感じさせて……。

紫倉 紫

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ゆめ5

十二

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 奥村さんが、振り返って「砂も、半分ほど落ちてる。少しの我慢だ」と言った。
「目をつぶれ、再開するぞ」
 奥村さんが、顔を近づけてきた。
「何、するんですか!」
 動きを止めて、睨みつけてくる。
「俺に、言わせんの?」
 文句の後で、意味のわからないことを言う。
「別に、洗ってくれなくて結構です」
 奥村さんが脚の間で吹き出した。強めにかかった空気にも感じてしまう。
「クリーニングじゃない。笑わせるなって。俺は、教授の記録の通りのことをするだけだ」
 奥村さんも、研修だから仕方ないと、諦めているのだろう。
 私は、観念して、また、両手で顔を覆ってきつく目を閉じた。
 最初は、何か分からなかった。
 柔らかな舌がそっと触れた。
 私は、ただ、奥村さんに申し訳なくて……
 それなのに、体は、私の気分などお構いなしに熱くなっていく。
 奥村さんに触れられている場所に、全ての意識が集まっていく。
 声を抑えようとしても、漏れてしまう。
 さらに強い快感がはしり、脚をつい閉じようとしてしまった。
 奥村さんの髪が、内腿に触れる。
 脚の力を緩めようとしても、うまくできない。
 全身が汗ばんでいる。
 奥村さんが脚の間で頭を振った。
 啜るような音が聞こえた。強く刺激されて、奥村さんの頭を完全に挟んでしまう。
 謝ろうとして口を開けたら、次の快感に襲われ大きく声をあげてしまった。
 前にもあった。
 快感に支配されそうになる感じ……
 体がおかしくなってしまう。
 それなのに、もっと、してほしいと……
 鼓動がはやまる。
 呼吸するたびに、声が……
 もう、抑えられない。
 奥村さんが、動きを止め、体を起こした。
 15分経ったのかもしれない。
 がっかりしている自分を、認めざるをえない。
 目を開け砂時計を見たが、砂はまだ落ちきっていなかった。
「再現において重要なのは、実施時間か、結果か……悩ましいが、結果を取るべき、だな?」
 熱に浮かされたようになっていて、奥村さんの言いたいことがわからない。
「いくのは、今じゃない」
 どこへ行くんだろう。
 奥村さんが、脚を下ろさせてくれた。バスタオルも、整えてくれている。指先が、肌をかすめるだけで、感じる。
「お前の方が、教授の奥さんより感じやすいのかもな……それか俺が……」
 奥村さんが立ち上がった。
「お風呂ですか?」と、尋ね終わる前に唇をふさがれた。
 耳の横を手で、押さえつけられる。舌が唇を割って入ってくる。
 口の中を、掻き回されているようで、私は、息もできずにまた、苦しくなってきた。
 奥村さんの唾液が、流れ込んでくる。
 他人の唾液が冷たいなんて、知らなかった……
 奥村さんが、唇を離した。
「お前にも、味わわせてやろうと思ってな。味、わかったか?」
「味?  冷たいとしか……」
 奥村さんは、つまらなさそうに首を傾げた。眼鏡を外していると、いつもより若く見える。
 奥村さんが少しだけ、舌を出して唇を舐めた。
「お前も舐めてみろ」
 言われたとおり、自分の唇を舐めてみる。
「違う、俺のだ」
 思わず、目を見開く。
「できません……」
 頬が熱くなってきた。
「つべこべ言わずに、舐めてみろって」
 顔を近づけてくる。
 避けようとしたら、手で顔を固定された。
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