余命僅かの令嬢は、二人の死神に恋をする

白風

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余命宣告

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 カイトに刃を突き付けられた私は、その怪しく光る物から目を離せないでいた。

(これで終わりに出来る)

 生きて行く気力が薄れてしまっている私は悩んでいた。
 もう全て終わりにしても良いかも知れない。
 これまでの出来事が走馬灯のように浮かんで来た。
 両親に大事に育てられて幸せだった。
 この家に生まれて良かった思う。
 唯一の心残りは……。

(私を心から愛してくれると出会いたかった)

 本当の恋を知らずに終わるのが、寂しかった。
 切なさが顔に浮かんでいたのだろうか。
 カイトは刃にカバーを被せて腰に戻した。

「まだ未練があるみたいだね」
「……」

 死神にはお見通しらしい。

「まぁ、急ぐ必要もないけどね」

 カイトはそう言うと頬杖を突いた。
 ここで私は思った疑問を口にした。

「私はもうすぐ死ぬの?」

 死神がわざわざ来たということは、やはり理由があるのだろう。

「んーーまあ、そうだねぇ」
「いつ死ぬの?」

 じっと私を見つめて来た後、呟いた。

「知りたい?」

 コクコクと頷いた。
 その反応を見て少し目を閉じた後、ゆっくりと瞼を開けたカイトが教えてくれた。

「あと三ヶ月ってところかな」

 三ヶ月……。
 今死ななかったとしても、私はあとその位しか生きられないのか。

「何故死ぬの?」

 その問いにカイトは渋い顔をした。

「やっぱり気になるよねぇ。でも会社のルールで教えられないんだ。ごめんね」

 ペコリと頭を下げて来た。
 病気だろうか。事故なのだろうか。
 モヤモヤとした感情が広がる。
 これまでの人生で死について深く考えてこなかったが、いざ余命宣告されると、身の回りの全ての物が急に色を失って見えた。

「死神にもタイプが色々あってさ、死の直前まで姿を見せなかったり、逆に俺みたいに事前に姿を見せたり」

 カイトは真っ直ぐに私を見つめていた。

「俺はさ、残りの人生楽しんでもらいたいと思ってるから、こうして早々と登場したって訳」

 そうは言われても、唐突に余命を知らされたこっちの身にもなってほしい。

「これから三ヶ月、毎日あなたと一緒にいることになるの?」

 いきなり知らない男と、しかも毎日一緒だなんて勘弁して欲しい。

「そうとも言えるし、そうじゃないとも言える」

 曖昧な言葉だった。
 飄々とした態度にイラついてきた。

「話は今日はこの位にして、今はとにかく休んだ方がいいよ」

 あなたが邪魔してきたんでしょうが。と思ってしまった。
 カイトは立ち上がると「じゃあまたねーー」と言って消えて行った。
 部屋に一人残されると、今までの出来事は妄想だったのではないかと思ってしまう。

(疲れた……)

 頭が働かない。
 お風呂に入ってさっさと寝よう。
 そう思い、ゆっくりと立ち上がった。
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