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第二十七章

第百二十一話:エピローグ(1)

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◆一つ目:ゴリヴィエ

筋肉教団のお話です~。
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 夢にまで見た『筋肉教団』の運営は、軌道に乗り始めた。

 当初こそ、ギルドの下請けとして未来の筋肉を育てる為に誠実に頑張るつもりであったのだが・・・予定が大幅というか、凄まじく上方修正させられた。

「教祖ゴリヴィエ様、副教祖タルト様。会談の準備が整いましたのでご足労お願いいたします」

「ご苦労。第七会議室でしたね・・・直ぐに向かうので下がりなさい」

 この度、ギルド総本山の謎の崩壊に伴い『ウルオール』や『神聖エルモア帝国』以外の国でもギルドの看板を取り下げて『筋肉教団』傘下に入りたいという要望が多数持ち込まれた。そして、これから各国のギルド本部のギルド長を集めた大会議が開催される。

 『筋肉教団』の要望を是とするならば、『筋肉教団』傘下への加入を認めるという事を伝えるだけの会議なのだ。こちらの提案は至ってシンプルで非営利団体に恥じない運営である事だ。要するに、汚職は問答無用で解雇で今後は物理的に首を飛ばすという単純明快な物だ。だが、この条件にどれだけのギルドが首を縦にふるか見物だ。

 無論、清廉潔白なギルドにとってしては『筋肉教団』傘下への加入はうまみがある。ペニシリンの提供や事務職員の派遣など様々な物を用意している。中でも一番の目玉は、筋肉ポイントで購入できる非売品だ。これのお陰で、冒険者がギルドより『筋肉教団』に多数移籍している。今月も右肩上がりで人が増えている。まぁ、ギルドと違いピンハネを殆ど行っていないので、余程の奇特な者で無い限り『筋肉教団』へ乗り換えるだろう

 よって、『筋肉教団』傘下に入らねば遠からず経営破綻する未来が待っている。

「ご、ゴリヴィエ様~。無理ですって!! なんで私がそんな重大な会議の場に!?」

「教祖ゴリヴィエと呼びなさいといつも言っているでしょう!! 重大な会議の場だから、副教祖タルトが出る必要があるんです。忘れては行けませんよタルト・・・貴方は、私の片腕なのです。よって、出ないという選択肢など最初から存在しないのですよ」

「あっ、そうだ!! 代わりにシェリーを出席させましょう。人事部トップなら代役としても不足はありません。大丈夫・・・あの子しぶといから死なないだろうし」

 ギルドの後ろ盾として絶対的な権力を誇っていた者達が軒並み死亡し、南方諸国連盟も戦争で敗退をした。よって、各国にあるギルド本部は良い意味でも悪い意味で解放されたのだ。

 一部のギルドは、完全に独立をしてギルド長の裁量で運営をしていく事を決めた。ただし、それにはリスクもあり、運営者であるギルド長の手腕に掛かっていると言える。

 だが、大部分のギルドは、ギルド総本山の支援無くして運営する事が難しい。そんな有象無象の殆どのギルドが取る道は寄生である。無論、そんな中でもギルド総本山が崩壊した事で野心を表したギルドもあり、ギルド総本山と比較して圧倒的に規模も権力も小さい『筋肉教団』を今のうちから乗っ取ろうと計画しているギルドもあると情報も入っている。

 バタン!!

「実の妹を餌にして生きながらえようとする姉に絶望した!! そんなんだから、血染めのタルトなんて教科書に載るんですよ」

 私の右腕であるタルトの実の妹シェリー。これがなかなか優秀な子なのだ。何事もそつなくこなすタイプで将来が実に期待できる。

「それは、あんたが広めたんでしょ!! この間、実家に帰った際に実の両親に距離を取られたこの気持ちシェリーに分かるの!? なにが、『お姉ちゃん。大丈夫、シェリーはお姉ちゃんの味方だよ』とか言って泣き真似して私に抱きついてきてさ。だけど、見たんだからね・・・両親に聞こえないように『ざまーないね』と言ったでしょ」

 あぁ、私と一緒に実家へ戻った際の出来事ですか・・・実のご両親に心配を掛けるほどになっていたとは少し手を打ってあげなければいけませんね。『筋肉教団』の黒い部分は、副教祖タルトが絡んでいると囁かれているのは知っていましたが、実のご両親の耳にまで届いているとは思いませんでした。

 それにしても、仲の良い姉妹だ。この私には兄こそいるが女姉妹がいないのでこのような可愛い口げんかをした事が無い。

「えぇ~、お漏らしタルトより遙かにマシじゃないですか。まぁ、それは置いておいて・・・今日は、お二人に面会したいという人が居たので連れてきちゃいました」

「シェリー、生憎ですが間もなく会議の時間なのです。貴方もそれは分かっているのに、なぜ連れてくるのです」

 人事部トップともなれば、この重要な会議の開催時間を知らないわけでもあるまい。タルトが代理としてシェリーを推薦するほどだから、今回の会議資料にも眼を通しているのでしょう。

