141 / 157
ゆめ6
三十ニ
しおりを挟む
「二度と会わない人間だ」
知らない人になら見られてもかまわないのだろうか……
「キスさせろ」
なんて命令……でも逆らえない。
奥村さんの方へ顔を向ける。
「手を、動かしてくれ」
言葉の後で、激しく唇を吸われた。
奥村さんの呼吸が激しくなる。
手の中でさらに大きくなった。
「うっ」
短い呻きと同時に、奥村さんが左手で、私の手ごと外側に押した。
「あっ」
中心を通っていくのがわかった。
脈打つ。
奥村さんが顔を離して、ため息をついた。
「いけた」
飛んだ先の砂の色が点々と濃くなっている。
水のようには染みこまず、白い塊としてまだそこにあった。
私は、なぜか目を離せなかった。
風にわずかに舞う砂粒が、白い塊に少しずつはりついていく。
奥村さんが、靴で周りの砂をかけて隠した。
縮んで柔らかくなったものは、まだ手の中にあった。
「先をふきたい。ティッシュあるか?」
バッグをかえたせいで、持っていなかった。
「ハンカチなら」
「仕方ない、このまましまうか」
どのくらい濡れているのだろう。これから、まだ観光をするのに……
ハンカチで拭けば良いのに。
「ハンカチ使ってください」
「いや、それはいい」
「でも、下着が濡れたら気持ち悪くないですか?」
奥村さんは、クスリと笑った。
「お前は、気持ち悪くないのか?」
濡れているのがばれた恥ずかしさに、うつむいた。視界に私の手と、手の中の物が入る。先端に、しずくがついたみたいになっていた。
「舐め取ってくれてもいいぞ」
舐める……
一度飲んだこともあるのだから……
一瞬、前かがみになるくらい、何か物を拾ったように、見える。
私は勢いをつけて、頭を下げた。自分の手元に顔を近づける。
かすかに精子のにおいがした。
すっかり柔らかくなった先を、少しだけ口に含む。舌で、濡れていたあたりを撫でた。塩気を感じただけで、味というほどのものはなかった。
すぐに、体を起こしてもとの姿勢に戻った。
「冗談だったんだが……」
「冗談だったんですか……」
「悪かったな」
奥村さんは、私の手を脇にどかして、自分で、しまった。
すぐに、ベルトまでしめた。
「観光地だ。少し歩けばトイレくらいあるだろう」
奥村さんは左で、私の肩から上着を取って腕にかけた。私のバッグを持って立ち上がった。
「今日の研修は、終えてみれば非常に有意義だった。己の深淵に触れた」
「深淵ですか?」
「深淵をのぞくとき、深淵もまたこちらをのぞいている」
何を言いたいのかわからない。
「深淵は、万人共通の無意識だ」
「そうなんですか……」
私も立ち上がった。
「外が、これほど興奮するとは思いも寄らなかった」
だから、あんな風にキスを求めてきたのか。
思い出しただけで、下腹がうずく。私も、興奮していたかもしれない。
「始めるまで、たたない心配をしていたんだが。いくのもはやかったしな」
わからず、首を傾げた。
「お前が、上手くなったのもある」
こんなことなのに、褒められると嬉しかった。
「いくか」
奥村さんが歩き始めた。
天橋立を渡りきると、お手洗いがあった。
「待っとけ」
奥村さんが船乗り場の自動販売機でペットボトルの麦茶を買ってきた。
「麦茶、好きなんですね」
「お前は、嫌いだったか」
「自分で沸かせると思ってしまうだけで嫌いなわけでは」
奥村さんは「貧乏性だな」と言いながら、手渡してきた。
「日本でも生水はよくない。それで、うがいしとけ」
少量だったのもあって、私はもう気にしていなかった。
知らない人になら見られてもかまわないのだろうか……
「キスさせろ」
なんて命令……でも逆らえない。
奥村さんの方へ顔を向ける。
「手を、動かしてくれ」
言葉の後で、激しく唇を吸われた。
奥村さんの呼吸が激しくなる。
手の中でさらに大きくなった。
「うっ」
短い呻きと同時に、奥村さんが左手で、私の手ごと外側に押した。
「あっ」
中心を通っていくのがわかった。
脈打つ。
奥村さんが顔を離して、ため息をついた。
「いけた」
飛んだ先の砂の色が点々と濃くなっている。
水のようには染みこまず、白い塊としてまだそこにあった。
私は、なぜか目を離せなかった。
風にわずかに舞う砂粒が、白い塊に少しずつはりついていく。
奥村さんが、靴で周りの砂をかけて隠した。
縮んで柔らかくなったものは、まだ手の中にあった。
「先をふきたい。ティッシュあるか?」
バッグをかえたせいで、持っていなかった。
「ハンカチなら」
「仕方ない、このまましまうか」
どのくらい濡れているのだろう。これから、まだ観光をするのに……
ハンカチで拭けば良いのに。
「ハンカチ使ってください」
「いや、それはいい」
「でも、下着が濡れたら気持ち悪くないですか?」
奥村さんは、クスリと笑った。
「お前は、気持ち悪くないのか?」
濡れているのがばれた恥ずかしさに、うつむいた。視界に私の手と、手の中の物が入る。先端に、しずくがついたみたいになっていた。
「舐め取ってくれてもいいぞ」
舐める……
一度飲んだこともあるのだから……
一瞬、前かがみになるくらい、何か物を拾ったように、見える。
私は勢いをつけて、頭を下げた。自分の手元に顔を近づける。
かすかに精子のにおいがした。
すっかり柔らかくなった先を、少しだけ口に含む。舌で、濡れていたあたりを撫でた。塩気を感じただけで、味というほどのものはなかった。
すぐに、体を起こしてもとの姿勢に戻った。
「冗談だったんだが……」
「冗談だったんですか……」
「悪かったな」
奥村さんは、私の手を脇にどかして、自分で、しまった。
すぐに、ベルトまでしめた。
「観光地だ。少し歩けばトイレくらいあるだろう」
奥村さんは左で、私の肩から上着を取って腕にかけた。私のバッグを持って立ち上がった。
「今日の研修は、終えてみれば非常に有意義だった。己の深淵に触れた」
「深淵ですか?」
「深淵をのぞくとき、深淵もまたこちらをのぞいている」
何を言いたいのかわからない。
「深淵は、万人共通の無意識だ」
「そうなんですか……」
私も立ち上がった。
「外が、これほど興奮するとは思いも寄らなかった」
だから、あんな風にキスを求めてきたのか。
思い出しただけで、下腹がうずく。私も、興奮していたかもしれない。
「始めるまで、たたない心配をしていたんだが。いくのもはやかったしな」
わからず、首を傾げた。
「お前が、上手くなったのもある」
こんなことなのに、褒められると嬉しかった。
「いくか」
奥村さんが歩き始めた。
天橋立を渡りきると、お手洗いがあった。
「待っとけ」
奥村さんが船乗り場の自動販売機でペットボトルの麦茶を買ってきた。
「麦茶、好きなんですね」
「お前は、嫌いだったか」
「自分で沸かせると思ってしまうだけで嫌いなわけでは」
奥村さんは「貧乏性だな」と言いながら、手渡してきた。
「日本でも生水はよくない。それで、うがいしとけ」
少量だったのもあって、私はもう気にしていなかった。
0
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる