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うつつ3
二
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亮には、そのままリビングでくつろいでもらうことにした。
ひかりはとにかく一人になりたかった。寝室に入る。
自分のベッドの端に腰かけた。和明のベッドをみて、どう寝具を貸す気なのかを考える。今は真冬で、床に寝るなんてことはできない。来客用の寝具は用意できていない。まさか、このベッドを貸す気ではと不安がよぎった。
一人になっても落ち着かず、ひかりはスマホを出して、WEB小説をひらいた。数ページ読み進む。
ひかりは主人公に、共感できずにいた。ただ、主要人物のひとり『奥村』は気に入っている。教授が、夫婦の夜の生活を記録しているのは、かなり悪趣味だ。大学の研究員がどういう形態で雇われているかは知らない。転職はできないのだろうか。主人公は教授と研究が続けたいと言っているのだから、受け入れるよりないのかもしれない。それでも、好きでもない男に体を触られるなんて、我慢できるはずがない。ひかりはそう思うのだ。
ひかりは、和明しか知らなかった。さすがに和明の方は、ひかりより十歳も上なので経験があったとは思っている。
中学高校とひかりのそばにはいつも亮がいた。周りは当然二人がそのうち付き合うだろうと思っていたらしい。
女子大に進んだ後も、亮とは変わらず仲が良かった。誰とも付き合うことなく、和明を見つけたのだ。
ひかりは和明を手に入れたくてとにかく必死だった。初めての時ひかりから誘った。それも、かなり大胆な方法で。その当時、和明が住んでいた大学の独身寮へ帰るのを、こっそりつけていったのだ。部屋の鍵を開けたところで、亮が悩んでいるというような適当な嘘をついて、家に入れてもらった。誘惑するつもりだったので、胸元を強調する服をわざわざ着ていった。
和明は女の扱いに慣れていないから、ひかりを追い返すこともできずに、ただ困った顔をしていた。ひかりの方もうまく立ち回れずに、和明が出してくれたコーヒーをすすりながら、ほとんどしゃべれずにいた。しばらくするとひかりの携帯電話に亮から電話が入ったのだ。ひかりが出ずにいると「喜多川君からか?」と訊かれた。
「喜多川君がいるのに、どうしてこんなことをするんだ?」
その問いにひかりは「桐野さんのことが好きだから」と返した。
それまでも、機会を見つけては、気があることをアピールしてきた。その時は、亮に遠慮をして、手を出してこなかったのだと思った。しかし、実際は違った。和明は、その行為自体にそれほど関心がないと、ひかりは気づいた。それでも、数回で妊娠した。
思えば、和明はなぜ避妊しなかったのだろう。単に持っていなかっただけかもしれない。刹那の衝動にかられ、ひかりと関係を結んだ。和明にしてみれば数度の過ちの末、今がある。和明は別に、子供も欲しくなかったのだろう。だからといって、流れても別れようとは言われなかった。
研究ができているから、その辺りは受け入れてくれている。
ひかりは、和明の生活面を支える立場につけたのだ。多くを望んではいけないと知っている。しかし、ただでさえ少ない和明と会話する時間を亮に取られてしまう。一方で、今日は亮がいるおかげで和明が早く帰ってくる。
ひかりは、腕によりをかけて夕食を作ろうと思った。
ひかりはとにかく一人になりたかった。寝室に入る。
自分のベッドの端に腰かけた。和明のベッドをみて、どう寝具を貸す気なのかを考える。今は真冬で、床に寝るなんてことはできない。来客用の寝具は用意できていない。まさか、このベッドを貸す気ではと不安がよぎった。
一人になっても落ち着かず、ひかりはスマホを出して、WEB小説をひらいた。数ページ読み進む。
ひかりは主人公に、共感できずにいた。ただ、主要人物のひとり『奥村』は気に入っている。教授が、夫婦の夜の生活を記録しているのは、かなり悪趣味だ。大学の研究員がどういう形態で雇われているかは知らない。転職はできないのだろうか。主人公は教授と研究が続けたいと言っているのだから、受け入れるよりないのかもしれない。それでも、好きでもない男に体を触られるなんて、我慢できるはずがない。ひかりはそう思うのだ。
ひかりは、和明しか知らなかった。さすがに和明の方は、ひかりより十歳も上なので経験があったとは思っている。
中学高校とひかりのそばにはいつも亮がいた。周りは当然二人がそのうち付き合うだろうと思っていたらしい。
女子大に進んだ後も、亮とは変わらず仲が良かった。誰とも付き合うことなく、和明を見つけたのだ。
ひかりは和明を手に入れたくてとにかく必死だった。初めての時ひかりから誘った。それも、かなり大胆な方法で。その当時、和明が住んでいた大学の独身寮へ帰るのを、こっそりつけていったのだ。部屋の鍵を開けたところで、亮が悩んでいるというような適当な嘘をついて、家に入れてもらった。誘惑するつもりだったので、胸元を強調する服をわざわざ着ていった。
和明は女の扱いに慣れていないから、ひかりを追い返すこともできずに、ただ困った顔をしていた。ひかりの方もうまく立ち回れずに、和明が出してくれたコーヒーをすすりながら、ほとんどしゃべれずにいた。しばらくするとひかりの携帯電話に亮から電話が入ったのだ。ひかりが出ずにいると「喜多川君からか?」と訊かれた。
「喜多川君がいるのに、どうしてこんなことをするんだ?」
その問いにひかりは「桐野さんのことが好きだから」と返した。
それまでも、機会を見つけては、気があることをアピールしてきた。その時は、亮に遠慮をして、手を出してこなかったのだと思った。しかし、実際は違った。和明は、その行為自体にそれほど関心がないと、ひかりは気づいた。それでも、数回で妊娠した。
思えば、和明はなぜ避妊しなかったのだろう。単に持っていなかっただけかもしれない。刹那の衝動にかられ、ひかりと関係を結んだ。和明にしてみれば数度の過ちの末、今がある。和明は別に、子供も欲しくなかったのだろう。だからといって、流れても別れようとは言われなかった。
研究ができているから、その辺りは受け入れてくれている。
ひかりは、和明の生活面を支える立場につけたのだ。多くを望んではいけないと知っている。しかし、ただでさえ少ない和明と会話する時間を亮に取られてしまう。一方で、今日は亮がいるおかげで和明が早く帰ってくる。
ひかりは、腕によりをかけて夕食を作ろうと思った。
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