 ゾクリ

「この臭いは・・・ゴリヴィエ様!!」

「分かっています。シェリーも下がりなさい」

 血の臭いがする。すぐに、タルトと共に臨戦態勢を取った。

 まさか、会議前に仕掛けてくるとは予想外ですね・・・頃合いを見計らって我々の首を狙ってくる者は出ると考えておりました。私達トップの二人が居なくなれば、『筋肉教団』傘下の中で力が強い者が次期トップに付くのは明らかなのですから。

 『ウルオール』や『神聖エルモア帝国』でそのような不埒な野望を抱く者は少ない。これもヴァーミリオン王家の力が絶対的である事とガイウス皇帝陛下のご威光のお陰だ。よって、それ以外の国家から刺客が送りこまれると考えていた。この会議が終わり他国のギルドが傘下に加わったタイミングで。

「『ウルオール』王都にある大会議室を借りているからと言って油断しすぎですよ。筋肉教団員を活用して警備を行うのは良いでしょう。しかし、その教団員自体がスパイだと言う可能性も十分ある。本当は激励の言葉を掛けに来ただけだったのだが、このような手土産を持ってくる事になるとはね」

 三名の冒険者の死体が部屋の入り口に置かれた。

 まさか!!このお声に、雰囲気!! ご無事なのは一部で囁かれておりましたか、まさかお姿を見せに来て頂けるとは思ってもみなかった。何か重大な事件が起こって、姿を見せないといけない状況になってしまったのだろうか。

「レイア様!! よくぞ、お出でくださいました。どうぞ、お座りください」

「ぎゃーーー!! レイア様」

 シェリーは直ぐに、お茶を入れ始めたというのにタルトは叫んでいるだけとは情けない。レイア様より教育を任された身としては恥ずかしい限りだ。

「レイアおじさん、お茶が入りましたどうぞ。いや-、それにしても骨だけになったと聞いたのに・・・どうして生きているんですか!? 」

「ふむ、シェリー君だったかな。それはね、高ランク冒険者にでもなれば、その程度じゃしなないんだよ」

 レイア様ほどの高ランク冒険者になれば骨になっても死なないのか・・・やはり、私達のような一介の冒険者とは格が違います。で、タルトはいつまでそこで馬鹿みたいに口を開けているのですか、すぐにレイア様にお菓子を出すとかやらないと行けないことがあるでしょう。

 いいですか、我々『筋肉教団』の運営には、瀬里奈様やレイア様のご協力が必要不可欠なのですよ。『蟲』の魔法が使えるお二人が居ないと、清廉潔白で優秀な事務員を格安で集める手立てが無くなってしまう。

 まさに、死活問題だ。

 私の睨みでようやく何が言いたいか理解出来たようだ。戸棚にしまってあるお菓子をせこせこと出し始めた。

「して、レイア様。一体、どのようなご用件でしょうか。お姿をくらましたレイア様がこうしてお見えになられたのです。何か、あると考えます」

「あぁ、少しばかり頼みたいことがあってね」

 なんと!! あのレイア様が私達を頼ってここまで足を運んでくださるとは。今までたまりに溜まった恩をお返しするチャンスではありませんか。

「あ、あのレイア様が私達に頼み事!? ば、ばかな・・・明日は空からウ=ス異本でも降るかも知れなっ!! ごぉぐぅ」

 タルトの脇腹に肘鉄を食らわせて黙らせた。恩人たるレイア様に何たる失礼な。タルトは、レイア様に既に返しきれない程の恩があるというのに・・・全く、どうしてこうなんでしょうか。

「なんなりとお申し付けください!! このゴリヴィエ、レイア様のあらゆるご要望にお応えいたします」

「馬鹿な姉と違い優秀な妹は、全力でお手伝い致しますよ。無論、姉と違い私は有料ですが」

「と、当然私もお手伝い致しますよ」

「有料か、なかなか交渉上手で優秀な妹だなタルト君。安心しろこの私も人を使うのに無償で使おうなど考えていない。働きに応じた対価は、用意しよう。『筋肉ポイント』で購入できる物から何でも好きな物を一つくれてやる」

 タルトとシェリーの眼が光るのが分かった。『筋肉ポイント』の景品は、私やタルトのようなトップであっても例外なく依頼をこなさないと加算されない物だ。中には何年も死ぬ気で働かないと交換できないような商品まであるというのに、何でもとは気前が良い。

「このタルト、レイア様の為なら火の中水の中」

「変わり身早!! 実の妹として、こんな姉で恥ずかしい」

 そういいつつ、タルトと全く同じく膝を床に付いてレイア様に忠義を誓う姿勢をしているのは姉妹だからこその芸当だろう。

「そうそう、大事な依頼内容だがね。一つでも多くのギルドが『筋肉教団』へと鞍替えをさせる為に、この私に手伝いをさせてくれないかというものだ」

「それは一体、どういう事なのでしょうかレイア様?」

 こちらが依頼としてお願いするのだったら理解出来るのですが・・・レイア様がそれを依頼として持ってくるのが理解出来ない。だが、レイア様の事だから、色々と思うところがあるのでしょう。




