感じさせて……。

紫倉 紫

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うつつ6

十一

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 和明が一度右手をさげ、それからセーターの下側に潜り込ませた。
 すぐに脱がされるかと思っていたのに違った。
 和明はセーターの下でひかりの胸を刺激し始めた。セーターに、和明の指の形が時々浮き出る。両方の胸の先を同時に弄られ、体から力が抜けそうになる。
「自分で、セーターを捲り上げて、どんな風にされているかを鏡に映すんだ」
 なぜ、ひかりがそうすることを望むのかはわからない。それでも頷いて、セーターに手をかけた。
「冗談だよ。脱がせて欲しいと言っていたね」
 和明はひかりの体から手を離した。それから、セーターを脱がせ始める。ひかりは目を閉じてされるがままになっていた。
 暖房が効いているとはいえ、肌を晒すと冷える。腕に鳥肌が立っていた。
 すぐに、すべて脱がされた。
「寒いだろう。先に入っておいて」
「わかりました」
 和明を残して、浴室に入る。
 広い浴槽をお湯が満たしていた。湯気が立ち上る。
 シャワーの前にしゃがみヘッドの向きをずらして蛇口をひねった。
 冷たい水が少し足先にかかったが、段々と温かくなっていった。
 ボディーソープを手に取って、要所だけこする。
 和明が入ってきた。背後に座るとシャワーを手に取った。
 いきなりひかりの髪にお湯をかけた。
「髪を洗ってあげるよ」
 髪を洗う気はなかったので驚いた。ただ、もう濡れてしまったのでそのまま洗ってもらうことにした。
 和明は、三回ほどシャンプーの入った容器のポンプを押した。大きな手の平にたっぷりと液体がたまる。出し過ぎだと思う。
 濡れた髪にシャンプーを塗りつけられる。和明は「泡立ちが悪い」と言って、髪に少しお湯をかけた。
 泡が、首を伝って胸元までおりてきた。
 和明は、ただ泡を髪に塗り込むようにして手を動かす。
「そろそろ流そうか」
 単にしてみたかっただけなのかもしれない。あっさりとお湯をかけて流した。
 コンディショナーはする気がないらしく、自分の体を洗い始めた。
 髪がパサつきそうなので、自分ですることにした。
「長いと、手入れが大変だね」
 手入れと呼ぶほどのことではないが、頷いた。
 和明が先に湯船につかった。ひかりも洗い流して続く。
「少し、ゆっくり浸かったら、帰ろうか」
 咄嗟に何も言えなかった。さっき、少しだけ繋がりはした。
「不服かい?」
 こんな場所へ来たら、もう少し二人の時間を過ごすものだと思う。
「僕がしたかったことはもう終わった。君が望んでいることを言葉で伝えてくれれば、僕は応える気でいるよ」
 言えるはずがない。
 和明は、曇った眼鏡を一度湯につけてかけ直した。
「それとも、ベッドに入ってさっきの続きを……」
 和明から言い出してくれるのは嬉しい。
「話してもらおうかな」
 咄嗟に意味がわからなかった。
「喜多川君と君とのやりとりなんかを」
 こんなところで、亮とのことを話すのはおかしい気がした。だからと言って、帰るのも自分から誘うことも嫌だった。
「本当に、とくにたいしたことは話さないので」
「それでもいつも楽しそうにしてるよね」
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