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ゆめ6
十四
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「すいてはいるが、こんな時間だ。出てからでいいだろう」
軽く化粧をし、カーディガンを羽織っただけで準備は整った。
「見事なまでに、いつも通りだな」
奥村さんの方は、ジーンズに柄物のシャツというラフな格好で、眼鏡までちがう。紺色の太めのフレームだ。
「眼鏡まで変えるんですね」
「これは遠くを見るように度を合わせてある」
用途が違うようだ。
「腹が減ってるから、もう出るぞ」
二人で部屋を出て駐車場へ向かう。エレベーターで下りている途中で「瑞樹」と呼ばれ、思わず「えっ」と聞き返してしまった。
「何か不服か?」
「いえ、別に……」
「お前、運転できるか」
「免許を持っていないので」
「研究室と家の往復には必要ないしなあ」
実際、何も不便を感じない。
「明日は少し遠出になるから、運転が代われるかと思ったが、苦になるほどの距離ではないしな」
どこへ行くつもりだろう。
「研修の一部だが、それなりには楽しめそうだ」
遠くでする研修……何も思いつかない。もう、いちいち不安にはならない。
すぐに駐車場につき助手席に乗り込んだ。
車は大学を通り過ぎ南へ向かっている。大学の付近からあまり離れないので、目に映る風景が新鮮だ。
車の横に付いた小さなミラーに少し後ろを走るバイクがうつった。車もバイクも、自分で操作するのは怖い。私には自転車がちょうど良い。
奥村さんは、駅の近くにある家電量販店に車を停めた。
「ここに来れば大概の物はそろう」
大きなビルなので、テナントがたくさん入っているようだ。まずはレストラン街に向かった。
昼ご飯には早めなのでまだすいている。
「もう、なんでもいいな?」
「バランスがよければ」
和定食の店に入ることになった。私はホッケのひらきを選んだ。奥村さんは、天ぷら定食だ。
「食べたらまずは、お前の服だな。普段より少し明るめの色のを選べよ」
「明るい色は似合いません」
奥村さんは渋い顔をした。
「面倒だが俺が選ぶことにする。お前に任せたら、無難で地味な服を選ぶのが目にみえてるからな」
本人もそれほど服に興味があるようにはみえない。今日の服は、シンプルだけどよく似合ってはいる。ただ、細くて背が高いから何を着てもそこそこセンス良く見えるだけのように思う。
だけど、奥村さんの選んだ服で、他人から変だと思われるのは私のせいではない。任せることにした。
定食は、魚の焼き加減が絶妙でとても美味しかった。
奥村さんに天ぷらを作れるか尋ねられた。天ぷらも美味しかったのだろう。
揚げ物はほとんどしない。
「やろうと思えばできるんだろう」
「一人分のために、美味しく揚げるための油を用意するのは非効率なんですよ。毎日食べたいわけでもないので」
私は揚げ油の温度変化について説明をした。
「なるほどな」
すぐに納得してもらえた。
「天ぷらは外で食べればいいな」
私は頷く。
「ここ数年食べていないので、次の機会には天ぷらにします」
「そうなのか。近いうちに連れて行ってやるよ」
私は嬉しくなって、つい頬が緩んだ。
「次はお前の服な」
今ある服で、十分だった。
「買わないといけませんか?」
やはりあまり気乗りがしない。
「俺が買うんだから、つべこべ言うな」
聞く耳は持って貰えない。私には似合う服が少ない。大きすぎる胸のせいで、デザインやサイズ選びに苦労する。
奥村さんの方が先に食べ終わった。
「ここ、お茶も美味いな」
さっき飲んで私も感じたので頷いた。
食べ終わった頃には店が混み始めたので、早々に出た。
軽く化粧をし、カーディガンを羽織っただけで準備は整った。
「見事なまでに、いつも通りだな」
奥村さんの方は、ジーンズに柄物のシャツというラフな格好で、眼鏡までちがう。紺色の太めのフレームだ。
「眼鏡まで変えるんですね」
「これは遠くを見るように度を合わせてある」
用途が違うようだ。
「腹が減ってるから、もう出るぞ」
二人で部屋を出て駐車場へ向かう。エレベーターで下りている途中で「瑞樹」と呼ばれ、思わず「えっ」と聞き返してしまった。
「何か不服か?」
「いえ、別に……」
「お前、運転できるか」
「免許を持っていないので」
「研究室と家の往復には必要ないしなあ」
実際、何も不便を感じない。
「明日は少し遠出になるから、運転が代われるかと思ったが、苦になるほどの距離ではないしな」
どこへ行くつもりだろう。
「研修の一部だが、それなりには楽しめそうだ」
遠くでする研修……何も思いつかない。もう、いちいち不安にはならない。
すぐに駐車場につき助手席に乗り込んだ。
車は大学を通り過ぎ南へ向かっている。大学の付近からあまり離れないので、目に映る風景が新鮮だ。
車の横に付いた小さなミラーに少し後ろを走るバイクがうつった。車もバイクも、自分で操作するのは怖い。私には自転車がちょうど良い。
奥村さんは、駅の近くにある家電量販店に車を停めた。
「ここに来れば大概の物はそろう」
大きなビルなので、テナントがたくさん入っているようだ。まずはレストラン街に向かった。
昼ご飯には早めなのでまだすいている。
「もう、なんでもいいな?」
「バランスがよければ」
和定食の店に入ることになった。私はホッケのひらきを選んだ。奥村さんは、天ぷら定食だ。
「食べたらまずは、お前の服だな。普段より少し明るめの色のを選べよ」
「明るい色は似合いません」
奥村さんは渋い顔をした。
「面倒だが俺が選ぶことにする。お前に任せたら、無難で地味な服を選ぶのが目にみえてるからな」
本人もそれほど服に興味があるようにはみえない。今日の服は、シンプルだけどよく似合ってはいる。ただ、細くて背が高いから何を着てもそこそこセンス良く見えるだけのように思う。
だけど、奥村さんの選んだ服で、他人から変だと思われるのは私のせいではない。任せることにした。
定食は、魚の焼き加減が絶妙でとても美味しかった。
奥村さんに天ぷらを作れるか尋ねられた。天ぷらも美味しかったのだろう。
揚げ物はほとんどしない。
「やろうと思えばできるんだろう」
「一人分のために、美味しく揚げるための油を用意するのは非効率なんですよ。毎日食べたいわけでもないので」
私は揚げ油の温度変化について説明をした。
「なるほどな」
すぐに納得してもらえた。
「天ぷらは外で食べればいいな」
私は頷く。
「ここ数年食べていないので、次の機会には天ぷらにします」
「そうなのか。近いうちに連れて行ってやるよ」
私は嬉しくなって、つい頬が緩んだ。
「次はお前の服な」
今ある服で、十分だった。
「買わないといけませんか?」
やはりあまり気乗りがしない。
「俺が買うんだから、つべこべ言うな」
聞く耳は持って貰えない。私には似合う服が少ない。大きすぎる胸のせいで、デザインやサイズ選びに苦労する。
奥村さんの方が先に食べ終わった。
「ここ、お茶も美味いな」
さっき飲んで私も感じたので頷いた。
食べ終わった頃には店が混み始めたので、早々に出た。
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