感じさせて……。

紫倉 紫

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うつつ6

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 うどんが出来上がり運ぶ。
「ひかりの分は?」
「私は、また後で」
 和明が起きてから、一緒に食べるつもりだ。
 亮がため息をついた。
「手間かけさせて悪かったな」
「亮は作ったもの喜んでくれるから、食べてもらうの嬉しいよ」
 亮が、微笑んで頷いた。
「ひかりの作るもの美味いからな」
 和明は食べ物に興味がないから、ほとんど感想を言わない。亮の言葉は嬉しかった。
 子供の頃は、当たり前のように側にいたけれど、高校辺りから段々と距離が離れていった。全く会わない七年を経て今、一緒に暮らすようになった。不思議な縁だと思う。亮がいなければ、和明とも出会えなかった。
 さすがに、同居には抵抗があった。少しずつ慣れていくはずだ。
 和明は亮が来てから、ちゃんとこの場所にいるようになった。以前は、家にいてひかりの相手をしてくれていても、頭の中では全く別のことを考えている雰囲気があった。
 今はひかりにも、関心を向けている。亮も、ひかりに優しい。
 亮の大学での勤務が始まれば、今ほどは家にはいなくなるだろう。
 亮がいつまでこの家にいるのか。和明が、どう考えているのかわからない。そして、子供ができたあとどうなるのかも。
 今まで、ほとんど変化がなかった。ひかりは次々と新しい  WEB小説を読むことでしか、感情を動かすことができなかったのだ。
 亮が食べ終わった。
「これから寝るの?」
 亮は腕組みをして考え込んでいる。
「エネルギー補給したら 、もう少し考えられる気がしてきた」
 亮は、昔から体力があった。
「コーヒーいれようか?」
 亮が嬉しそうな顔をして頷く。
「幸せ」
「コーヒーくらいで大げさ」
 亮は目を細めた。
「何を幸せに感じるかも、どんな幸せを求めるのかも、人それぞれだろ」
 亮の言う通りかもしれない。
 ひかりは、ただ和明の側にいたいと願った。家族や亮と離れて、その幸せを選んだ。
 亮は、調べ物の続きをすると言って、部屋に戻っていった。
 ひかりは、小説の続きを開いた。本当に書いてあるようになるのだろうか。精液がどんな味なのかは知らない。知らなくても良いような気はする。それでももし和明が望むのなら、ひかりは迷わず飲み込めると思えた。
 起きてから時間も経つので、お腹が空いてきた。
 和明は昨日、何時まで起きていたのだろうか。寝室に様子をみにいった。
 眠っているようだ。ひかりはそっと近づいていく。遮光カーテンのわずかな隙間から、細く光が入り込んでいる。ベッドに横たわる和明の足下が少し明るくなっている。わずかにカーテンを開けて、光を取り込んだ。
 和明の顔が青白い。急に不安に駆られる。和明の口元に耳を近づけ、寝息を確認した。
 あまりそばに居ると、起こしてしまう。何か少しだけ食べて、自然に目覚めるのを待つことにした。
 ベッドから離れようと歩き出した。
「ひかり」
 名前を呼ばれ立ち止まる。
「起こしてしまいましたか?」
 すぐ和明の側に戻った。
「夢をみていた。僕はとても充実していて……君がいてくれて本当に良かった」
 突然の言葉に、思わず耳を疑った。
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