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うつつ1
二
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ひかりは、お気に入りのWEB小説が完結してしまう前に、次の楽しみを探すことにした。いくつも本棚に入れて読んでいるが、特別楽しみな作品は数作しかない。今のうちに次のお気に入りをみつけておきたかった。
偶然、大学の実験室が舞台の小説をみつけた。恋愛小説のカテゴリにあり、閲覧制限がついている。まだ始まったばかりだが『教授の実験室』というタイトルに興味をひかれた。
先生と呼ばれている男性が、どんな見た目なのかはまだわからない。
寡黙なタイプと書かれている割には、今のところ良くしゃべる。ひとまず、しおりをつける。主人公は、研究員の女性だった。
ひかりは、就職したことがなかった。働く女性の話はいろいろな面で驚きもあり楽しめる。
小説の主人公が思いを寄せている教授は頭脳明晰な上に見目も麗しいはずだ。和明は、目を引くような容姿はしていない。しかし、ひかりには特別なオーラが感じられた。
小説に書いてあったように、明確な理由のない感情の方が、強い。
和明を知るきっかけになった幼なじみの喜多川亮とはずっと『友達以上恋人未満』だった。和明と出会わなければ、そのまま続いていたはずだ。「お互い一人だし、結婚する?」と言われたら、断らなかったかもしれない。
和明にのめり込んでいくひかりに対して、亮は何度も「やめておけ」と言った。
ひかりがこうなってしまうと予想していたのかはわからない。
現状は満たされてはいない。ただ不幸せかというとそうでもない。ひかりは和明の特別な存在であることには満足していた。その立場を手放したくはない。
子供がいれば、違ったかもしれない。
和明がかわるとは思えなかった。何かをかえなければ、死ぬまでこの生活が続いてしまうと、ひかりは時折不安にかられる。
ただ、外へ出る勇気はなかった。
しばらくは、WEB小説で現実逃避をつづけるしかなさそうだ。
いろいろな話を読んだ。
何年も同棲した恋人に一方的な別れを告げられれば、すぐに、もっといい男に見初められる。職業や、年齢や、その辺りに変化があるだけで、このパターンが多い。よりステータスの高い男が言い寄ってくれば、数年の思いも簡単に覆される。
同棲相手を捨てた男の方も同じように条件の良い女に移っただけだ。
極自然な流れの中、主人公を見初める男だけが摂理から外れている。
ありえない現象だと思いながら、その世界に浸る。
WEB小説に現実はいらない。
現実にはもう、うんざりしているのだから。
偶然、大学の実験室が舞台の小説をみつけた。恋愛小説のカテゴリにあり、閲覧制限がついている。まだ始まったばかりだが『教授の実験室』というタイトルに興味をひかれた。
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ただ、外へ出る勇気はなかった。
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