感じさせて……。

紫倉 紫

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ゆめ5

十六

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「よだれまで垂らして」
 口を開けっぱなしだったのだから、仕方ない。
「少し、休憩するか……」
 終わりにはしてもらえないようだ。
 奥村さんが湯船に入ってきた。
 引き寄せられ、横をむいた形で包まれる。すっかり腕も胸も冷たくなっている。
 
「冷え切ってますね……」
「そうらしいな……集中していたから気づかなかったが……お前も肩が冷えてる」
 肩に手の平でお湯をかけてくれる。
「次は、教授の記述通りの手順な」
 許してもらえないだろうか。奥村さんの表情を横目で確認した。
「なんだ?」
「しないといけませんか?」
「嫌なのか?」
「苦しかったし……」
 奥村さんが私の頭を撫でた。
「上手くすれば、そう苦しくないんじゃないか?」
 あんなことに、上手くするなんてあるとは思えない。
「あれだけ下手でも、温かくて湿ったものに包まれるのはなかなか良かったからな……すぐ終わる」
 あんなに苦しい思いをしたのに下手呼ばわりだなんてひどい。
「しばらくしなかったら、どうでもよくなっていたが……他人にしてもらうのは、気分的にも全然違う」
 奥村さんが私に回している腕に力を込めた。足にも強めに挟まれた。
 湯船にあごまで沈んだ。
「この後もあるからな、続きをするか」
 頷く気にはなれない。
 奥村さんが、立ち上がる。お湯かさが減ったけれど、飛沫が頬を濡らした。
 私は目を閉じ、正座で座り直した。
 奥村さんは、私の右腕を持ち上げた。
「教授の奥さんの手順通りな」
 握らされる。
 左手も持ち上げられた。
「こっちは包むように」
 異様な手触りに、思わず手を引いてしまった。
「そこもですか?」
 意味もない質問だとわかっていても、せずにはいられない。
「『手のひらの上で転がされているような』とあったからな」
 
 仕方なく手を添えた。こんな手触りのものは、他に知らない。
 転がす……
 確かに、たるんだ皮の中に、球状の物がある。
「こっちは、もっと根元を握るんだ」
 手首を押し下げられた。小指の側面が、ザラついた毛の塊に触れた。
「舌を出して、ソフトクリームを舐める要領で……」
 これなら苦しくはない。だけど、舌にまともにあたってしまう。
 逃れられないのなら、さっさと済ませた方がましな気はする。膝立ちになって、舌を出した。
 握って押さえているのに、前後に動いた。生き物みたいで気持ちが悪い。
 ソフトクリームを思い浮かべる。何重にも巻かれて先が少し垂れて……まず、先を舐め取る。
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