感じさせて……。

紫倉 紫

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ゆめ5

十七

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「ずっと……ソフトクリームだと思ってれば良いですか?」
 奥村さんは頭を横に振った。
「次は、ハーモニカで、その次は、大きなイチゴだ」
 訳がわからない。
「その前に、先端にキスだな……」
「えっ?」
「露骨に嫌な顔をするな」
 ため息がこぼれる。でも、今させられていたことよりは、いくらかましだ。
 目を閉じて、唇を寄せていく。軽く触れた。
 濡れている。すぐに唇を離した。
「おっ、糸を、引いた」
 なんのことだろうと思った。奥村さんが私の頭を手で軽く引き寄せた。唇に、押し付けてきた。先端で左右に撫でられる。グロスを塗ったような感触があった。
「成分は、ほぼムチン。さっき通ったばかりだから、微量に精子を含むかもしれないな。舐めてみろ」
 私は無言で抵抗した。
「別に構わないさ。後で思う存分啜らせてやるから」
 変なものを分泌しなければ、腕や指を舐めているのと変わらないと言い聞かせられるのに……
 いや、どちらにしても、他人の体は舐めるものではない。
 後、どのくらい我慢すれば終わるだろう。ますます憂鬱になってきた。
「続けるぞ。次は、横から唇を押し当てて上下にこする」
 私は顔を傾けた。
「こいつも少しは傾けられるぞ」
 奥村さんが自分の手で少し角度を変えた。
 唇をつける。少し強めに押し付けると、奥村さんの浮き出た血管を、唇の内側が感じとった。
 奥村さんの呼吸が荒い。
 感じているのだろうか……
 そうでなければ、こんなことを、する意味はない。
 さっき、してもらった時、明らかに指とは違った。自分が上げてしまった声を思い出して、体が熱を帯び始めた。
 これは、与えるための行為のようだ。
「先を口に含んで、舌を使ってくれ」
 さっきの、ネバっとした液を口に含むのか……
 考えたら、奥村さんは私の流したものであれだけ口の周りを濡らして、文句も言わなかった。
 さっき、お返ししてもらうと言われた……
 一度、背筋を伸ばした。
 歯を当てないように……
 舌を使う?
 そんなことができるんだろうか。
 口を、大きめに開けて、先をくわえた。
「大きなイチゴを口の中で転がすようにと書いてあった」
 それもしたことがないから、わからない。
 丸い形をなぞるようにして、とにかく舌を動かしてみる。
 奥村さんが、私の肩を掴んだ。
 何か間違っているのかもしれない。動きを止めた。
「そのまま、続けてくれ……」
 それからも「唇だけ窄めろ」だとか「吸いながら舐めろ」だとか「手でもしごけ」だとか無茶な要求をされた。
 意外にこなせる……。
 奥村さんのような知性のかたまりでも、目の前の快楽には忠実なようで。
 時折、内腿を痙攣させる。
 呼吸も不規則で、ため息と、微かな呻きと……。
 感じてもらうというのは、相手が奥村さんであっても、そう嫌なものではないのがわかった。
 ただ、私の方は、頬も顎も、手でさえも、痛くなってきて、限界を感じていた。
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