感じさせて……。

紫倉 紫

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ゆめ5

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 目を開ける。奥村さんの目が思っていたより近くにあった。
 見てしまうと、余計に恥ずかしさがこみ上げた。
 そらす前に、一度、きつく吸われた。
 声が漏れる。
 奥村さんは先端に、下の歯を当てたままで「眼鏡」と言った。
「外したら良いんですか」
 奥村さんが、ゆっくりと目を閉じた。
 自由な左手で眼鏡を外した。柄が曲がらないように、慎重に抜き取る。
 テーブルに置いた。
 奥村さんは、私の左手を掴むと、自分の背中に回すように仕向けた。
 奥村さんを抱える形になった。
 
 さっきより、強く顔を押しつけられる。深く含まれた。
 奥村さんが目を閉じている。
 なんだろう。かわいく思える。
 奥村さんは、ほとんど自分の腕で体を支えている。
 右手は添えているだけで、自由に動いた。
 髪に触れて、目を閉じた。
 もうすっかり乾いている。さらっとした手触りで、撫でていて心地よかった。
 しばらくは、変な気分よりも、母性本能が勝っていた。
 だけど、時々、かすかに体を動かしてしまいそうな、感覚が走り出した。
 奥村さんが、もう一方を指先で摘まんだ。
 思わず、奥村さんを強く抱きしめてしまった。
 さっきまで単調だった舌先が、奔放に動き始めた。
 声が、漏れる。
 この間から、そうされることに弱い自覚はあった。
「奥村さん……それは……」
 軽く歯をたてられた。
「あっ」
 吸われるより、ずっと、感じてしまう。
 奥村さんの肩を軽く叩いた。
 目をあけて、奥村さんを見たけれど、気づいてくれない。
 視界に、砂時計が入った。
「待って……砂時計……終わってます」
 奥村さんは、口の動きを止めた。
 体を起こして座り直した。
 砂時計を手に取った。
「ひっくり返すのを忘れていた」
「え?」
「今ので15分経ってるわけないだろ」
「そんな……」
「今度は向こう端に寄って座れ。逆側でやり直しだ」
 奥村さんは立ち上がって私の前に立った。バスタオルを巻いていても、どうなっているか、わかった。男の人の、こういう生理現象には、全然、慣れる気がしない。
 見上げて「これは、奥村さんのミスなんじゃ……」と訴えてみた。
 奥村さんは、不機嫌な顔になり、黙ったまま顎で、移動しろと指示を出してきた。
 仕方なく、今と線対称になる位置に座り直した。
 
 奥村さんは膝枕状態になってから、砂時計をテーブルに置いた。砂が落ち始める。
 奥村さんの首の後ろに左腕を添える。
「頭、撫でてもいいぞ」
「あり……」
 お礼を言いそうになった。
「撫でて欲しいんですか?」
「撫でたいんだろ? お前が」
 確かに撫でたくはなった。
「そうですね……」
 奥村さんが腕を伸ばしてきて、私の頬に触れた。
「お前、こっち側の方が敏感だから、覚悟しとけよ」
 言葉の内容にはそぐわない優しい笑顔を向けられた。
「『赤子に乳を与えるように』とあったから、お前がくわえさせる方がいいかもしれないな」
 奥村さんが、口をあけたままじっとしている。
 与える……
 動けないでいると、奥村さんは、私の胸の先を軽くはじいた後、自分の口を指さした。
 それは、わかっている。
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