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うつつ6
四
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和明は亮と話しているのか、書斎で本を読んでいるのか、なかなか戻ってこない。
すぐに眠れそうになかったが、WEB小説の続きを読むと余計にモヤモヤしそうでやめた。
小説の中の『教授の奥さん』について考える。一回、十五分ほどと決められた性生活が、続く。ひかりが、和明に相手にされずにいた七年と比べてどちらがましだろう。ひかりには虚しさがつきまとっていた。『教授の奥さん』は、もしかしたら毎回苛立っているのかもしれない。
自分で選んだ人のそばに居ても、幸せであるとは限らない。
言いきかせなければ、幸せではない生活だった。
亮が連絡をしてきた日から、明らかに和明は変わった。
理由は、わからない。
危うい変化であっても、ひかりは、どんな形であれ愛する人に求められる喜びを手放す気にはなれない。
気がついたら朝になっていた。
和明は今日は家にいる予定だ。起こさないようにそっと起き出す。
まだ朝は冷え込む。
長めのカーディガンを羽織って、リビングへ出た。広いリビングはさらに冷え切っていた。ガス管がのびるだけソファに近づけてから、ガスファンヒーターをつけた。
もう少し着込んで出てくれば良かった。なかなか暖かくならない。
ひかりは熱いコーヒーを用意した。
座って、WEB小説の続きを読む。
他にもいろいろ小説はあるけれど、今はやはり『教授の実験室』が気になっている。
主人公は、奥村に惹かれているというよりは、慣れていっている様子だ。共感できるところはないけれど、とにかく、どうなっていくのか予想できないから、読んでいる。
昨夜してもらっておきながら、自分が口でできるかどうかは、自信がなかった。
小説に書いてあるように苦しいのなら、やはり抵抗を感じてしまう。
亮が起きてきた。
「おはよう」
ひかりは、スマホの画面を消した。亮の表情が暗い。
「体調悪いの?」
「寝てないだけ……調べ物しててさ。教授と先生の話聞いてたら、気になることがあって……」
ひかりにはよくわからないが、研究のことだろう。
「何か食べる?」
「そうだなあ、腹が減りすぎて眠れないかもな」
亮が笑った。
「軽いものの方が良いよね。うどんは?」
和明が好きだから、冷凍うどんが常にストックしてある。
亮が頷いた。
出汁を作りながら、ネギを刻む。わかめと玉子も入れることにした。
亮が様子を見にきた。
「もうすぐできるよ」
手を止めて話しかけた。
「ひかりさ、先生に何か……」
亮が言葉を切った。
首をかしげる。
「させられてないか?」
何か……。
どれのことだろうと思った。
まさか、昨日、下着をつけていなかったことが分かったのだろうか。
「なんのこと?」
誤魔化そうとしたけれど、顔がひきつってしまった。
亮が、険しい顔をした。
「特にないならいいけど。困った時は言ってくれよ」
「ありがとう」
亮はリビングに戻っていった。
具体的にわかったわけではなく、感じ取っているのだろうか。何かを隠そうとしたり動揺したりするからだと、ひかりは思った。
すぐに眠れそうになかったが、WEB小説の続きを読むと余計にモヤモヤしそうでやめた。
小説の中の『教授の奥さん』について考える。一回、十五分ほどと決められた性生活が、続く。ひかりが、和明に相手にされずにいた七年と比べてどちらがましだろう。ひかりには虚しさがつきまとっていた。『教授の奥さん』は、もしかしたら毎回苛立っているのかもしれない。
自分で選んだ人のそばに居ても、幸せであるとは限らない。
言いきかせなければ、幸せではない生活だった。
亮が連絡をしてきた日から、明らかに和明は変わった。
理由は、わからない。
危うい変化であっても、ひかりは、どんな形であれ愛する人に求められる喜びを手放す気にはなれない。
気がついたら朝になっていた。
和明は今日は家にいる予定だ。起こさないようにそっと起き出す。
まだ朝は冷え込む。
長めのカーディガンを羽織って、リビングへ出た。広いリビングはさらに冷え切っていた。ガス管がのびるだけソファに近づけてから、ガスファンヒーターをつけた。
もう少し着込んで出てくれば良かった。なかなか暖かくならない。
ひかりは熱いコーヒーを用意した。
座って、WEB小説の続きを読む。
他にもいろいろ小説はあるけれど、今はやはり『教授の実験室』が気になっている。
主人公は、奥村に惹かれているというよりは、慣れていっている様子だ。共感できるところはないけれど、とにかく、どうなっていくのか予想できないから、読んでいる。
昨夜してもらっておきながら、自分が口でできるかどうかは、自信がなかった。
小説に書いてあるように苦しいのなら、やはり抵抗を感じてしまう。
亮が起きてきた。
「おはよう」
ひかりは、スマホの画面を消した。亮の表情が暗い。
「体調悪いの?」
「寝てないだけ……調べ物しててさ。教授と先生の話聞いてたら、気になることがあって……」
ひかりにはよくわからないが、研究のことだろう。
「何か食べる?」
「そうだなあ、腹が減りすぎて眠れないかもな」
亮が笑った。
「軽いものの方が良いよね。うどんは?」
和明が好きだから、冷凍うどんが常にストックしてある。
亮が頷いた。
出汁を作りながら、ネギを刻む。わかめと玉子も入れることにした。
亮が様子を見にきた。
「もうすぐできるよ」
手を止めて話しかけた。
「ひかりさ、先生に何か……」
亮が言葉を切った。
首をかしげる。
「させられてないか?」
何か……。
どれのことだろうと思った。
まさか、昨日、下着をつけていなかったことが分かったのだろうか。
「なんのこと?」
誤魔化そうとしたけれど、顔がひきつってしまった。
亮が、険しい顔をした。
「特にないならいいけど。困った時は言ってくれよ」
「ありがとう」
亮はリビングに戻っていった。
具体的にわかったわけではなく、感じ取っているのだろうか。何かを隠そうとしたり動揺したりするからだと、ひかりは思った。
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