 『筋肉教団』で血染めのタルトという異名を持つタルト君だ。今更、一つや二つ悪評が付いたところで支障は無いだろう。結婚についても、この私がタルト君の理想の蟲人を用意してあげる事になるだろうし、安泰だ。

「それでは、参りましょうか。教祖ゴリヴィエ」

「えぇ、副教祖タルト」

 本日は、タルト君の面の皮を被り私が代理出席している。なぜ、このような行動に出たかと言えば簡単だ・・・ゴリフターズの子供が産まれるまでに不安要素を一つでも潰す為である。ギルド総本山が崩壊したとはいえ、各国にあるギルドが独断で動く可能性は否定できない。

 現に、先ほども3名の刺客を始末したのだ。ゴリヴィエとタルトならば、殺せると思っている連中が多いのだろう。要は、嘗められているのだ。後ろ盾はあるにしても、上手に始末すれば権力がそのまま横にスライドしてくると考えている奴らに思い知らせてやらねばなるまい。

 よって、この私自らギルド長達にタルトの面をかぶり・・・死の恐怖をばらまくのだよ。あまり嘗めた行動をすると殺すぞとな。

 もちろん、ギルドだけなく不穏な動きをする国家も牽制する必要はあるのだが・・・そこはガイウス皇帝陛下の神器『プロメテウス』のお力を借りて洗浄する予定で居る。ギルドにも同じ手段が使えれば良かったのだが・・・生憎と数も多い上に本名が分からない事がおおくてね。

「そうそう、シェリー君。タルト君が逃げ出さないようにしっかりと見張っておくんだぞ」

「お任せください!! それにしても、流石の変装術ですね。妹のこの私でも見分けがつか・・・・・・あぁ、女子力がレイアおじさんの方が高いから見分けが付きます!!」

「いいもん、いいもん。私には、オルハちゃん達がいるもんね。後で慰めて貰うもんね」

 無駄な抵抗を行うかとおもったが、タルト君も成長したようだな。この私がやると決めたことに対して反論がないとはね。

 ・・・・・・後、タルト君。お戯れが過ぎない程度にしなさいよ。どのような使い方をしたのか、蛆蛞蝓ちゃんがメンテナンスを行うときに全部ばれるんだからね。

「おっと、議会の時間だな。それでは、新しい歴史に名前を刻みにいきましょうか。喜べ、タルト君・・・君の名前は、未来永劫語り継がれる事になるのだ」


・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

 数日後、ゴリヴィエとタルトの名前は今まで以上に各国に知られる事となった。議会の場で不満がある者を黙らせるために、刺客を送り込んできたギルド長を嬲り殺しにした様子が広まったらしい。なんでも、そこそこの実力があるギルド長らしかったのだが一方的な虐殺になってしまったのが良い宣伝だったのだろう。

 おかげで、下手に手を出したら殺されるという抑止力になったのだ。これで、『筋肉教団』の傘下に加わったギルドは大人しくなるだろう。加わらなかったギルドも下手に手出しはしてこないと思える。かなり、本気で殺気を振りまいたからね。

 その成果もあってか、各国の要注意人物のリストにはタルトとゴリヴィエの名前が堂々と刻まれた。タルトに至っては、私が死亡した事で開いた枠を埋める程の要注意人物リストの上位に食い込んだのだ。

「『筋肉教団』の体制は盤石になるだけでなく、ゴリヴィエの安全もこれで確保できるだろう。更には、我々の安全にも繋がる完璧な仕事だった」

「流石は旦那様です。ゴリヴィエから周辺の小国も軒並み看板を付け替えたと感謝の言葉が届いております」

 ゴリフリーナから手紙の内容を聞いた。だが、急激な規模拡大に伴う問題解決が急務だな。

「となれば、事務要員が不足するのは目に見えているな。蛆蛞蝓ちゃんが頑張っているが、やはり予てより計画していた。孤児院卒の無職の者達を活用しよう」

 生きた人間を蟲が操って、お仕事をするほか有るまい。その手法なら、蛆蛞蝓ちゃんが行う人体改造の手間も少なくて済む。可能であれば来月までに100人は用意して送り込みたいね。

「職に就ける者が居れば、犯罪に身を落とす者も減るでしょう。『筋肉教団』の健全性も保てるという実に素晴らしいアイディアです。さっそく、『ウルオール』の議会で承認させましょう」

「おっと、二人は安静にしておきなさい。四ヶ月目なのだろう。あちらへの連絡は、遊びに来ている義弟達に任せよう」

 さて、今日もゴリフターズと産まれてくる子供達の為に汗水垂らして働きますか。
 
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『死の恐怖』タルトの誕生です・・・とあまり明言すると怒られそうなのでこの程度で@@

次回のエピローグは、フローラ嬢とマーガレット嬢を企画中!!

頑張って執筆するぞ~。
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