感じさせて……。

紫倉 紫

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ゆめ4

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 奥村さんとの会話はいまいちかみ合わないが、料理はとにかく美味しいので、連れてきてもらえて良かった。
「お前、うまそうに食べるなあ」
 指摘された。
「そりゃ、美味しいですから」
「俺は、あまりこういうのは好きではないが……非効率だろうこういう食事は」
 そう言われると否定しようがない。
「私は、盛り付けも綺麗だし、美味しいし、なんだか……幸せですけど」
 奥村さんが、急に口をかたく結んで、複雑な顔をした。変なことを言ってしまったのかもしれない。
「すみません」
 とにかく謝っておく。
 奥村さんは体の前で右手を振って「かまわない」と言ったあとで、グラスの水を一気に飲み干した。
 それからは、奥村さんが話しかけてこなくなったので、ただひたすら料理を堪能できた。
 奥村さんの、ナイフを持つ手が目に入った。
 今まで気にしたことはなかったが、綺麗な指をしている。ついみいってしまった。
「なんだ?」
 気づかれてしまった。
「上手に切るなあと……」
「ああ、外科志望だったからな」
 奥村さんがメスを握る姿を想像する。似合いすぎると思った。
 どうして、教授のところに来ているのか、よく知らない。
 いつからだったかも、はっきり思い出せない。
 だいたい、今、いくつなのかもまだ知らなかった。
 会計のあと、改めてお礼を言う。
「ああ、弁当代の前払いも兼ねてるからな」
「お弁当、いるんですか?」
 明日からは作るつもりでいたが、奥村さんの分は予定していなかった。
「弁当があれば、昼に何を食べるか考えたり、食堂の混み具合を気にする必要もないからな。自室で食べれば移動もいらない。効率がいいと気づいた」
 私がお弁当をつくる理由はそこではないが、確かにそうかもしれない。
 ただ、私は、お弁当のおかずに気を遣わなければならなくなる。
 好き嫌いはないと言っていた。
「量はどのくらいいります?」
「炭水化物がある程度あれば後は、どうでも」
「お弁当箱は持っていますか?」
 奥村さんは腕組みをしてしばらく考えていた。
「多分、保存用の密閉容器がいろんな大きさであったはずだ」
 私は、頷いた。
「しばらくは、それでどうにかします。休みの日に、買っておきますね」
「俺も休みだから一緒に行く」
 ひとけの多いところへいくと、学生たちに目撃されそうな気がした。 
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