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ゆめ5
一
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家に帰って、奥村さんはまずお風呂の用意をした。いつものように、先に入るつもりでいた。奥村さんに止められる。
「今日の分の教授の記録は……」
私は、お風呂に入ってはいけないのかと思った。
「『一緒に風呂に入った』で始まる」
私は、持っていた着替えを落としてしまった。
ショックすぎて、足下にちらばった下着類を拾う気も起きない。
「教授が腕をけがしたことがあるだろう」
覚えている。腕を白い布でつっていた。二週間ほどだった気がする。
「まさか、治るまで……」
「当然そうだ」
けがをしていた間に何回したんだろう。
女性しかいない温泉でも抵抗があるのに。
「俺もなあ、体を洗われるのには抵抗を感じる」
洗うのか、私が……。
その場に座り込んでしまった。
「恥ずかしく思うのは、最初の一回だけだってすぐ慣れる」
やっぱり何度も入るんだ。
腕を引き上げられ、そのままバスルームまで連れて行かれた。
少し気が楽になった。
「先に中に、入っておく。どうせ見えないんだからそのまま入って来いよ」
脱衣スペースで一人になる。
奥村さんのメガネを取ってみてみる。度がきつい。安心した。
裸になり中に入った。奥村さんは、こちらを向いて座って待っていた。腰の辺りにはタオルがかけてある。
見えていないと言われていても、腕で、一応は隠している。
奥村さんの正面に座る。お湯をはった洗面器と、スポンジ、ボディソープを渡された。
ひとまず、スポンジで泡立てる。すぐに両手が隠れるほど泡があふれた。
「どこから洗う?」
「腕から……」
「そういうと思った」
奥村さんは右腕を私の方へ差し出した。
左手で手をとる。甲にスポンジをこすりつける。痩せているのに、腕も、こうやって間近にみると、私よりはずっと太い。付け根の手前でやめて、奥村さんの膝の上に手を置いた。
「反対の手を出してください」
「おかわりか」
私は頷いて、手のひらを上にむけて見せた。奥村さんが手を乗せてきた。同じようにこすっていく。
次、どこにしようかと迷う。
首に手をのばす。奥村さんは少し顎をあげてくれた。
「お前……本当に真面目だなあ」
喉仏が動いた。指先から振動が伝わる。
「そうですか?」
「そんなに真剣に磨かなくても……どうせ、今日は四回も風呂に入るからなあ。その調子じゃ朝までかかる」
「え……」
「二週に一回の教授が、腕を怪我している間だけ、毎日のように……まああれだ……奉仕をな」
体を洗わされるのか。
「このくらいなら……大丈夫です」
奥村さんはなぜかため息をついた。
「髪を、先に」
まだ腕と首しか洗っていなかったけれど、髪の方が気楽なので言われるとおりにする。
手桶でお湯をとる。膝立ちになって、奥村さんの髪を濡らす。
癖のないまっすぐな髪が濡れて、光っている。
人の髪を洗うのは、結構難しい。泡は立つけれど、ちゃんと洗えているのかわからない。
「どこかかゆいところはないですか?」
奥村さんが返事をしない。もう一度訊いた。
「ん? ああ、まあ、別にない」
「気持ち良くって寝てたんですか?」
「寝るわけないだろ」
もう良さそうなので、流すことにした。うつむいてもらう。
「目を閉じといてくださいね」
「ん」
「今日の分の教授の記録は……」
私は、お風呂に入ってはいけないのかと思った。
「『一緒に風呂に入った』で始まる」
私は、持っていた着替えを落としてしまった。
ショックすぎて、足下にちらばった下着類を拾う気も起きない。
「教授が腕をけがしたことがあるだろう」
覚えている。腕を白い布でつっていた。二週間ほどだった気がする。
「まさか、治るまで……」
「当然そうだ」
けがをしていた間に何回したんだろう。
女性しかいない温泉でも抵抗があるのに。
「俺もなあ、体を洗われるのには抵抗を感じる」
洗うのか、私が……。
その場に座り込んでしまった。
「恥ずかしく思うのは、最初の一回だけだってすぐ慣れる」
やっぱり何度も入るんだ。
腕を引き上げられ、そのままバスルームまで連れて行かれた。
少し気が楽になった。
「先に中に、入っておく。どうせ見えないんだからそのまま入って来いよ」
脱衣スペースで一人になる。
奥村さんのメガネを取ってみてみる。度がきつい。安心した。
裸になり中に入った。奥村さんは、こちらを向いて座って待っていた。腰の辺りにはタオルがかけてある。
見えていないと言われていても、腕で、一応は隠している。
奥村さんの正面に座る。お湯をはった洗面器と、スポンジ、ボディソープを渡された。
ひとまず、スポンジで泡立てる。すぐに両手が隠れるほど泡があふれた。
「どこから洗う?」
「腕から……」
「そういうと思った」
奥村さんは右腕を私の方へ差し出した。
左手で手をとる。甲にスポンジをこすりつける。痩せているのに、腕も、こうやって間近にみると、私よりはずっと太い。付け根の手前でやめて、奥村さんの膝の上に手を置いた。
「反対の手を出してください」
「おかわりか」
私は頷いて、手のひらを上にむけて見せた。奥村さんが手を乗せてきた。同じようにこすっていく。
次、どこにしようかと迷う。
首に手をのばす。奥村さんは少し顎をあげてくれた。
「お前……本当に真面目だなあ」
喉仏が動いた。指先から振動が伝わる。
「そうですか?」
「そんなに真剣に磨かなくても……どうせ、今日は四回も風呂に入るからなあ。その調子じゃ朝までかかる」
「え……」
「二週に一回の教授が、腕を怪我している間だけ、毎日のように……まああれだ……奉仕をな」
体を洗わされるのか。
「このくらいなら……大丈夫です」
奥村さんはなぜかため息をついた。
「髪を、先に」
まだ腕と首しか洗っていなかったけれど、髪の方が気楽なので言われるとおりにする。
手桶でお湯をとる。膝立ちになって、奥村さんの髪を濡らす。
癖のないまっすぐな髪が濡れて、光っている。
人の髪を洗うのは、結構難しい。泡は立つけれど、ちゃんと洗えているのかわからない。
「どこかかゆいところはないですか?」
奥村さんが返事をしない。もう一度訊いた。
「ん? ああ、まあ、別にない」
「気持ち良くって寝てたんですか?」
「寝るわけないだろ」
もう良さそうなので、流すことにした。うつむいてもらう。
「目を閉じといてくださいね」
「ん」
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