感じさせて……。

紫倉 紫

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ゆめ4

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「津山です。教授から、野田さんを手伝うように言われたので、今日からよろしくお願いします」
 きいていなかった。
 私には手伝ってもらうほどの役割はない。
「一日の流れを教えてください」
 首を傾げながら、笑顔をみせる。
 大人しげな見た目のわりに軽そうな雰囲気だった。正直苦手なタイプだった。
「データを見せてください」
 津山さんが紙をもつ私の手に触れた。思わず紙を落としてしまった。
 足下で紙が大げさな音を立てた。慌ててしゃがんだ。繋がっているので順番はいれかわらない。
 整えて顔を上げる。津山さんと目があった。薄笑いを浮かべて私を見おろしていた。
 奥村さんが近づいてくるのが視界に入った。
 津山さんと私を交互に見て、不機嫌そうな顔をした。慌てて立ち上がる。
「すみません。落としてしまって」
 手のひらで紙を払った。
「ああ、それは別に……」
 奥村さんの個室に呼ばれた。
 私は、データを津山さんに渡してついていく。
 部屋に入るなり「お前、その服はダメだ」と言われた。
「胸の谷間丸見えだった」
 津山さんの表情に納得した。自分ではなかなか気づけない。研究室での服装にはふさわしくないかもしれない。
「聞いたか? 津山に引き継ぐの」
「引き継ぎですか?」
 手伝いと言われただけなのに、ショックだった。 
「教授の気まぐれだ。お前が掛け持ちになるから補佐が必要だと判断したらしい」
「夜の実験との掛け持ちでですか?」
 奥村さんが首を横に振る。
「お前は、俺が出張の時ついて来られるように、俺の秘書のような役割と兼務にするらしい」
 朝会ったとき、そんなことは言われていない。
「来月の頭に長期出張が入っていて、その間、研修は中断するつもりでいたんだが、教授がどうしても急ぎですすめたいらしい」
 奥村さんに承諾が得られてからの決定だったようだ。
「津山は、卒業後も研究員として残るだろうから、まあ、見習いのようなものだ」
 津山さんが私のところにいるのは、研修中だけだろうか。
 あの人は、あまり好きではない。
 奥村さんのことも、相当苦手だったけれど、話してみればそうでもなかった。
 一緒に作業をしているうちになれるだろうか。
「露出は抑えめにしとけよ」
 私は、白衣の胸元を合わせた。
「今日は弁当ないだろ」
 朝、奥村さんと話していて、時間がなくなった。
「昼飯の時、声をかける」
「はあ」
「俺の秘書に昇格だから、祝ってやるよ」
 昇格じゃない。
「学食で好きなものを頼んでいいからな」
 学食なら遠慮せずにすむ。
 12時すぎると混むので、早めに呼びに行くと言われた。
 研究室へ戻る。
 津山さんはデータを見終わったようだ。つづっておくファイルを教えた。
「奥村先生の助手を兼務されるんですね」
 津山さんに訊かれた。
 秘書ではなく助手なのかと、一瞬納得しかけた。
「私は、まだ正式にはきいてないの」
 教授から聞くまでは実際どうなのかわからない。
 私が温度管理を任されてる機械を説明していく。
 津山さんは熱心なのはいいが、いちいちのぞき込んきて本当に距離が近い。さりげなく離れてもすぐ詰めてくる。
 なんとか、機械については説明が終わった。
 ちょうど奥村さんが迎えに来た。
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