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第1章・滅びゆく世界

性のレッスン

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バスルームは小さなプールと言ってもいいほどに広かった。
律はシャワーの温度を見ている。
お互いに裸だった。
恥ずかしくて目を伏せる。
一緒にプールに行ったり、風呂に入ることだってあったし、裸を見ることだってあったのに、あの頃と今では全然意味が違ってた。
「何してる」
律は動じてない。
「言っただろ、昨日、お前の中の処理をしたのは俺だって。今更恥ずかしがる必要なんてない」
顔を上げた。律の姿が目に飛び込んできた。
長い手足に、細いけれど引き締まった体。なぜだろう、妙に艶かしく見えて、見てはいけないものを見てしまったような気がした。
「それ……」
臍の下——茂みの上に、小さな赤い薔薇の模様が見える。
刺青だ、すぐにわかった。
律は何を見ているのか気づいたのか、指でそこをなぞる。
「レナードの所有物の証。香澄もそのうち彫られる」
「……律、も」
「なに」
「アイツと……?」
「……そうだよ。こっちに来たその日に犯された」
おいで、律が手招きする。
言われるがままに近づくと、律は俺の手に少しだけお湯をかける。
「熱い?」
「大丈夫……」
律は頷いて、俺の体にシャワーを浴びせ始める。
「自分でできるよ」
「いいから」
備え付けられているボトルはボディソープらしい。スポンジにたっぷりつけて泡立てると、律は俺の体を洗い始めた。
「律……どうしてここに?」
「……香澄も見つけたんだろ? あの本」
「うん」
「あの日、ずっとあの場所にいようと思った」
「え……」
「帰りたくなかったから」
胸が小さく痛む。それは、俺が拒絶したからに他ならない。
「目を閉じて、眠ろうとして……次に目を開けたら、あの本が踊り場に落ちてた」
「え……」
「本を開いたら、こっちの世界に来た」
そっち向いて、律に言われるがまま背中を向ける。
「その時はすぐに帰れた。この場所じゃなくて、建物の外に来たから。それに、あの本をちゃんと持ってきてた。もう一度開いたら、学校に戻った」
「じゃあ、本があれば戻れるってこと?」
スポンジは優しく背中を撫でる。
「家に帰った。母さんたちはまだ帰ってきてなかった。この本が見つかったらまずいと思って、」
「カバー、替えた?」
「そう。それでもう一度開いた。今度は、この建物の中にきた。本を持ってなかった。衝撃で落としたから。失敗した」
スポンジが下半身に移動する。
円を描くように臀部を撫でる。
「香澄、お前も、本を持ってきてなかった」
「そ、れ、じゃあ……」
あの本が元の世界とここを繋ぐ鍵だとして。
その本が今この世界に存在しないのだとしたら、それはつまり——。
「ここの人間にレナードの元に連れてこられた。その場で犯された」
臀部を開かれる。
律の指が、そこをなぞる。
思わず壁に手をついた。
「り、つ、」
「中をきれいにしておかないといけないから。我慢して」
「あっ」
指が入ってくる。
すぐに奥まで突っ込まれて、俺は目を閉じた。
「624人」
「え……?」
指が前後する。
生々しい感触がたまらない。
「624人。ここに来て、相手にした男の人数」
眩暈がしそうだった。
「香澄。お前もこれから、いろんな男を相手にしなきゃいけない」
「な、ん、で……」
「そのうちわかるよ。それが、必要だから」
「あ!」
生温かい感覚。
お湯が入ってくる。
「我慢して」
「……っ」
「本がない時点で、俺たちは諦めなきゃいけない。香澄、バカだな。あんな本、開いちゃいけなかった」
頭がぐらぐらする。
立っているのがやっとだった。
壁に手をついて必死に耐える。
崩れ落ちそうになるのを堪えていると、自然と腰を突き出した姿勢になる。
お湯がどんどん入ってくる。
どんどん、どんどん……。
お腹がいっぱいになる。
排泄に似た欲求が高まってくる。
「律、もうやだ、やめて、」
「もう少し……今度は自分でやるんだよ」
溢れる、そう思った。
唇を噛み締めても呻きが漏れてしまう。
「んん、んん……やだ、やだ……っ」
「もういいよ」
頭を撫でられた。
瞬間、堰き止められていたそこが解放される。
「く、うぅう……っ」
勢いよくお湯が吐き出される。
息ができない。
すっかり吐き出すまで、俺は必死に両足を突っ張った。
「あ、あ……」
出し尽くすと、今度こそ立っていられずにへたり込む。
頭からお湯が降ってくる。
「いい子だね、香澄」
体を起こす。
お湯が止んで目を開けると、律が俺を見下ろしていた。
「咥えて」
裸の律の茂みに、屹立したものが見える。
「……聞こえなかった?」
「あ……」
「練習させておけって言われてる。いくら慣れてない人間が好きだって言っても、初めてで歯でも立てられたら大変だから」
こんなふうに律のものを見るのは生まれて初めてだった。
レナードのもののように凶悪な感じじゃない。不思議と嫌悪感もなかった。
「口、開けて。ちゃんと射精させることができたら終わり」
どうしてこんなことをしてるのだろう。
わからない。
俺はのろのろと膝を立てた。
「慣れてくれば、さっさとイカせるにはどうしたらいいかコツが掴めるから」
こんな話をするために、律に会いたかったんじゃないのに。
「早く」
唇を開いた。
瞬間、律が俺の後ろ髪を掴んだ。
「んぐ……っ」
一気に喉奥まで突き入れられる。
えづきそうになるのを堪えて、必死で鼻で息をする。
「舌を使って」
ちゃんとやらなきゃ、と思った。
言われるがままに舌でそれをなぞる。
「唇で挟んで」
髪を掴まれて、顔を前後させられる。
涙が溢れてくる。
「そう、うまいよ」
律の息遣いが熱を帯びたものになる。
感じてるんだ、それがわかった。
「先端、舌で舐めて」
言われた通りにする。
独特の味がする液体が溢れてくる。
舐めとるように舌を這わせると、律が低い呻きを漏らす。
「手で握って、舌、使って」
唇を離してそれを握り込むと、言われた通りに全体を舌で舐め上げる。
血液が脈打つのがわかる。
どんどん固くなっていく。
律は、こういうことしないんだって思ってた。
律は、きれいだったから。
俺と違って、こんなふうに欲望を感じないんだって——。
「口の中に出されたら、ちゃんと全部飲むこと」
頷くと、律は優しい手つきで髪を撫でた。
「じゃあ、行くよ」
「……んぅっ!」
再び喉奥まで突っ込まれる。
今度は容赦なかった。
息ができないほどに激しく前後される。
涙で視界がぼやける。
苦しかった。
えづきそうになるのを必死に堪える。
律の足を掴む手に力がこもる。
「香澄、出すよ」
「ん、ぐ、んん、ん、」
「く……っ、う……っ!」
「……!」
喉奥に液体がぶちまけられる。
粘り気のある液体。
独特の匂い。
俺は必死に嚥下する。
口内のものはみるみるうちに柔らかく萎えていく。
「ちゃんと飲んだ? 口、開けて」
言われるがままに口を開く。
「うん、偉いよ。じゃあ、きちんと綺麗にして」
萎えて柔らかくなったそれの残滓を舐めとっていく。
「……いい子だね」
見上げると、律は優しい顔で俺を見ていた。
かつて、当たり前に毎日見ていた親友の顔だった。






















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