感じさせて……。

紫倉 紫

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ゆめ6

十三

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 ああ、だけどまぶたが重い。
 少しだけ……
 目を閉じる。
 奥村さんは、なかなか戻ってこない。
 私の胸の膨らみの先端が、温もりに包まれている。奥村さんの舌がゆっくりと円を描く。
「奥村さん……」
 そんな風にされるとまた濡れてしまう。
「なんだ。名前を呼んだくせにまだ寝てんのか」
 寝てる?
 奥村さんに歯を立てられた。
 痛みで目を開けた。目の前に奥村さんの顔があった。
「やっと起きたか」
 
 ということは、さっきのは夢……
「俺とやらしいことをする夢でも見てただろ。名前の呼び方がそんな感じだった」
 私は恥ずかしくなって両手で顔を隠す。動くと自分が服を着ていないことがわかる。
 昨夜の状況を思い出した。奥村さんを待つ間に寝てしまったらしい。
「ぐっすり寝ているときに感じるか、試しに少し刺激してみたからな。そういう夢を見ても仕方ない」
 確かに、リアルに感覚があった。
「お前、昨日薬を飲む前に寝ただろう」
 指摘されて初めて気づいた。手をどけて奥村さんの顔色をうかがう。また先延ばしになると、不機嫌になられてしまう。
「起こしてもフニャフニャしてたから、口移しで水を飲ませて、その後、ちゃんと飲み込んだのか口の中を隅々までチェックして」
 全然覚えがなかったがホッとした。
「服も、シワにならないようにしといてやった」
「ありがとうございます」
「感じまくって疲れたんだろ」
 酔っていたかもしれないが鮮明におぼえている。
「早くシャワーを浴びてこい。昼間は買い物に出る予定だったろう」
 そうだった。奥村さんのお弁当箱と、私の服を買いにいくんだった。
 私は布団で体を隠しながら起き上がった。バスルームまで体を隠せる物を探す。見当たらない。
「何を探してるんだ?」
「バスタオルか何かあればと思って」
「昨日使った分は全部洗って干した」
 奥村さんはいつもいつの間にか洗濯を済ませている。
「早くシャワーを浴びてこいって」
「そうしたいんですが……体を隠すものが見当たらなくて」
「そのまま行けば良いだろ」
 逆らうと怒り始めそうだ。仕方なく腕と手で隠しながらベッドからおりた。
「あれだけ淫らな姿をさらした後でまだ隠そうとするか」
 私は寝室から逃げ出した。
 昨夜はどうかしていた。研修をはずれて奥村さんのことを求めるようなことを……
 お酒のせいに違いない。
 今後も控える方がよさそうだ。
 シャワーを浴びながら、敏感な場所に自分で触れてみた。やはり、ほとんど感じない。
 昨日、我を忘れるほど気持ちよくなったのは、異性から触れられたせいなのか。
 奥村さんは本能だと言っていた。昨日の自分の心の動きを思えば、納得できる。
 それにしてもお腹がすいている。奥村さんは食べたのだろうか。昨日何時まで起きていたのかも、今何時なのかもわからなかった。
 とにかく上がる。
 時間を確認すると11時前だった。
 バスタオルを巻いて寝室に戻ることにした。着替えはあの部屋に置いてある。
 奥村さんはリビングにいた。
「研修の続きは夜だ」
「着替えを持っていかなかっただけです」
 急いで寝室へ入った。
 買い物に出掛けるといっても、ここにはいつもの出勤用の服しかなかった。
 家に帰ったとしても、奥村さんと出かけるのに合うような服はない。一番手前にかけてある服を着ることにした。
 着替えて出る。奥村さんは「服を取りに帰るか?」と訊いてきた。
「いえ、これで良いです」
「先に服を買って着替えるか……」
 奥村さんの思うようにしてもらうことにした。
「お腹は、すいてないですか?」
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