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うつつ3
三
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和明に食べたいものを訊ねると、よくうどんと返ってくる。
亮はハンバーグが好きだった。早速足りない材料を買いに出ることにした。
リビングに出ると、亮がソファの上で寝ていた。ひかりは、風邪を引かないかと心配になり、毛布をかけた。
起きたとき、いないことに驚かないよう、簡単な手紙を書いておくことにした。亮が寝返りを打つ。毛布がめくれたので、ひかりはかけ直そうと手を伸ばした。いきなり亮に手を掴まれた。引き寄せられ、体のうえに倒れ込む。抱きしめられた。
「放して」
「えっ? ああ、ごめん寝ぼけて……」
亮から、すぐに解放されたけれど、力強い腕の感覚が残っている。
「買い物に行くから」
ひかりは、慌てて亮から離れた。
「俺も行く」
亮が起き上がった。
二人で買い物へ行くことになった。
マンションを出て大学とは反対の方向へ十分ほど歩くと食料品だけのスーパーがある。途中、鬱蒼と木の生い茂る学生寮がある。古めかしい木造二階建ての建物が少しだけ覗ける。私は、この通りが苦手だった。
「ハンバーグにしようと思って」
亮に話しかけた。
「まじか! 嬉しいなあ」
心なしか亮の足取りが軽くなったようにみえる。
「和風でいい?」
「煮込みがいい」
和明は早いといっても八時をまわるだろう。時間には余裕がある。
「わかった」
「泊まるのどうかと思ったけど、よかった」
亮はかなり喜んでくれている。
スーパーにたどり着いた。精肉コーナーのそばで、ウインナーの試食があっていた。爪楊枝に刺さったかけらを受け取る。
「ご主人もどうぞ」
訂正しようとしたが、亮は何食わぬ顔で受け取っていた。
挽き肉や玉ねぎ、ビールを数本買った。荷物は亮が持った。
帰ってすぐにひかりは調理に取りかかった。亮がキッチンに入ってきた。
「手伝うよ」
せっかくなので、野菜を洗ってもらうことにした。
亮が水道レバーをあげすぎて、玉葱が水をはじいた。ひかりにまでかかった。
「ごめんごめん」
「もう、じゃま!」
「大丈夫! もうちゃんとできる」
ひかりは、食事の用意で笑ったことなどなかった。亮に、手伝ってもらえることがなくなった後も、気になるのかそわそわと覗きに来た。
「気がちるから」と言うと「いい匂いにつられて」と笑う。
ひかりが、和明と出会う前までの、関係に戻れた気がした。
おどける亮をみて笑っている最中に和明が帰ってきた。リビングに入ってくるまで気が付かなかった。
「たのしそうだね」
コートを受け取るために駆け寄る。
「すぐに、食事にします」
和明は微笑みながら頷いた。
亮はハンバーグが好きだった。早速足りない材料を買いに出ることにした。
リビングに出ると、亮がソファの上で寝ていた。ひかりは、風邪を引かないかと心配になり、毛布をかけた。
起きたとき、いないことに驚かないよう、簡単な手紙を書いておくことにした。亮が寝返りを打つ。毛布がめくれたので、ひかりはかけ直そうと手を伸ばした。いきなり亮に手を掴まれた。引き寄せられ、体のうえに倒れ込む。抱きしめられた。
「放して」
「えっ? ああ、ごめん寝ぼけて……」
亮から、すぐに解放されたけれど、力強い腕の感覚が残っている。
「買い物に行くから」
ひかりは、慌てて亮から離れた。
「俺も行く」
亮が起き上がった。
二人で買い物へ行くことになった。
マンションを出て大学とは反対の方向へ十分ほど歩くと食料品だけのスーパーがある。途中、鬱蒼と木の生い茂る学生寮がある。古めかしい木造二階建ての建物が少しだけ覗ける。私は、この通りが苦手だった。
「ハンバーグにしようと思って」
亮に話しかけた。
「まじか! 嬉しいなあ」
心なしか亮の足取りが軽くなったようにみえる。
「和風でいい?」
「煮込みがいい」
和明は早いといっても八時をまわるだろう。時間には余裕がある。
「わかった」
「泊まるのどうかと思ったけど、よかった」
亮はかなり喜んでくれている。
スーパーにたどり着いた。精肉コーナーのそばで、ウインナーの試食があっていた。爪楊枝に刺さったかけらを受け取る。
「ご主人もどうぞ」
訂正しようとしたが、亮は何食わぬ顔で受け取っていた。
挽き肉や玉ねぎ、ビールを数本買った。荷物は亮が持った。
帰ってすぐにひかりは調理に取りかかった。亮がキッチンに入ってきた。
「手伝うよ」
せっかくなので、野菜を洗ってもらうことにした。
亮が水道レバーをあげすぎて、玉葱が水をはじいた。ひかりにまでかかった。
「ごめんごめん」
「もう、じゃま!」
「大丈夫! もうちゃんとできる」
ひかりは、食事の用意で笑ったことなどなかった。亮に、手伝ってもらえることがなくなった後も、気になるのかそわそわと覗きに来た。
「気がちるから」と言うと「いい匂いにつられて」と笑う。
ひかりが、和明と出会う前までの、関係に戻れた気がした。
おどける亮をみて笑っている最中に和明が帰ってきた。リビングに入ってくるまで気が付かなかった。
「たのしそうだね」
コートを受け取るために駆け寄る。
「すぐに、食事にします」
和明は微笑みながら頷いた。
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