余命僅かの令嬢は、二人の死神に恋をする

白風

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死神と死神の戦い

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 バルト・クライス。
 名前は聞いたことがある。
 さっきカイトが言ったように『死神』だったり、多くの人々の命を救っていることから『英雄』と呼ばれていたり。
 人によってバルトの呼び方は様々だ。
 確か、王家に仕える部隊に所属してると聞いたような。
 その時カイトが口を開いた。

「魔物を倒しまくるのは凄いと思うけどさぁ、その反動で魂が一気にあの世にやって来て僕達死神の仕事が忙しくなるんだよねぇ。もうちょっとペース配分考えてくれると有り難いなぁ」

 鋭い眼光を前にしても変わらない、緊張感のない態度だ。
 肝が座っているというのか変わっているというのか。

「死神だと?」

 怪訝そうにカイトを見るバルトは、太い腕を組んだ。

「信じられない気持ちは分かるけどさぁ。でも事実なんだよね」

 そして何を思ったのか、カイトは突然両手を広げた。

「試しに俺を斬ってみる? そうすれば分かるよ」

 挑発するような笑顔を浮かべ、手をヒラヒラとさせている。
 ど、どうしよう……!?
 大惨事になっちゃう!
 ……いや待てよ。
 あんなに煽っているということは、死神は斬られても無事なのか?
 うーん、分からない。
 ふとバルトを見ると、長剣を鞘から抜いているところだった。

「ちょ、ちょっと待ってよ!? 落ち着いて!」

 私の抗議の声など無視してバルトは両手で剣を構えていた。
 一人オロオロとしていると、やがてその剣をカイトに向かって振り下ろし……。

「……っ」

 思わず目を閉じ、顔を背けてしまった。
 カイトは本当に斬られてしまったのだろうか。
 しかし悲鳴などは聞こえない。
 風が吹く音と鳥のさえずりが周囲で鳴っている。
 数秒後ゆっくりと目を開けてみると……。
 そこは血の海、ではなく平然と立っているカイトの姿があった。
 バルトはというと、目を見開いている。

「お前は一体何者だ」

 問われたカイトはニヤッと口を歪ませた。

「だからさっき言ったじゃないか。死神だって」

 そしてその手には少し前に見た短剣が握られている。

「今度は俺の番だねぇ」

 直後、カイトは短剣を躊躇いもなくバルトの胸に突き刺した。

「がっ!?」

 短く呻いたかと思うと、バルトの巨体がそのまま前に倒れた。
 突然の出来事に声が出ない。
 死んじゃったのだろうか。
 私の疑問に答えるかのように、カイトが視線をこちらに向けて口を開いた。

「死んだといえば死んだし、生きているといえば生きている。そんな感じかなぁ。つまり仮死状態ってこと」

「仮死状態!?」

 バルトの周囲には特に血が広がっている様子はない。
 魂を刺した。ということなのだろうか。

「今頃大変な目にあってるかもねぇ」

 そりゃそうでしょうよ。
 死にかけてるんだから。
 と思っていると、カイトの次の一言で更に衝撃を受けた。

「彼が今まで殺した魂に、あの世で襲われてるかもね」
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