健室からまた物語は動き出す。歯車が噛み合う時に向けてかどうかは、もう分からない。それでも、時間は一秒一分一時間と刻み続けられていくのだ。永遠に。
次の日、職員室で関田先生に事情を改めて説明しお礼をしに行った刹那を教室で待っていたのは、不安そうな瑠々。……と、ニヤニヤしている石川だった。
「セツくん、関田先生はなんて?」
「事情が事情だからね。一週間は部活禁止ってことになったから、これで毎日瑠々とデートできるね」
「も、もう!セツくん!」
「ふふっ、学校だとだめなんだっけ。……で、君は一体どういうつもり?」
「ええやん、初恋やねん。大目に見たってぇな」
「なんの話?」
「瑠々は、知らなくていいから気にしないでね」
「やっぱ、こわっ」
「?」
「記憶も、あるね」
ちゃんと受け身はとったので、記憶が飛ぶなどの事態にならずにすんだことを心底ほっとした。そんなことになれば、瑠々はもっと責任を感じてしまうだろう。今も涙の跡を残して眠る瑠々の頭を、刹那は起こさないようにそっと撫でる。そこで、保健室の扉が開く。
「ちーっす」
石川だ。
「なんや、先生おらんのかい。って、おー神崎。目ぇ覚ましてるやん、よかったわ」
「……どうも」
「つめたっ!」
「感謝はしてるよ」
「えっ、伝わってこぉへんのやけど」
カラカラと笑う石川は、隣のベッドに腰かけた。
「……僕と瑠々の邪魔をするのは、どういうつもり?」
「なんや、全部バレてんのか」
「僕には、ね。瑠々は、君が心細いと思って何も言わなかったようだけど」
「ほんま優しい子やなぁ。……ますます、好きやわ」
その一言を聞いた瞬間、嫌悪感に近い何かが刹那の胸の底からぶわっと湧き上がる。油断を、していた。入学してからずっと隣で瑠々を守り続けてきた刹那にとって、異性からのそんな意識のされ方をすること自体が許せなかった。
「殺気は勘弁してぇな。今日の望月さん見てたら、もう付け入る隙もないんはよぉ分かった」
「最初から、そんな隙なんてない」
「おーこわ。やから、諦めた言うてるやん」
「……」
「悔しいんやろ。望月さんを守ることしか出来んのが」
「瑠々は、優しくて可愛くて脆くて素直だ。僕が、しっかり閉じ込めておくべき存在なんだ。でないと、汚れた視線に晒されていることにも気付けない」
「監禁でもしたいんか」
「……」
「えっ、ここで黙る?」
ほんま怖いなぁ、あんた。首を竦めて、両手をあげて降参のポーズをとるが、鋭い刹那の眼差しは未だ石川を捉えたままだ。このまま睨まれ続けても仕方がないので、石川は重い溜め息を一つ吐くと保健室の扉へと歩いて行った。
「想いの重さが違いすぎるんも、考えものやな。ご苦労さん」
「黙れ」
「こんなん、いつかすれ違うで」
「黙れ」
「ほな、邪魔したな」
石川は保健室を出て行った。
「分かってる。僕の好きと、瑠々の好きは……比べることが出来るくらい、違うなんて」
そう呟いて俯く刹那の表情を、誰も知らない。誰も知り得ない。誰も図れない。
「あーあ、ただイチャイチャしとるだけなら簡単に壊したろ思うただけなんやけど、えらいのと御近付きになってもうたなぁ。ま、明日からはクラスの人気者石川くんにシフトチェンジしたろ。望月さんには、悪いことした反省の印として……な」
そう自嘲気味に笑う石川の肩に、そっと手が置かれる。
「っ!」
「あら、ごめんなさい。驚かせちゃった?」
「なんや、保健の先生かいな。もう放課後やから、お二人さんの荷物置いといたで」
「ありがと。意外と、気が利くのね」
「意外は余計や」
ほな、さいなら。と言って歩き出した石川の背に僅かな哀愁が漂う。何だかんだ言って、初恋は実らなかったのが事実。胸がじくじくと痛んだ。
「瑠々、瑠々……」
「……ん。あれ、セツくん……?」
そして、保健室からまた物語は動き出す。歯車が噛み合う時に向けてかどうかは、もう分からない。それでも、時間は一秒一分一時間と刻み続けられていくのだ。永遠に。
次の日、職員室で関田先生に事情を改めて説明しお礼をしに行った刹那を教室で待っていたのは、不安そうな瑠々。……と、ニヤニヤしている石川だった。
「セツくん、関田先生はなんて?」
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「ふふっ、学校だとだめなんだっけ。……で、君は一体どういうつもり?」
「ええやん、初恋やねん。大目に見たってぇな」
「なんの話?」
「瑠々は、知らなくていいから気にしないでね」
「やっぱ、こわっ」
「?」
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