高次元世界で生きていく

エポレジ

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第2章 地下世界

24話 脱出

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 目を開けると、鋭い日差しが目に入った。地下世界の薄暗い偽物の太陽とは違い、ギラギラと力強く輝いている。耳を澄ませば、セミがミンミン鳴いている。いつの間にかもう夏のようだ。

「出られたんだ……ようやく外に……!!」

「やった……やったぞ!!!!」

「なんで出れたんだ!? なんかラッキー!!」

 ワー! ワー!

 地下世界にいた何百人という生徒は、知らずのうちに学校のグラウンドに転移していた。久しぶりに外に出られた生徒たちはお祭り騒ぎ。フフ、俺がみんなを開放してやったんだが、それは秘密にしておこう。

 そんな騒ぎのなか理事長が現れ、深刻そうな表情で朝礼台へとのぼった。そしてそこには緑色の髪の少女、赤色の髪の少年、紫色の髪の少女が並んで立っている。

「おい……あの人たちって!!」ざわざわ

「知ってる! この学園を代表する3人の超能力者でしょ、かっこいい!!」ざわざわ

 どうやら有名人のようだが、当人たちは決して和やかな雰囲気ではない。

「お静かに。今日、君たちが出られたのは、この誰かによって地下世界の『核』が壊されたからだ。我々は、誰がどうやってそれを壊したかを突き止める必要がある。心当たりのある者は出てきなさい」

 なんだか急に雲行きが怪しくなってきた。まるで悪いことをやった人を特定するような、そんな感じ。

(やったのは俺だ……でも、絶対に怒られると分かっているこの状況で手は上げられない……!)

 成瀬と二宮も空気を読んで知らんぷりをしてくれている。

「挙手はないようだね。どうやら、いけないことをしたという自覚はあるようだ。やむを得ない、力ずくで探させてもらうよ」

 理事長が合図を送ると、緑色の髪をした超能力者が生徒を見て回り始めた。

「九重さん……まずいかもしれません……」

「えっ……?」

「緑髪の彼女は【弥生やよい 心乃ここの】という名で、【生命の次元】の超能力者だ。噂によると、人の心が正確に読めるらしい……」

「なんだって……!?」

 ということは、彼女が見て回っているのは俺達の心……! そんなの見られたら、一発でばれてしまう……!!

 ザッ……ザッ……

 俺達の番が近づいてくる。

 ザッ……ザッ……

 ついに、俺の番。

「…………」

 弥生は、緑色の瞳で、俺の顔をじっと見つめる。

(無心……無心だ……! 俺はやっていない……やっていない……)

 弥生は一瞬不思議そうな顔をしたが、次の人へと移った。

(危ねえ……なんとかばれなかったか……)

 そして、成瀬や二宮に順番が回ってくる。
 しかし、なんとかそれも無事に乗り切ることができた。

 弥生心乃による監査が終わる。そして、理事長に耳打ち。

「……どういうわけか、ここに当の本人はいないようだ。明日、改めて全校集会を開くことにしよう。今日は解散、生徒の諸君はゆっくりと休みなさい」

 理事長が校舎へと去っていった。

「はあ……心臓が止まるかと思いましたよ……」

「ふう、何とか乗り切れたな」

「だが、どうしてバレなかったんだろう……」

「もしかしたら、弥生は次元を伝って心を読んでいるから、次元を修復してしまう九重の心は読めなかったんじゃないか?」

「ああ、そうか。よかった……」

 とにもかくにもなんとか捕まらずに済んだので、正門を出て寮へ帰ろうとした。
 すると、一番会いたかった懐かしい影が迎えに来てくれた。

「糸!! お久しぶりですわ!!」

「雪夜!!! お腹はもう大丈夫なのか?」

「はい、おかげさまで。また貴方に救われてしまいましたわ。本当に……本当にありがとうございました……。……えっと、そちらの方々は……」

「二宮と成瀬だよ。雪夜が外に出た後、俺と一緒に戦ってくれたんだ」

「こんにちは!」

「よろしく」

「こちらこそよろしくお願いしますわ」

「全く……出てくるのが遅いのよ」

「苺……!! 雪夜を助けてくれてありがとうな……」

「フン、当たり前でしょ」

 俺達をはじめ、正門では色んな人達が再会したり、地下世界で裏切られて先に外へ出た相手への復讐など、様々なシーンが見られた。

 そんな人だかりの中、とある男が歩み寄ってきた。

「苺、彼が言っていた九重くんかい?」

「ええ、そうだけど……なんの用?」

 なんと、先ほど全校集会で前に立っていた赤髪の男だ。確か、入学式でも祝辞をしていたような……。

「えっと……あなたは……?」

「申し遅れたね。僕は【千陽ちよう 朝日あさひ】、この学校の生徒会長だよ。そして、【エネルギーの次元】の超能力者でもある」

「何よかっこつけちゃって」

「千陽? まさかこの人は苺の……」

「そ、兄貴」

「九重くんの話は苺からよく聞いていたよ」

「は、はァ!? 別に何にも言ってないわよ!!」

「ふふ。さて、すまないが、ちょっと九重くんと2人でお話をしたいんだ。君たちは少し外してもらえるかな?」

「いいえ。どうしてもと言うのなら私もご一緒します」

 間髪入れずに雪夜が止めた。

「君は……ひょっとして【闇の次元】の超能力者かい? 青くて綺麗なマナをしているね……面白い。いいだろう、2人ともついておいで」

 俺は話と言われて嫌な予感がした。そして、その予感がしたのは雪夜も、そして二宮と成瀬もだ。

「あの! 私もお話聞きたいです! 千陽さんの大ファンなんです!」

「俺も! 超能力者の話が聞きてえ!!」

 分かり易い嘘をついて、2人も話に入ろうとする。

「…………まあいいよ。君たちも関係がないわけじゃなさそうだしね」

「私は……」

「苺はダメ」

「チッ! このクソ兄貴!!」

 というわけで、苺以外の4人は朝日さんとお話をすることになった。
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